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「こんばんは、魔法少女です!」  作者: ROGOSS
第二部 Magical girl Emotion
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Magical girl part1 須藤 藍那

 私が魔法を扱えるようになってからどれだけの年月が経ったのだろうか?

 幼い頃にたまたま母の携帯を見てしまった。

 現れた真っ赤な文字。


『叶えたい願いがありますよね?』


 その一言は私にとって魅力的だった。

 両親の関係は冷め切っており喧嘩が続く毎日だった。お互いに愛人を作るが、法律上夫婦であるため世間体を気にするあまり離婚を選択することはない。日夜続く家庭内の冷戦は私の心の中に重い泥として蓄積し続けた。

 随分と前に両親の仲を戻そうと結婚記念日を調べて花束を用意した。

 だが、私の些細なサプライズが相手にされるわけもなく、それどころか「こんな奴と結婚したことのどこがめでたいんだ!」と怒鳴られ蔑まれた。

 そんな時に私は母の携帯で例のメールを見つけた。

 私はメールに指定されていた場所へと向かって願いを叶えるべく、魔法少女となった。

 私の願いはただ一つ。


「私の産まれた理由を知ること」


 私の誕生のきっかけを作った両親は私を否定し続ける。環境に馴染むこともできず、私は社会から孤立していく。私がある日突然いなくなってしまったとしても誰も気にとめることはない。そんな時に願った私の願いはMaJoに歓迎された。

 私に与えられた使命はいつの日か現れる少女を魔法少女とすること。

 そして高校生になった私はついにその少女を見つける。

 新島楓はどこにでもいる少しだけ気の弱い女の子だ。

 なぜMaJoが彼女を欲しているかはわからない。理由などどうでも良い。与えられた使命を実行することだけが私に必要なことなのだ。

 入学した次の日に私は彼女へと接触を図った。


「ねぇ、私、友達いないんだけど、友達になってくれない?」


 彼女が誰かに頼み事をされると断れない性格だということは、事前の調査で知っていた。そのため、一番最初にかける言葉を選ぶことは容易だった。

 案の定彼女は、迷う素振りを見せることもなく私の友達となってくれた。

 それから一年、彼女と毎日登下校をして勉強会を開き、数多くの言葉を交わした。一年も友達関係を続けていくと私の中で別の感情が生まれた。

 彼女と本当に友達としてだけ付き合いたい。

 当初の目的を忘れ、私は精一杯友達として付き合い続けた。

 彼女の幼馴染みだという海藤新に出会ったのもその頃だった。楓と新が両想いでありながらも、気持ちを話し合えていないことは一目でわかった。

 私は彼女の恋を応援した。私では絶対に手に入れられない幸せを掴んで欲しいと思った。

 

――あれから1年が経った。

 私の目の前には彼女が死んでいる。

 彼女は最後の最後まで人間としての尊厳を捨てなかった。

 友人が殺されかけていることを気にかけながらも、彼女は人であり続けた。それは私にはできなかった選択だ。

 私に襲いかかってきた仮面をつけた謎の人物……自称「死神」も予想外の出来事が起きたかのように動きを止めた。


「どうして……」

「どうしてじゃない。これがお前達のやり方だ。人の心を弄んで、命をかけた選択をいつも迫る。だから……魔法少女は消えるべきなんだ」

「……そう、魔法少女は消えるべきと思っているのね」

「当たり前だ。お前達がいなければ誰も傷つかない」

「それはどうかしら? 私達が曲がりなりにも悪人を裁き続けていなければ、この国はもっと多くの犯罪の温床となっているはずよ。私達は正義を執行しているの」

「その結果がお前の友の死に繋がっているとしてもか」


 私は楓の死体を見つめた。

 思い出は頭の中であふれかえる。それでも……私は思い出に蓋をする。私は魔法が使える人外。人と仲良くするのは自己に利益がある時だけ。ただのお遊びでしかない。


「楓が悪いの。さっさと魔法少女になっていれば良かったのに」

「それがお前を庇って死んだ者にかける言葉かッ!」


 死神が鎌を振るう。

 私は鎌を自身の持ってるナイフで受け止めた。

 殺されかけそうな演技が終わった。ここからは本気で目の前の敵対勢力の相手をしてかまわない。


「そうよ。素質があっても使い方のわからない才能に興味はないの」

「お前ッ……!」

「アナタはどれくらい持つかしら? 1時間? それとも1分……?」


 心を無にする。

 私の人生でひとりだけの親友は私のくだらない使命のせいで死亡した。しかし、私はこれからもMaJoの指示に従い続ける。MaJoこそが私の人生を変えてくれた唯一無二の存在。

 無心で目の前の死神へ斬撃を繰り返す。それなのに何故だろうか? 心が痛い。明日からあの笑顔を見ることは出来ない。

 私にとって楓も人生を変えてくれた一人だった? ならば私はいったい何をしているのだろうか?



「疲れた。考えるのはやめよう」

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