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第48話 魔水晶


 吸血鬼の王ヴァンパイアロードとの激闘を終えた俺は、マサムネ工房に戻ってきた。

 魔力が回復するまで戦闘を回避したいのと、魔法具開発の進捗を確認するためだ。


「どうした? 珍しく疲れている様子だな」

 マサムネは透明度のある鉱石を手にしている。

「あぁ、ちょっとな。ところで、それは何だ?」

「この水晶、どうやら魔法の威力を上げる効果があるようだ」

「魔法の威力を上げる?」

「あぁ。黒の杖ワンドの水晶部分をこれに置き換えて試してみたんだが、明らかに魔法の威力が上がったんだ」

「へぇ、それは面白い。その水晶はいくつあるんだ?」

「素材箱の中に結構入っているから、数十個はあるんじゃないか」

『今確認したら、収納空間にもいっぱい入ってたよ』

「どうやら収納空間にも沢山あるようだ」

 面白い素材だな。いや、素材なのか?

 鑑定してみようか。


  魔水晶★

   効果: 魔法の威力を1.5倍に引き上げる


 おっ、★が付いている。

 と言うことは、もっと効果の高い★★や★★★の魔水晶が存在するってことだな。

 魔法石のように、★の魔水晶を近くに置いておくと★★になったりするのか?

「マサムネ、この水晶・・・魔水晶と言うようだ。

 もしかしたらこの魔水晶も魔法石のようにレア度が上がるかも知れない。

 素材箱の魔水晶を袋に詰めておいてくれないか」

「これだ」

 マサムネは素材箱の中から袋を取り出す。

 俺が思いついたことは既に実施していたようだ。

「さて、どうだ」

 マサムネは袋の中身を台の上に出す。

 袋から出てきた魔水晶は、明らかにさっきの物より透明度が上がっている。

 恐らく、魔水晶の純度が上がったと言うことだろう。

「鑑定してみよう」


  魔水晶★★

   効果: 魔法の威力を2倍に引き上げる


  魔水晶★★★

   効果: 魔法の威力を3倍に引き上げる


「魔法の威力を3倍に、か。

 これはかなり凄いことじゃないか?」

 これがあれば、【超重力崩壊爆発スーパーノヴァ】の消費魔力を抑えることが出来るかも知れない。

 数百万単位の魔力が1/3になると考えると、かなりの効果だ。

 実際のところ、威力と消費魔力の関係は線形ではないから1/3にはならないかも知れないが。

「あぁ、俺もそう思う。

 魔法具に組み込むか悩んでいるんだが、どうする?」

 正直なところ、魔法具に組み込みたい。

 対アヌグラ・マニュー団戦線の防衛力の向上も見込める。

 だが、何となく危険な気がする。

 今の魔法具でもかなりの能力になっていると思うのだが、それがさらに2倍、3倍になると思うと・・・・・・。

「乱用するのは危ない気がする。

 とりあえず、腕輪型の魔法具を10個作ってくれないか」

「そうだな。確かに使用者は絞っておいた方が良いかも知れない。

 誰が付けるか分からないから、可変サイズの腕輪を10個作っておく」

「あぁ、頼む」


「アトス、量産した魔法具はまた各国に持って行くのか?」

 そうだった。

 サダムネたちが量産してくれている黒の杖ワンド強化ベルトエンハンサーは多ければ多いほど良いのだ。

「どれぐらい出来ている?」

黒の杖ワンドが200本、強化ベルト(エンハンサー)が500本だ」

「そんなにあるのか。予想以上だ」

「状況が状況だからな。

 あの四人もほとんど休まずに作り続けてくれている」

「そうか、助かるよ。

 ひとまずしっかり休んでくれ。

 これだけあればひとまず何とかなる」

「そうだな。俺達が倒れては元も子もない」

「そう言う事だ」


 ──


 俺は早速、サダムネ達が作ってくれた魔法具を各国に配備する。

 タンバサ、ユマラン、セントリーマ、ニカラール、アイソル、オリアマリンビア。

 どの国も今、アヌグラ・マニュー団との戦いに向けて必死で修行している。

 全員に持続回復をかけているから、いつ戦いが始まっても万全の状態で戦えるはずだが、一つだけ心配なのは魔法使いの魔力だ。

 こればかりは持続回復の効果がない。

 だから、出来れば魔力を半分ぐらいは常に残しておいてくれと言ってはいるが・・・。

 各国を回るついでに、魔力が減っている者にはしばらく休息するよう言って回ろう。

 なぜなら、ジパングに出現する魔物のレベルが全体的に上がって来ている気がするからだ。

 その時(・・・)は近いかも知れない。

 そんな予感がする。

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 各国を回ってみたが、やはりどの国も数人は魔力が半分以下になっている者達が居た。

 本来なら修行に熱が入るのは良いことだ。

 今は持続回復のおかげでダメージを気にせず修行出来るから、レベルアップの速度が上がっている。

 だからこそ熱が入り、ついやり過ぎてしまうのも分かる。

 だが、今行っている修行の目的を忘れてはいけない。

 俺達はアヌグラ・マニュー団の企みから世界を守るために修行をしている。

 いざ決戦の時に魔力が残っていませんでした、なんてのは本末転倒だ。

 逸る気持ちを少し抑えて、目的のために最善を尽くす。

 少しでも、世界を救える可能性を上げるために。


 ──


 タンバサ王家のレベルアップは俺の予想を遥かに超えていた。

 かつて世界一と言われたシャルロとアイリン──実はずっと世界一だったんじゃないか? と俺は思っているのだが

 ──は、ピークを過ぎているのかと思っていたのだが、どうやら彼らを見くびっていたようだ。

 二人とも、単独ソロ竜人ドラゴニュートを倒せそるんじゃないか? と思える強さだ。

 さらに、シエラとサラもドラゴンに勝てそうだ。

 シエラは支援魔法を得意とするため、単独ソロでは少し厳しいというか、決め手に欠けるかも知れないが、サラは得意の攻撃魔法に磨きがかかっている。

 近いうちにアイリンを超えてしまうかも知れない、と言ったらアイリンは怒るかも知れないが。


 俺は一旦休憩することを提案してみた。

 ジャンヌやアーサーはシャルロの強さを目の当たりにして、自分はまだまだ修行が足りない! と一切休む気は無さそうだったし、他の騎士団の面々も同様だ。

 魔法使いはアイリンやシエラ、サラの魔法を見て同じように修行が足りないと考えているようだ。

 騎士も魔法使いも、王家と直接戦うことは初めてだろうから、憧れを抱くのも無理はない。

 修行を続けるのは良いが、くれぐれも残り魔力が少なくなってしまわない様に釘を刺しておく。


 王家の皆は提案に乗って休憩することになった。

 俺は転移門を開き、いつもの応接室に移動する。

 そこで、俺はジパングという島のことを皆に話す。

 とんでもない数の魔物と、とんでもない強さの魔物が居たこと。

 二度目に訪れた時はさらに全体の強さが増していたこと等。

 それから、決戦の時がかなり近づいているだろうことも。

「もうそろそろ、と言う事だね」

「私達も随分強くなったわ。少なくとも自分の国を守ることぐらいは出来るかしら?」

「さっき皆の修行を見て感じたんだが、恐らく四人で戦えばS7の竜人ドラゴニュートとも互角がそれ以上に戦えるんじゃないかと思う」

「アトスにそう言ってもらえると嬉しいね」

「アトス、私も強くなりましたよ」

「そうだな。サラも一人でドラゴンを倒せそうなぐらいに強くなっていた。

 修行、頑張ったんだな」

「はい。アトスと一緒に、世界の滅亡を防ぐために頑張りました♪」

 俺と一緒に、か。

 そう言われると嬉しい気しかしないな。

「そうだな。例え違う場所に居ても、俺達は共に戦っている。

 それを忘れてはいけないな」

「あら、アトスったら。言うようになったわね」

 頬を赤らめるサラに目をやってから、アイリンは俺に微笑みながら言う。

「私も忘れないでくださる?」

 シエラだ。

 この勝気な姫様が、得意なのは支援魔法と言うのは面白い。

「あぁ、忘れていないぞ。

 シエラの支援魔法があるからこそ、四人で戦った時の強さがグンと上がるんだ」

「でしょう?」

 髪をかき上げながら得意げに笑う。


「失礼します!!」

 廊下を走る音が聞こえたかと思うと、強いノックと共に扉を開けたのはクリフだ。

 第3騎士団長が直接来るのは珍しい気がする。

「ここホターラカの東および南方面にドラゴンが数体出現しました」

ドラゴンだって? それはまずいね。

 第1騎士団は東、第3騎士団は南、城門の外で迎撃態勢。

 第2騎士団は警戒態勢を取ると共に王都全体の警備を」

「ハッ!!!」


「アトス、済まないがフォーレの街を見てきてもらえないか。

 もしかしたらあっちにも魔物が出現しているかも知れない」

「分かった、任せろ。

 ドラゴンは問題なく倒せると思うが、その後に気をつけてくれ。

 今のお前達ならドラゴンが進化した竜人ドラゴニュートにも間違いなく勝てるが、油断すると街への被害が出てしまう」

「確か、ドラゴンを倒したと思ったときに竜人ドラゴニュートに進化するんだったね。

 分かった。気を抜かないようにするよ」


 今のホターラカの戦力なら、ドラゴンが例え10体居ようと何ともない。

 但し、一度に守れる範囲には限界がある。

 心配ではあるが、その辺りは俺よりもシャルロやアイリンの方が分かっているだろう。

 俺はシャルロに言われた通り、フォーレの街を見に行かねば。

 ドラゴン2~3体なら何とかなると思うが・・・・・・。


 焦る気持ちを抑えつつ、俺は転移門を開く。


次話は明日アップ予定。


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