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下 セシャトさんの仲間入り!?

 来賓客がみんな帰ったころ。給糧艦「間宮」艦内食堂にて・・・・・・









「それじゃあ、今回の『記念動態保存艦隊特別大観艦式』成功を祝して、カンパーイ!」

『かんぱ~い!!』

 旗艦である大和長官の音頭で、間宮食堂内に集まった艦魂+わたし―初霜実をはじめとする一部の人間たちがコップを持った手を突き上げる。

「まずはご一献・・・・・・・・」

 わたしは、近くのテーブルからサイダーの瓶を取ると、セシャトさんのコップに中身を注いだ。

「ありがとうございます。」

 セシャトさんはお礼を言うと、それを少し口に含んだ。

「実、僕には?」

「あんたは自分で勝手に飲んでなさい!」

 ねだってくる永信のみぞおちにこぶしを叩き込み、セシャトさんのほうに向きなおる。

「あの・・・・・・・永信さんは大丈夫なんでしょうか?」

「日常茶飯事です、ツッコむだけ無駄ですよ。」

 心配そうにおろおろするセシャトさんにハル姉が言う。

「みんな~!お待ちかねの『間宮羊羹』やで~!」

 宜民さんが。羊羹の山積みにされたお盆を持ってきた。ちなみに、宜民さんのいるところには、もれなく間宮がついてくる。

「ラムネとアイスもあるぞ!」

 大和長官が、瓶ケースとクーラーバッグを抱えてやってきた。

「大和長官!宜民さんに手を触れたら許しませんよ!」

 間宮が大和長官に向かって叫ぶ。

「司令長官に向かってなんだ、その態度は。わたしはただ間宮おまえと宜民中尉を愛でてやろうと・・・・・ごふっ!」

 よだれをダラダラ垂らしながら近づこうとした大和長官が後ろからサーベルの峰うちを受けて倒れる。

「こら!間宮が言ってるんだから、ちゃんと尊重してあげないとダメです!」

 鞘に入ったサーベルを構えて、一人の艦魂が現れた。金髪に青い瞳、白い肌・・・・典型的な白人だ。

 この子は、今回アメリカから特別参加したアメリカ海軍戦艦「USSミズーリ」艦魂のミズーリ。普段は真珠湾で隠居暮らしをしてるけど、たまーに海に出てる。

大和こいつはわたしがしっかりと始末しておきますので、こちらのラムネとアイスクリームは皆さんでお食べください。」

 大和長官の襟首をつかんで引きずっていくミズーリ。その姿は、あっという間に無数の艦魂たちの間に消えた。

「ふふふ、これがうわさに聞いていた大和のラムネですか。楽しみですね。」

 セシャトさんが瓶を一本手に取った。わたしたちも、瓶を手に取る。

 プシュッ!

 ビー玉の栓を瓶の中に落とすと、こぎみよい音がして、泡があふれ出た。

 ごくっ!

 みんなほとんど同時にラムネを口に含む。そして、これまた同時に・・・・・・

「おいしいですね。」

「そうですね!」

 みんなあっという間に飲み干す。

「島風!いくら速く走れるといっても、それで止まり切れなくて艦底を暗礁に擦ったらダメでしょ!もう!修理するあたしの身にもなってみなさいよ。」

 駆逐艦「島風」艦魂の島風を叱ってるのは、工作艦「明石」の艦魂の明石。

「まあまあ、そんなに怒らないの。」

 工作艦としての先輩で、日露戦争には戦艦として参加した「朝日」艦魂の朝日が明石をなだめる。

「大和お姉ちゃん!」

「おお!武蔵!」

 戦艦「武蔵」艦魂の武蔵が大和長官に抱き着き、大和長官がその頭をなでる。って、いつの間に復活した!?

「信濃はいいよね~。最新艦上戦闘機の『烈風』積めて。わたしなんて九六式艦上戦闘機だよ!あの固定脚の!」

「龍驤さんの短い甲板では、カタパルトでもない限り『烈風』は使えませんよ。」

「お前のその艦体カラダよこせぇぇぇぇぇぇぇ!」

「あらあら、困ったわねぇ。」

 真珠湾組じゃない空母の信濃と龍驤がじゃれあい。その様子を世界初の空母の鳳翔が眺める。

 会場内は、たくさんの艦魂たちでにぎやかだ。

「皆さん、楽しそうですね。わたしも一瞬、神崎戦闘隊に入りたいなって思いました。」

『どうぞどうぞ!』

 わたしと永信、ヤスにいとハル姉、みやびが一斉に反応する。

「入ってくれるなら大歓迎ですよ!」

 みやびがセシャトさんの手をガシッと握る。

「でも、わたしは飛行機の操縦が苦手なんですが・・・・・・・」

 セシャトさんが断ろうとすると、みやびはさらに続けた。

「そうだったら、『名誉司令』でお願いします!一応元帥相当官なんですから、むしろこっちのほうがお似合いです。」

「セシャトさん、お願いします。」

「わたしも、お願いします。」

 ヤスにいとハル姉も頭を下げた。

「僕もセシャトさんに仲間になってほしいです!」

 永信までセシャトさんに頭を下げる。

「わ、わたしもです!」

 わたしも、帽子を取ると、頭を下げた。

「う~ん。」

 セシャトさんは、しばらく考えると、口を開いた。

「わかりました。引き受けます。」

「ほんとですか!?」

 みんな一斉に顔を上げる。

「はい!別に飛行機に乗ったりするわけじゃないそうですし、いいと思います。」

 セシャトさんがほほ笑んで言った。

「やったぁ!」

「これからよろしくお願いします。セシャト元帥!」

「視察用の九七式司偵は丁寧に整備しておきますよ!」

 ヤスにい、ハル姉、みやびがそれぞれに声を上げる。

「ふふふ、楽しそうになってきましたね。」

 セシャトさんが笑って、サイダーを飲んだ。

「あ、そうでした。これをどうぞ。」

 ヤスにいが、桐箱をセシャトさんに渡す。そこには、海軍元帥の階級章が入っていた。

「それじゃあ・・・・・・」

 ハル姉が口を開いた。

「これからも、よろしくお願いします。」

 みんなで一緒に頭を下げる。

 ボーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 間宮の汽笛が、わたしたちを祝うかのように鳴り響いた。

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