第46話 新魔法
フォーレでの修行を終えた後、アトスは再びジパングの地に来ていた。
ほとんどの魔物を倒したはずだが、ジパングはもうすでに魔物の巣窟と化している。
「この魔物の急激な増加はやはり異常だな。
どこかにアヌグラ・マニュー団の拠点があるのかも知れない」
だが、俺がここに来た理由は俺自身の修行のためだった。
あの時、S8の海龍に俺は苦戦した。
と言っても、負ける可能性はほぼ無かったのだが、ここぞというときの決め手に欠けていたのは事実だ。
【封殺超爆発・改】で何とか倒せたものの、長時間にわたる消耗戦に陥る可能性があった。
そうなれば、周囲に与える被害は大きくなる。
ここジパングで戦っている限りは問題にならないかも知れないが、もし街周辺で戦うことになっていたらと考えると、あの戦い方ではダメだ。
それに、時間をかけすぎると周囲の戦況の確認や支援がおろそかになってします。
最悪の場合、そのせいで仲間が全滅してしまう可能性だってある。
だから俺はもっと強くならなければならない。
例えS8であろうとS9であろうと、一撃で屠るぐらいの強さを持たなければ。
魔物のランクがどこまであるのかは分からないが、とにかく今のままではダメだ。
「アイ、S6までの魔物はこれまで通り倒してくれ。
S7以上の魔物は俺の修行に付き合ってもらう」
『おっけー。お兄ちゃん、修行頑張ってね♪』
さて、強敵と出会うまで散策だな。
こうして散策するのは何だか懐かしいな。
この世界に来た当初は、こんな風に散策して魔物と戦うことを繰り返していた。
魔法が使えること自体が楽しくて、プログラミング出来ることに気づいてさらに楽しくなった。
魔法石を見つけたのもその頃だったな。
あの頃は何もかもが新鮮で、楽しかった。
もう一度あの頃のように初心に戻って、自分に出来ることと向き合ってみよう。
今俺が使える魔法は、火・水・風・雷・土・氷・光・闇・重だ。
さらに、色んな条件を組み合わせたり、新たな魔法を作り出すことが出来るプログラミング魔法。
プログラミングで作成した強力な合成魔法が【封殺超爆発・改】だ。
これは物理法則を利用することで、消費魔力の割に威力が大きい魔法だ。
同じように、もっと威力の高い魔法を作ることが出来ないだろうか?
この世界の物理法則が俺の居た世界の物理法則と同じとは限らない・・・・・・と言うか、まず違っていることは間違いない。
魔法が存在している時点でもはや同じでないことは確定している。
だが、【封殺超爆発・改】の例を取ってみても、もっと身近に『どこでも蛇口』の温度調整をみても、似たような物理法則も成り立っている。
つまり、元居た世界の物理法則を参考にしてみる価値は十分にあるということだ。
まずは不慣れな重力を強くする魔法の練習からだ。
重力を軽くする方は飛び回ることで十分に慣れているから、応用がきくはず。
『お兄ちゃん、S7の魔物が居るよ。
そこから右斜め前方に向かって』
「分かった」
・・・・・・
・・・
アレか。
巨大なバッファローのような姿だな。
種 族: ベヒモス
ランク: S7
俺の重力魔法の練習台になってもらうぞ。
ベヒモスは唸り声を上げながら頭を下げて突進してくる。
「これでどうだ!」
ベヒモスにかかる重力を10倍にしてみた。
スシン! と大きな音を立てて地面にへたり込むベヒモス。
だが、なんとベヒモスは立ち上がってきた。
起き上がれるのか・・・・・・自分の体重が10倍になったのと同じだぞ?
まぁちょうどいい。重力魔法の練習には持って来いだ。
微細なコントロールに慣れるため、ベヒモスにかかる重力を1倍ずつ上げていく。
足が地面にめり込みながらも、ベヒモスは歩くより速い速度で近づいてくる。
「とんでもない脚力だな」
つい声が出てしまう。
だが、30倍の重力に上げたところでベヒモスは力尽き、地に伏した。
地に伏したと言っても、動けなくなっているだけで倒せた訳じゃない。
この重力魔法だけで相手を倒すのは難しいようだ。魔力効率もかなり悪い。
そう言えば、飛び回る時は微妙な重力のズレを利用して回転したり蛇行したりしていた。
例えばこれを火球に応用してジャイロ回転を加えると、弾丸のように威力が上がるんじゃないか?
ドッジボール大の火球を二つ出現させ、片方はこれまで通り放ち、もう片方にはジャイロ回転を与えて放ってみる。
おぉ・・・・・・アレ?
特に変わらないな。
ちょっと弱く打ち出してみるか。
おぉ、ジャイロ回転を与えた方は真っすぐに飛んで命中した。
回転を与えていない方は山なりに落ちて届かなかった。
・・・・・・真っすぐ飛ぶだけなのか?
もっと大きな火球にもっと早い回転を与えてみようか。
【封殺超爆発・改】に使うくらいの熱さの、直径5mの火球を秒間300回転させてみる。
いや、秒間300回転はやり過ぎだとは思うよ?
でもな、火球を回転させるのが楽しくなって来ちゃったんだから仕方ない。
これは必要な実験だ、と自分に言い聞かせながら、俺は巨大回転火球を放つ。
・・・・・・
・・・
なんだ、今の!?
轟音と共に激しいエネルギーが発生したように感じたんだが。
その証拠と言って良いのかは分からないが、ベヒモスを倒してしまった。
さらに前方に甚大な被害が・・・・・・。
この魔法も結界で塞いでいた方が良さそうだ。
今の魔法だと【封殺超爆発・改】数発分の魔力消費だが、もしかしたら威力はもっと大きいかも知れない。
もう一度試したい。
S7の魔物、出てきてくれ。
・・・・・・
・・・
『お兄ちゃん、ラミアって言うS8の魔物が前から向かって来てるよ。
海龍にも勝てたし、大丈夫だよね?』
「あぁ、大丈夫だ」
デカいな。上半身は女性、下半身はヘビの見た目をしている。
済まないが、早速新魔法の練習台になってもらうぞ!
ラミアの周囲を多重結界で防護し、ベヒモスを倒したのと同じ魔法を放つ。
激しい音とエネルギーがラミアを襲う!
ラミアに大ダメージを与え、その直後に火球が直撃する。
だが、ラミアを倒すまでには行かない。
そして、あっという間に傷が修復されていく。
このランクになると当たり前のように再生するんだな。
じゃ、もう少し消費魔力を増やしてみようか。
直径10mの火球を秒間500回転、これでどうだ!
・・・げっ、マズい!
凄まじい轟音とエネルギーが発生し、ラミアの周囲の結界が次々に破壊されていく。
俺は慌てて10層の結界を追加する。
ダメだ、足りない。
さらに10層の結界を張り、ようやく衝撃を抑えることができた。
当然ラミアは消え去っている。
「ふぅ、焦った」
これで【封殺超爆発・改】を超える魔法が完成した。
消費魔力は数十倍になったが、S8の魔物を一撃で葬ることが出来る。
だが、まだ俺は満足していない。
とりあえずこの魔法は【超火球電磁砲】として登録しておく。
・・・・・・そうだ。結界を自動で追加するプログラム魔法にしておかないとな。
それでもまだ、俺の中にある漠然とした不安は拭えない。
これから先、もっと強い魔物が出てくるような気がしている。
そんな魔物と遭遇しても、何とかできる魔法を開発しておきたい。
例え大量の魔力を消費するとしても、切り札に成り得るものが欲しい。
まだ使いこなせていない気がする重力魔法。
それから、光・闇魔法。
この辺りを使って何か強力な魔法を作れないだろうか。
次話は明日アップ予定。
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