炎の守り手4
思った通り、巨体から放たれる攻撃は遅いが重い。よく手入れされているとは言え、学園貸し出しのブロードソードでは確実に押し負けるのが容易に想像できる。
とにかくいなしてかわしつつ、反撃の糸口を淡々と狙う。
危機的状況になればなるほど冷静で居られる自分が不思議だった。
(出し惜しみしてる余裕はないな。でも【アレ】はリスクが高すぎる。確実に倒せるのは分かってるんだけど…)
アンナは短剣を抜く。短剣の刀身には紋様が描かれ、淡く赤い光をたたえている。ブロードソードで攻撃を受け流しつつ、魔法剣での攻撃で弱点を探っていくことにした。
一方エクレは、徐にローブを脱いでいた。
(…‼なんでここで防具を捨てるの!?)
呆気に取られた半瞬、ゴーレムの横薙ぎの拳がアンナを捉える。強かに拳が打ち据えられ、横に飛ばされる。
「ぐはっ‼」
ギリギリで受け身を取るも、殴られた横腹に激痛が走る。
(師匠の稽古で痛みに耐性がついてたと思ってたけど、やっぱ甘かったか…)
エクレはアンナの様子に目もくれずゴーレムに向かって矢を放つ。矢は浅く刺さったり弾かれたりという具合でゴーレムにとって痛痒を感じさせる程ではない。
すると、矢に混じって布がゴーレムの顔面を目がけて飛ばされる。一瞬ひるむも、ローブをかぶされたゴーレムはエクレに拳を突き立つ始める。
エクレの前で何かが弾けては飛び退くを繰り返している。木でできた盾のようなものがエクレの前にそびえ立っては砕かれるを繰り返している。
「アンちゃん‼攻撃できそう?」
エクレの口ぶりに些かムッとする。
「斬撃も突撃も効かないよ!見ててわかるでしょ?」
「矢が刺さってる所、魔法剣で壊せる」
「え?」
攻撃がエクレに向かっている内にゴーレムを観察する。拳は明らかに金属でできているが、関節の所々に矢が刺さっている。
「木の宝箱ってこと?」
エクレはこっくり頷く。それであれば火属性の魔法剣でダメージを与えられるかもしれない。
エクレは攻撃をかわしつつ、懐から何かを投げつけた。先ほど採取したキノコ。
キノコはゴーレムの膝関節にピトッとくっつくと一気に増殖して木を消化していく。膝関節の宝箱が崩れ、中からポロポロと金貨が溢れる。片足を失ったゴーレムはその場で崩折れた。
「アンちゃん!今だよ‼」
「オッケー!任せて!」
魔法剣の火力を最大まで高め、ゴーレムへと飛び掛る。
「ぐ…グオオオオオ‼」
素早く矢の刺さった部位に魔法剣を突き刺すと宝箱は一気に燃える。ここにきて初めて見せるゴーレムの苦悶に手応えを感じながら、次々と関節に刀身を叩き込んでいく。
炎に包まれたゴーレムは断末魔の叫びを上げながらサラサラと崩れていった。
後には残骸と金貨の山。
「…倒せちゃったね、私たち」
「うん」
煌めきを放つ小山に呆然とするアンナと、いつもの態度を崩さないエクレ。
エクレはそっと手を上げると、アンナはハイタッチした。あどけないエクレの笑顔に顔が綻ぶ。
「それにしても、どうして弱点がわかったの?」
懐からもう一つキノコを取り出す。紫色で、如何にも食用には向かない細い軸。
「少ない養分でも生きられるけど高栄養の培地では物凄く繁殖するバイバイマッシュ。攻略のキーアイテムをさりげなく配置するの、あの人らしいなって」
「ってことは人為的に作られたダンジョンってこと?」
「うん。多分だけど、外への転移陣もその人が張り巡らせた。安心安全ダンジョン。ゴーレムの発現条件は恐らく…」
エクレが何度目かの熟考に入りかけた、その時。
「待たせたわね、あなたたち‼」




