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13の理論  作者: 安藤真司
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カフェテリア

ここは移民の国アメリカ。そして自由の国アメリカ。

宇宙産業の中心と呼ばれる都市に、日本人であるこの俺は来ている。

まぁ、俺のことはともかくとしよう。

移民の国アメリカとはいえ。

夕方にカフェテリアなる場所で。

二人の男女が日本語で会話していればそれなりに目立つわけで。

それもなまじかわいい女の子がオレンジジュースに感動していたりすれば。

それはもう目立つわけで。


「こ、こんなおいしいものがたった1ドルでたくさん飲めるなんて……」


……純粋に迷惑だった。

このきらきら輝いた瞳を見て何も買ってやらないような性格ではないが、もう既に10杯目だった。

10ドル。

円高が進んでいれば1000円いかないじゃないか、とか思ってはいけない。

レートがどうであれ、ドルで生活している人間にとって10ドルは10ドルなのだ。


「なぁ、そろそろ説明してほしいんだが」


女の子がこちらを向き、オレンジジュースとにらめっこをした後で喋りはじめた。


「私は13(サーティーン)、未来からきたの」

「未来、ねぇ」


確かに何もない空間から急に彼女が現れたのを直に見たし、宇宙の研究をしているとどうにも、

ワープだの、

パラレルワールドだの、

タイムトラベルだの、

やたらとそうした不思議が耳に入ってくるので何となくそんな言葉自体に抵抗はなかった。

だが、そう簡単にオレンジジュースに心を奪われている少女が未来人であるという事実を認めるわけにもいかない。

未来人より未開人っぽいんだもん、この子。


「それで、私と戦ってほしいの」


……だからそれ、俺と戦うのか、俺と一緒に戦うのか、どっちだよ。


「お前英語は出来るのか?」

「無視したっ!?なんで!?日本語間違えたかなあ、ううむ八方ふさがりとはこのことね。私日本語は少し苦手なんだ、って無視と関係ないじゃないこれ」


ふむ。

この子は日本語が得意らしい。

つーかばりばり日本人の日本語じゃねーか。

今の俺よりよっぽど日本日本してそうだ。

俺はアップルジュースを棚から2つ取り出し(ここでは勝手に棚から取って、最後まとめて清算するスタイルだ)、片方を13の前に置き、自分でも一口飲んでから答える。


「嫌だ」

「だから何でよっ!?間を空けて拒否とはなんぞや由紀人!?」


わーこの子古文もしっかり勉強してるようで。

いや年齢的に今まさに勉強中かもわからん。

……ん?

あれ、

俺、名前言ったっけ?


「何で俺の名前……」

「未来人だから」


彼女は、13は、間髪入れずにそう言い放った。


柴山由紀人(しばやまゆきと)。2001年5月6日生まれの19歳。父方は代々医者の家系で、あなたもまた医者になるべく小学生のころから英才教育を受けており、トップレベルの中高でトップの成績を修め、当然医者の道に進むと思われていたが、親を含めた周囲に黙って海外の大学を受け、結果勘当され、日本の友人とも連絡がつかず、しかし既に宇宙開発に携わり、お金や何かに不自由することなくこちらでの人間関係を築きつつある。何か間違っているかな?」

「いいや……わかった、お前が、未来人だって、信じよう」


なんだこいつ。

まじで未来人なのか。

いや、未来人だとしてもなぜ俺のことをそこまで知っている。

今のところそこまで事情を知っているのは俺の周囲だけなのに。


「そう、それはよかったわ。じゃなくってっ!!何で地味に流そうとしてるのよ!だから私とっ―!!」


13はふいにテーブルに置かれたアップルジュースに目をやり(というか今その存在に気付いたらしい)ビンの蓋をきゅっと開け、ストローを差してちぅっと飲み始めた。

いやいや。


「おい話の途中で飲んでくれるなよ」


半分くらい飲んでから、やたらと上目遣いで俺のことを見てくる。

くそぅかわいい。


「わ、私と一緒に(・・・・・)、未来と戦ってくれる?」


……。

はぁ。

まぁ。

事情は知らないが。

かわいさに免じて。

いいだろうか。

この話乗っても。

大分不気味な部分もあるが、そこも知っておきたいし。

……つーか。

さっきこいつ俺のこと、

『金に不自由なく』って言ってたよな。

目の前に並ぶジュースのビン。

おいしそうに飲む13。



確信犯(誤用である)じゃねーか。

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