クロース
目が覚めた。
昨日のこともあって大学に行きたくない気分だな。
だがここで休むわけにもいかないか、と思い直し、着替えやら朝食の準備をしようと起き上がると。
俺の横で(この部屋にはベッドが一つしかない、寮ゆえ、そもそも俺の家というべき空間はこの部屋一室のみ、掛け布団は昨夜俺が逃げるように被ったもの一枚、そしてその掛け布団の内側に収まっている、俺と、13)13が、寝ていた。
下着姿で。
あぁ、俺昨日かなり怒っちゃったからな。
13もそんな俺のためにひと肌脱いでくれたのかもしれないわけがないな。
うん。
どうしよう。
考えた末、俺はデジタルカメラを鞄から取り出して、部屋の電気をつけ、幸いにもその明かりで13が目を覚ますことはなかったので、すやすやと寝息をたてている13を写真に収めた。
ふむ。
これがあれば割と奪われた未来とか割とどうでもいい気がしてきたのは割と問題あるだろうか。
寝顔まじかわいいんだが。
いやしかし普段からかわいいのでここではせいぜい1.1倍の可愛さ、という表現にとどめておこう。
さて。
共同キッチンしかないこの寮では朝普通の時間だと混むので、俺は少し早めに朝食を作りに行くようにしている。
俺は13に布団をかけなおさず、13を起こさないように、その辺に散らかっている13の服もしっかり回収し、部屋を出た。
約20分後。
俺は二人分の朝食を持って部屋に戻った。
13がくるくると布団を体に巻きつけてこちらを睨んでいる。
なんだ起きちゃったのか。
しかし俺はこんなこともあろうかと思い、朝食の準備ついでに、13の脱ぎ散らかしてあった服つまり、Tシャツ、オーバーオール、靴下、の3点セットを回収、洗濯機につっこんでおいた。
そう、起きたところで13に着る服はないというわけだ。
我ながら策士だろう。
「……なんで、私の服、ないの?」
「あー悪い今朝選択にだしちった。乾くの昼過ぎじゃないかなぁ」
「……なんで、私、しし下着なの?」
「あー昨日俺かなり怒ったろ?その勢いで13のこと押し倒してさ、そしたら、13が、『そこまでするなら、私の初めて、いいよ……?』って言うもんだから、そのまま俺たちsleep withすることになったじゃんか」
「嘘でしょ!?」
「じゃあその下着姿はなんだよ。全部終わった後やっぱり恥ずかしいからって言う13に、俺が着せてあげたじゃないか」
「う……言われてみればお願いしたような覚えが……」
13は顔を真っ赤にしておろおろしている。
なんというかわいさ。
「ま、まぁ、もう、そんな風になっちゃったなら、仕方ない、っていうか、その、由紀人、わ、私があなたの未来、埋めてあげも、いいんだけど……?」
……どうしたものか。
「13、過去は、いいのか?」
「もう、割と過去とか割とどうでもいいような気がするのは、割と問題あるかなぁ?」
「いや、ねぇな」
13がここまで真剣に考えてくれたんだ。
俺もきちんと応えなければならない。
13は頬を赤らめて俺の言葉を待っている。
俺は持ったままだった皿をテーブルに置き。
13と正面に向き合い。
深呼吸をしたのち。
膝をたたみ。
手と額を床につけた。
つまり。
土下座の格好だ。
俺は――
「ごめんなさい調子にのりました!!!」
13に殴られ蹴られて入院することになった。
どこぞやが複雑骨折したらしい。
嘘だろ。