第31話 邂逅4
アトスは別行動中の三人に声をかける。
誰かがオービの北西にある湖の近くに行っていないかと、淡い期待を込めつつ。
「皆、今どこに居る?」
三人はそれぞれ別の迷宮に入っているようだ。
「特に変わったことはないか?」
「うーんとね、強い魔物が多くて楽しい♪」
「こっちも同じく、Sランクと思われる魔物がうようよしている」
「こっちもじゃ。これだけの数を相手するのは少し骨が折れるわい」
それぞれ異変が起きているようだ。万が一に備えて、アトスは三人に持続強化×10と自動回復をかけておく。
「ヤバそうなのが出てきたら連絡しろ」
三人にそう言って、アトスは北西の湖に向かう。
しばらく走ると湖に出た。
近くに人の気配がないか探索しながら湖の周りを走り続ける。
『人を探知しました。四人の人間と・・・・・・應龍という存在が戦っているようです』
魔物じゃないのか? AIの言い方に引っかかるアトス。
とにかく人が襲われていることに違いはないだろうと、急いでそこに向かう。
そこには白く美しいドラゴンがいた。
だが、どうにも様子がおかしい。狂暴というより、怒っているように見える。
「大丈夫か。なにがあった?」
「この先の迷宮がどうもおかしくてな。魔物が大量発生したり、強力な魔物がゴロゴロいたり。素材集めがてら討伐していたんだが、突然あの恐ろしいドラゴンが現れたんだ」
やはり迷宮に異変が発生しているようだ。ということは、その原因がこの應龍なのか?
いや、迷宮の異変を起こしている魔物はいつも迷宮の最深部に居る。ということは、應龍はもしかしたら異変を起こした存在に怒っているのかも知れない。
「このドラゴンは悪者ではないかも知れない。俺に任せてくれないか」
「あ、あぁ。俺達の手には負えない。アンタは大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫だ」
この四人を戦いに巻き込んでしまっては危険だと判断し、アトスは四人の前に結界を張る。
「俺は味方だ。話を聞け」
應龍は呼びかけに反応せず、氷の息吹を吐く。
アトスは一切動じず呼びかけを続けるが、應龍は聞く耳を持たない。
そんな中、アトスには一つの疑念が浮かび上がる。
「AI、この應龍ってのはもしかしたらオトやショウ、ジョグ達と同じ聖獣じゃないか?」
應龍の吐く息吹や羽ばたきからはどことなく聖なる力を感じる。
それに身体全体からもどこか神聖な雰囲気を感じ取っていたのだ。
『鑑定結果は、聖獣です』
それなら、とアトスは攻撃に転じる。
それは應龍を倒すためのものではなく、聖なる力を込めた攻撃を見せることで味方だと伝えるためだった。
アトスの攻撃に聖なる力を感じ取った應龍は、その動きを止める。
「貴方は・・・・・・?」
「俺はアトス。お前の味方だ」
「確かに貴方からは私と同じ聖なる力を感じる」
「あぁ。霊亀が言うには、俺は聖人らしい」
「聖人! それに霊亀を知っているの?」
「あぁ、知っている。鳳凰、麒麟とともに俺の仲間になってくれた」
「そう。なら私もあなたの仲間に入れてもらえる?」
「もちろんだ」
「あ、あんた何もんだ?」
「ただの魔法使いだ」
「いや、それはちょっと無理があるんじゃ・・・・・・」
「ところでアンタ達の持っている剣はただの剣じゃないように見えるんだが、もしかしてマサムネの剣か?」
「この剣のすごさが分かる時点でただの魔法使いじゃないぞ」
「って、アンタ、今マサムネって言ったか?」
「もしかして知り合いなのか?」
男たちが矢継ぎ早に聞いてくる。
「あぁ。今俺の考えた道具を作ってもらっている」
「「「「し、師匠が!?」」」」
「ん? アンタらもマサムネの弟子なのか」
「あぁ、そうだ。・・・『も』ってどういうことだ?」
「サダムネっていうマサムネの弟子も一緒に作ってくれているんだ」
「俺達も一緒にやらせてくれ!」
「また師匠と一緒に物作りがしたいんだ」
「良いのか? 俺達もいま人手不足で困っていたからちょうど良い」
「ぜひ、頼む!」
じゃ、早速と言って、マサムネ工房に転移門を繋げる。
「「「「な、なんじゃそりゃー!」」」」
初めて転移門を見た者はただただ驚くばかりだ。
「マサムネ、お前の弟子だっていう四人を見つけてな。手伝ってくれるらしいから説明から頼めるか」
「弟子? おぉ、お前らか。久しいな。元気そうで何よりだ」
「「「「師匠! お久しぶりです!」」」」
四人はみなマサムネに会えて感激している。
「じゃ、任せたぞ」
「あぁ、任せろ」
転移門で四人をマサムネのもとに送り、アトスは元の場所に戻る。
──
「待たせたな」
「ううん。それより貴方すごいのね」
「ん?」
「さっきの、見たことも聞いたこともないわ」
「転移門か。便利だろ? それより、皆と会ってみないか」
アトスは三聖獣に話しかける。
應龍と出会ったことを伝えようとしたが、それより先にオトが勢いよく話してくる。
「アトス、ボクも成体に進化できたよ!」
「俺もだ」
オトとショウが成体に進化したようだ。アトスは何かきっかけがあったのか尋ねてみる。
「二人とも、何かあったのか?」
「えっとね、窮奇の眷属を見つけて戦ってたら進化できたよ。成体になったら眷属なんて余裕だよ♪」
「オトもか。俺も檮杌の眷属と出くわしてな。戦闘中に進化できたおかげで倒すことができた」
「ほっほ。二人とも進化できて何よりじゃな。儂も渾沌の眷属と出くわしたぞい」
「三人とも天敵の眷属と出会ったのか」
何か裏がありそうだと感じるアトス。もしかすると、この先の迷宮には應龍の天敵の眷属がいるのかも知れない。
アトスは三人の居場所に転移門を繋げる。
「みんな久しぶりね。あら、みんな人の姿なのね。じゃあ私も」
そう言って應龍も人の姿になる。
白く美しい長髪、強気だがどこか優しさを感じる美しい碧眼。白く透き通る肌。應龍の人の姿は絶世の美女と言っても過言ではなかった。
「儂らはみなアトスの従者になっておるのじゃ。なにせ、アトスは聖人じゃからの」
「そうね。彼は間違いなく聖人だわ。ねぇアトス。私も従者にしてもらえないかしら?」
「あぁ、分かった」
こうして最後の聖獣・應龍がアトスの従者に加わった。
「そう言えば、應龍はなぜあんなに怒っていたんだ?」
「この辺りから饕餮の気配を感じて来てみたら、怪しげなオーラを放つ剣を持った男たちがいて、饕餮の仲間だと勘違いしちゃって・・・・・・」
「勘違いで人を襲っていたのか」
「さすがは應龍じゃの」
「・・・・・・ごめんなさい」
「次からは気を付けてくれよ」
「はい。。。」
「ところでアトス、應龍には名前をつけてあげないの?」
「そうだな、應龍が嫌じゃなければ考えるが」
「名前を付けてくれるの? 嬉しい!」
どうやら名前を付けてもらうのは相当嬉しいことのようだ。
「氷、吹雪、雪・・・・・・ユキ。名前は『ユキ』でどうだ?」
「ユキ! 美しい名前ね。ありがとう!」
アトスが考えた名前を應龍は気に入ったようだ。
「お前達三人はそれぞれ迷宮で天敵の眷属と出会ったんだな?」
ということは、應龍が感じた通りこの先の迷宮に應龍の天敵の眷属がいることは間違いないだろう。
恐らくアヌグラ・マニュー団がその動きを活発にしているのだろう。
もしくは、タンバサは距離の問題で活動があまり活発ではなかったのかも知れない。
どちらにせよ、この先の迷宮にも異変は起きているだろう。Sランクの魔物がうじゃうじゃ出て来てはこの国の住民にも危険が及んでしまう。
そうなる前に、アヌグラ・マニュー団の企みを止めておかねばなるまい。
「皆、この先の迷宮には恐らく應龍の天敵の眷属がいる。そいつを倒しに行こう」
アトスにとってはこの国に来て初めての迷宮だ。
四聖獣が揃って以前よりも心強さも増している。
アヌグラ・マニュー団の企みなど、ササッと止めてしまおう。
アトス達は饕餮の眷属がいると思われる迷宮にたどり着いた。
次話は明日アップ予定。
ブックマーク、いいね、評価、レビューいただけると幸いです。
よろしくお願いします。




