12話 陰陽庁 ~舞台裏の二人~
週一月一更新どころか年一更新すらできなかった。
「………」
「あら、どうしたの?」
「聞いていたとはいえ、あまりの優秀さに少々唖然としていた、かな」
「疑っていたの?酷い親友ね」
発している台詞とは裏腹にクリップボードに留められた書類をボールペンでノックしながら楽しそうに言葉を交わしているのは二人の女性。
宇佐美 麗華、陰陽庁第三課所属、A級退魔執行官。
第三課は研究や解析、それとライセンス発行の試験などを行う部署である。
彼女自身、気質や性格的に実戦向きであり国内でも上位に位置する対霊戦闘能力を持っているものの、直接戦闘よりも支援に向いた術式を得手としている為、現場に出る事は少ない退魔執行官である。
御巫 雅、陰陽庁第二課所属、特A級退魔執行官。
第二課は対霊的戦闘を専門とする実働戦闘を担当とする部署である。
榛香の実の姉でもあり御巫家の次期当主。御巫家は女系相続の家の為長女である彼女が継ぐことになっている。
平時はおっとりとした外見で性格も穏やかであるが、いざ実戦となれば国内でも上位十指に数えられる程の超一流の退魔執行官である。
封印地での実力確認から既に一週間の時が過ぎていた。
あれから退魔執行官に必要な知識を詰め込み、陰陽術の基礎を学ばせ資格試験の日を迎えるに至っていた。
クリップボードに留められた書類に記入されているのはエルフィリアの評価採点の書類。
「筆記試験正答率92%。現時点で霊力等級特A級。魔力等級A級。聖力等級S級。総合評価S級判定……実技試験はこれからだけれども君がしたのなら問題は無いのだろう?優秀過ぎる子だな」
「おまけに家事も教えたら直ぐに覚えたし、性格良し、容姿端麗と隙が無いわよ」
余りの評価に呆れた様子の麗華に対し、何処までも楽しそうな雅。一週間も共に過ごせば気安くもなるのだろう。
「それで、例の件は?」
雰囲気変わらずに何気ない口調で問いを投げかける。
「……霊紋称号は95%で一致、懸念通りほぼ同一だよ。霊基核の整合率は100%で一致。実際本人を目の前にして別人という事は理解してはいるが……これだけの証拠が揃っている以上は彼と無関係という事は無いだろうね」
「そう、ね……可能性の一つとして予測はしていたのだけれどその線が濃厚なのよね」
「それで、どうするつもりだ?」
訝し気に答えを伴す。
「……どうもしないわ。一先ずは様子を見ましょう、貴女の言う通り別人ではあるけれども無関係では無い。私の予測が正しければ現時点でこちらから出来る事は無いわ」
逃げの回答、先送りだとは理解はしているが手の打ちようがないのも事実である。
「そうか、まずはここに持ち込んだ術式の解読が済んでからか?」
「えぇ、そのつもり」
「しかし、予測はしているという事は気付いているのだろう?あの術式の概要程度は」
「……相転移、でしょ?細かい設定までは流石に専門じゃないからわからないけれども予測はついているわ」
その場に沈黙がおりる。
「心配するな、という方が無理か……確か彼は例の件を追っていたはず、そんな彼が消息を絶った所に彼女が現れた。相転移の魔法陣に加え霊紋照合、霊基核の一致とくればアレでほぼ答え出ているようなものだろう?問題は理論上可能と仮定されているだけ、一つの可能性でしかない」
「だからこそ彼女が決め手となる鍵だと睨んでいるわ……心配しなくても少なくともあの子自身に悪意は無いわ、危険性を理解していないだけかもしれないけれども真っ直ぐで純粋ないい子よ」
「まぁいいさ、他ならぬ君が大丈夫だというのなら信用はするとも。手が必要なら頼ってくれ、君はいつも一人で抱え込みすぎる、私は君の親友なのだろう?」
「ありがとう、その時はお願いね」




