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第32話 二匹の竜

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 迷宮ダンジョンに入ったアトス達。

 異変が発生しているため大量の魔物が存在しているはずだが、視界に入るよりも早くAIが殲滅するため魔物と遭遇することが無い。

「気配はあったのに、魔物が全然いない」

 應龍ユキはまだソレ(・・)を知らないため不思議がっている。

「アトスの魔法だよ」

「えっ? そんな魔法、聞いたこともないんだけど」

「あぁ。ちょっとプログラミングしたんだ」

「ぷろぐらみんぐ?」

「そうなるよね。アトス、それ誰も分かんないよ?」

「む、そうか」

 がっくりと肩を落とすアトス。

「とにかく、すごいのね。さすがは聖人様ね!」

「ありがとう。だが、聖人様は止めてくれ」

「分かったわ。ふふっ、面白い人ね」


「ところでアトスよ、儂らはまだまだ修行が必要なんじゃが」

「そうだったな。通り道になりそうなところは魔物を倒さないようにしておく」

 こうして四聖獣は修行がてら迷宮に巣くう魔物を倒しながら進んでいく。

 と言っても、成体に進化した聖獣にかなう魔物などそうそういないので、少々物足りなさを感じながらではあるが。

「アトスって本当にすごいのね。これだけの魔物を倒し続けていたなんて。魔力切れの心配はないの?」

「あぁ。自然回復する方が早いからな」

「とんでもない魔力ね。さすがは私たちの主ね」

「主は止めてくれ」

「ふふ。さすがはアトスね」

 Sランクの魔物が次から次へと出てくる中、雑談をする余裕があるのはさすがは四聖獣と言ったところだ。


 アトス達は淡々と階層を進み続け、十階層までたどり着いた。

「広いね」

「いかにも特別な魔物が出てきそうな雰囲気じゃの」

「おでましのようだ」


 前方上空から四凶の眷属たちと同じ禍々しいオーラを纏った魔物が降りてくる。


  種 族: 饕餮とうてつ眷属

  ランク: S3


「どうやらユキの天敵の眷属のよう・・・・・・」

 アトスが言うより早く、ユキは怒りで全身を震わせている。

 アトスは『冷静になれ』と言いかけたが、ユキは成体に進化済だ。持続強化×10をかけておけば苦戦する相手ではないと判断し、黙って見守ることにした。


 ユキと眷属が対峙する。

 勝負はほんの一瞬だった。両者が動いたと思った瞬間、眷属の身体は真っ二つになっていた。

 ユキは成体に進化した聖獣なのだ。もはや眷属では相手にならない。

 だが、その直後に眷属の身体が元通りにくっつき、ユキに襲い掛かってきた。

 さらに、饕餮とうてつの眷属が数体出現し、一斉にユキに襲い掛かる。

 上空に逃れたユキを結界が捉える。

 それを見てアトスはAIに広範囲を探索させる。

『前方200m先の上空に人間の反応が複数あります』

「どうやら眷属を操っている者達がいるようだ。ユキ、手を貸そう」

「いいえ、まだ大丈夫よ」

 ユキは思ったより冷静のようだ。

 ユキは爪、拳、足、息吹を駆使し結界の破壊を試みるが、結界は破れない。


「くっくっく。我らの結界はそう簡単には破れぬぞ」

 黒い法衣の者達がぼんやりと姿を見せる。アヌグラ・マニュー団だ。

 その内の一人が何かを呟くと、十体の眷属が結界に捉われたユキを取り囲み魔力を溜め始めた。

「ユキ、奴らの攻撃と同時に結界を解くつもりのようだが、大丈夫か?」

 アトスの心配をよそに、ユキは結界を攻撃し続けている。

 ・・・・・・

 ・・・

「なっ!? ばかな!」

 結界に亀裂が入る。それを見逃さず、ユキは咆哮とともに渾身の一撃を繰り出す。

 ユキを捉えていた結界は砕け散り、その瞬間、ユキは十体の眷属を木っ端微塵にしてしまった。

 こうなってはさすがに再生はできない。


 さらにユキは黒い法衣の集団を攻撃する。

「待て、ユキ!」

 何とかして少しでも情報を集めたい。そのためには生かして捕らえる必要がある。

 だが、ユキはもうアヌグラ・マニュー団に襲い掛かっていた。

 その瞬間、アヌグラ・マニュー団の後ろから凄まじい炎のビームが飛んできた。

 ユキは間一髪で直撃を免れたが、少しダメージを受けている。

『奥に出現した魔物の鑑定結果です』


  種 族: 火竜ファイアドラゴン

  ランク: S5


「我らの邪魔をする者がいると報告を受けていたが、貴様達のことだな」

 明らかに格好が違う男が話しかけてきた。

 他のものとは法衣の『格』が違っている。

「お前達の邪魔をしているつもりはない。ただ魔物を倒しているだけだ」

「ククッ、何とでも言うがいい。我々の邪魔となるものは生かしてはおけん。お前達には火竜の餌食となってもらう」


「オト、ショウ、ジョグ。一緒に戦ってやってくれ」

 三人とも強敵と戦えることが嬉しいようで、喜び勇んで火竜に向かっていく。

 さすがに四聖獣が揃うと火竜と言えども押されている。

 だが、幹部と思われる男が支援魔法を使うと状況は一変した。

 徐々にだが四人が押され始める。

 竜が吐く炎の息吹はオトの炎よりも強く、かき消すことができない。

 ただ暴れるだけで、四人が少しずつ消耗させられていく。

 アトスは、四人にかけている持続強化をさらに強化しようかと思案したが、倍率を上げれば上げるほど魔力消費量が指数関数的に跳ね上がっていくためAIに相談する。

『今の魔力なら四人に20倍をかけても問題ありません』

 というAIの声があったので、躊躇なく持続強化×20をかける。

 これで再び情勢は四聖獣優位に傾く。むしろ、相手が支援魔法をかける前よりも圧倒している。


「そやつらは水竜を倒した奴等だ。火竜だけでは勝てんだろう」

 恐らく幹部と思われる男が新たにやってきた。

「もしやと思い、コイツを連れてきていのが功を奏したな」

「お主も来ていたのか。これで奴等に勝ち目はない」


『新たに魔物が出現しました。鑑定します』


  種 族: 地竜アースドラゴン

  ランク: S5


 ドラゴン二体か。さすがに厄介だな。

「俺が片方もらおうか」

 アトスは四聖獣には荷が重いかも知れないと思って聞いてみた。

「ボク達の獲物を取らないで!」

 オトに怒られた。他の三人も同じ気持ちのようだ。

「ヤバくなったらすぐに言ってくれ」

 まったくお前らときたら、とアトスは呆れ気味に言う。

 それでも、聖獣の修行としてはこれほど適したものは中々ない。いつものように保険の自動回復をかけて戦いを見守る。


「AI、この場にいるすべての人間を捕獲して尋問しよう」

 四聖獣が二体のドラゴンと戦っている間に、アトスは人間同士の戦いを進める。

 と言っても、もうアトスは人間ではないのだが。

「グッ、なんだ!?」

 アトスの魔法でアヌグラ・マニュー団のメンバーたちを確保した。

「お前達の企みについて聞かせてもらおうか」

「まだ戦いは終わっていない。貴様達が竜に勝てるとは限らん」

 そう言って幹部の男は戦闘に目をやる。

「ば、馬鹿な・・・・・・」

 二体の竜はともに瀕死の状態となっていた。そして、今まさにとどめを刺そうかというところだった。


 瀕死になっているものの、二体の竜はまだ大量のエネルギーを有している。

 再生する前に倒さねばと聖獣たちがとどめ刺そうとするも、一歩間に合わず。

 竜の膨大なエネルギーが凝縮していく。

 そのまま竜自身の身体を飲み込んで凝縮を続け、二体の竜は人の姿になった。

 竜人への進化である。


『鑑定結果』


  種 族: 火竜人ドラゴニュート

  ランク: S6


  種 族: 地竜人ドラゴニュート

  ランク: S6


「ふ、ふははは! まさか竜が進化するとは。だが、これでお前達は終わりだ!」

 アヌグラ・マニュー団はまさかの出来事に驚き、歓喜している。

 だが、アトスは【封殺超爆発プリズンド・エクスプロージョン】であっさりと地竜人を倒す。

「な、なんだ今のは!? ま、まさか貴様が・・・・・・」

「あぁ。さすがにアレが二体いるとあいつ等もやばいだろうからな」

「「「「・・・・・・!!」」」」

「お前達、そいつと戦ってみるか? 俺が倒してもいいが・・・・・・」

「「「「戦う!」」」」

 満場一致だ。

 自動回復もかけているし、四対一だ。何とかなるだろう、とアトスは思った。

 何とかなるというのは『勝てるかどうか』ではなく、聖獣たちが命を落とすようなことにはならないだろう、ということだ。


「さて、今度こそお前達の企みについて聞かせてもらおうか」

「くっ、まぁいい。どうせお前達にはどうすることもできない。いいか、我らは世界の救世主なのだ。この世界は汚れきっている。このままでは浄化することはできない。だから、一度滅亡させることで浄化し、再生するのだ!」

「滅亡させてしまったら、その後の世界には誰もいないだろう」

 アトスは素朴な疑問をぶつける。

「我ら救世主は当然残るに決まっているだろう。我らを祖として清らかな世界を創り上げていくのだ」

「なんだ。ただ単に世界征服したいだけか」

「き、キサマキサマキサマキサマァァァーーー!!! 我らを愚弄するか!」

「貴様がなんと言おうと我らの計画はすでに進んでいる。竜を倒した程度では止められんのだ!」

 幹部たちの雄たけびの後、アヌグラ・マニュー団は全員自害した。

「やれやれ。思想も行動もカルト集団そのものだな」

 とは言え世界を滅亡させようとしていると聞いては黙っていられない。

 何とかしないとな、とアトスは思った。


 アヌグラ・マニュー団との会話を終えたアトスは四聖獣の戦いに目をやる。

 やや押されてはいるものの、善戦している。

 個の力では圧倒されているが、上手く連携を取って戦っている。

 だが、例えダメージを与えてもあっという間に再生される。

 四聖獣たちも持続強化のおかげで受けるダメージよりも回復速度が勝っており、火竜人が優勢ではあるものの戦況としては膠着していると言える。

 四聖獣にとって、修行という意味では最高の相手と言えるだろう。

 致命傷を受けないものの、相手の方が格上であることの違いはない。自分よりも強い相手と戦うことで、大きな経験を得ることができる。

 もちろん、戦いにすらならない程に圧倒的な差がある場合は別だが。


 しばらくすると、徐々に四聖獣が優勢に立ち始める。

 戦いの中でグングン成長しており、さらには連携も進化している。火竜人の再生がやや間に合わなくなってきている。

 アトスは四聖獣の成長のため、持続強化の倍率を少しずつ下げる。

 できるだけ膠着状態が続くように、細かく調整をしながら。

 聖獣たちも当然それに気づいており、内心アトスに感謝しながらこの楽しい戦い(・・・・・)を続けている。

 永遠に続けられそうに思えたこの修行(・・)だが、突然終わりを告げる。

 持続強化の倍率が10を下回った頃、火竜人の再生が一気に遅くなった。

 どうやら内在する魔力が尽きたようだ。


「終わった。随分強くなったんじゃないか」

「楽しかった♪」

「いい修行になったわね」

 皆、手ごたえを感じているようだ。


「俺はタンバサ国王の所に行ってくる。お前達はどうする?」

「じゃあ、騎士団と修行しようかな」

「分かった。皆もそれで良いか?」

「なんだか楽しそうね。私も付き合うわ」

「儂もお願いするぞ」


 アヌグラ・マニュー団の狙いについて、国家レベルで対応する必要があるだろう。だが、政治に関することはアトスにはどうにもできない。

 アトスはタンバサ国王に話を伝え、何とか動いてもらおうと考えていたのだ。


 こうしてアトス達は一旦タンバサ国に立ち戻ることとなった。


次話は明日アップ予定。


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