間飛ばして・・・最終章
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気づいた時、重苦しい鈍痛を額から上に覚え、生暖かい漆黒に包まれたベランダの脇で伏していた。全裸だった。どこまでが現実かなにが続きか判別がつかなかった。僕は何をしようとしていたのか、このあと何をしたいのか皆目わからなかった。だけどわからなくていいように思えた。不確かであるが、僕は以前の飛びたくて飛べない僕に小さな羽根が生えた気がする。じゃあ飛べるのかと問われればきっと飛べはしない。なにが変わったのか説明つかない。もしかして何も変わってないのかもしれない。けど、以前の僕じゃない気がする。でもこの生暖かさは母の干渉に似た懐かしさを覚えた。
ベランダの外は黒より黒い暗闇だった。そこに紙ひこうきがまぎれていてもいっこうにかまわないが、もし僕が投げたら浮かない気がした。何かにさらわれることはないように思えた。
闇に声はしない。何の文字もない。闇は塵もなくきれいに浄化されていた。何だろう、そこに飛びたいなんてただ欲しがるだけの救いを求めてはいけない気がした。
闇に申し訳なくて逃がした視線の先に不格好な足指が臆病に寄り添って並んでいた。僕のふやけた白い足が輪郭を曖昧にしてベランダのうえに消えそうになりながら生えている。実在として2本までは数えられたが0本でも異議を唱えるつもりはない。一体この足は何のためにあるのか。不安になってはいないけど役に立たない方が役に立つよりいいと思えた。でも足は消えずにある。多分役に立たなくてもあった方がいい。いまの僕にはこれしか目的地に向かえるものがないから。例え目的地がなくても僕はこれに乗っていなければならない。なにかにそう命じられた気がする。
宇宙人は本当にいたんだろうか? 耳を凝らして聴けば彼の声が聞こえるのだろうか? でも僕は彼の声を耳にしてはならない気がしていた。万一また勘違いをして彼にひっこ抜いてもらいたいなんて思ったら今度こそはここに戻って来られなくなるようで。いやいまの僕には聞けない。そんな聴力を僕は備えていない。
だけど不思議だ。聞こえないはずの彼の声を自分の声に忍び込ませて響かせているように感じるんだ。錯覚に違いない。錯覚だと思うよ。だけど、それは割とリアルな響きだった。
(こんなんじゃ僕の星に来られるはずないじゃないか。もう一度、やり直し!)
水無月はたち
・・・書きたいのは、こういう作品かもしれない。




