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第十一話 かんおけ
巻き付いていたコードが落ちた。
「開ける……よ?」
少年は妨げるものがないことを確認した。
「うん」
少女は面白そうに眺めている。
少年は再び突起物に手を伸ばした。
――カチャリ。
「開いた?」
横開きで、少年の位置から中は見えない。
「うん。ばっちり」
ありがと、と少女。
「何入ってる?」
少年がドアを押さえたまま言った。
少女はんー、と覗き込む。
「これは、花?」
そう言って、少年の前に一本持ってきた。
赤色で、小さい。
「ほんとだ。花。久しぶりに見た」
少年はまじまじとソレを見つめる。
「でも、偽物っぽいよね」
「造花?」
「それそれ」
確かに、と少年。
触れて見ても、かさかさとした感触がするだけ。
「あと何かある?」
んーとね、と少女。
何かを掻き分ける音がする。
「花しか、ない?」
「そっか」
はぁ、と少年は溜息を吐いた。
なおも、少女は花を掻き分けているらしい。
地面に花が散っていた。
「待って。あったよ」
少女が嬉しそうに声を上げた。
「お。何?」
少年も腰をうかす。
少女が少年の方を向いて、笑いかけた。
「にんげん」




