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私立獣耳学園  作者: 御門屋運命
第04話「華咲け、獣耳学園」
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終礼『入学式』

 ~ 終礼『入学式』 ~


 四月七日、朝。

 私立獣耳学園の体育館には新入生達が集まっていた。

 先日行われた体験入学とは違い、無駄口一つせず新入生達はきれいに整列していた。

 それもそのはず、今日は先日の体験入学とは違いまず形式を第一として考えられている。

 何故ならば、今日は新入生達が待ちに待った入学式だからだ。

 今日この日をもってこの場に集まった新入生達は獣耳学園入学希望者ではなく、獣耳学園の生徒となる。

 自由が売りの獣耳学園だが、形式を軽んじている訳ではない。

 何事にもメリハリを、何事もやる時にはやるのが獣耳学園なのだ。

 獣耳学園においてはこの入学式はその事を新入生達に知らしめるための行事とも言える。

 とは言え、入学式は入学式。

 その式の進行は一般のそれと然程変わりはない。

 式は恙無く進行し、何事もなく終わるかと思われたが

 ザッ……

 式の終盤にて一人の男子生徒が檀上に上がる。

「新入生諸君、入学おめでとう。すでに顔を合わせている者も居ると思うが、改めて自己紹介をしておこう。俺はこの私立獣耳学園の生徒会長、人族ハヤト」

 本人が述べた通り、壇上に上がったのは私立獣耳学園の生徒会長、人族ハヤトである。

「長い付き合いになると思うので覚えておいてもらえると嬉しい」

 新入生のおよそ三分の一が体験入学の時の新入生達と同じ反応を見せた。

 その様子から先の体験入学が有効に働いたことが伺える。

「今日より諸君らは私立獣耳学園の一員となる訳だが、期待と同時に不安も大きいと思う」

 それは真実だ。

 彼等は新入生なのだ。

 余程特殊な性格の持ち主で無い限りは新しい環境に不安を抱くのは当然の事である。

「そこで、生徒会は一つ余興を考えておいた」

 余興?

 新入生達の顔にそう疑問の文字が浮かび上がる。

「そう、今からちょっと在校生達と喧嘩をしてはもらえないだろうか」

 ザワ……

 そう、音が聞こえそうなぐらい目に見えて新入生達の間でざわめきが起こる。

「題して、新入生歓迎バトルロイヤル」

 最初はざわめきこそしたものの、その後ハヤトがルール説明をする内に新入生達の表情が変わっていく。

 ルール自体はそう難しくはない。

 この体育館を出る際に新入生には水鉄砲と風船帽子が支給され、外ですでに同じような装備をして待ち構えている在校生達と風船を割りあってもらう。

 所謂風船割りゲームしてもらおうと言うのだ。

 それだけであれば新入生と在校生の交流イベントとして、なんら変哲のないゲームだったと言えよう。

 だが、ハヤトはそこにある条件を付けわえる。

「最後まで生き残った数名には、生徒会権限において一年間の特権を与えるものとする」

 生徒会権限。

 一般の教育施設では生徒会の権限などたかがしれたものだが、この私立獣耳学園においては生徒会の権限は教師を上回っている。

 その事はすでに新入生達にも広く伝わっている情報だった。

 それ自体がすでに特権と呼べるものであるにも関わらず、その生徒会が更に特権を与えると言っているのだ。

 否応にも、新入生達の関心は高まっていった。

「さて肝心の特権の内容に関してだが、それはこのゲームの勝者、上位三名にそれぞれ考えてもらう事にしている」

 その言葉に、一瞬新入生達はクエスチョンマークを浮かべた。

 考えてもらう事にしている。

 それはどう言う意味だろう、と。

「学内にクーラーを設置しろ。学食を食べ放題にしろ。テストの点を満点にしろ。部活で在校生は新入生にでかい顔をするな。その他どんな望みや願いでも構わない。一度定められた特権は生徒会の権限、並びに校長の権限よって実行する事を約束しよう」

 自分が定めたルールが学内に置いて法となる。

 そうハヤトは言っているのだ。

 まさに特権である。

「本来であれば複数の特権を用意し、勝者にその中から特権を選んでもらおうと考えていたが、それではこのゲームの意味がない。何故ならば……与えられた特権などに意味はないからだ!!」

 その言葉に新入生達は衝撃を受ける。

 この学園に入学してきた多くの新入生達はこう考えていた。

 特殊な学園である獣耳学園に入学すれば楽しい学園生活が送れる。

 それは、あくまで与えられる側の意見にしか過ぎない。

 入学する事だけを考えていた新入生達の頭の中には、自分でそれを築き上げると言う発想がなかった。

 今のハヤトの言葉は、そんな新入生達に別の価値観を深く突きつけたのだった。

 皆の眼にその新たな野望の光が宿ると同時に

「世界の摂理は弱肉強食だ。イベントだってその例外ではない。叶えたい望みや願いがあるならば勝ち取れ。獣耳学園はそれを許可する!!」

『おおおぉぉぉぉーーーーーっ!!』

 体育館内に咆哮が木霊した。

 場はすでに臨戦態勢。

 体育館を出る前になどと生易しい状況ではなくなった。

 新入生達は各々手渡された武器の使用方法をチェックしはじめる。

 そして、誰もがゲーム開始を待ち望みゲームが開始される直前。

 入学式最後の言葉として

「これが諸君らの獣耳学園最初のイベントとなる。悔いがないように楽しんでくれ。そして、残る三年間、獣耳学園は諸君らを退屈させない事を約束しよう。ようこそ、獣耳学園へ」

 ハヤトはそう述べた。

 新入生達もその言葉を胸に刻む。

「では、これより新入生歓迎バトルロイヤルを開始する」

 そんな新入生達の表情はすでに新入生の表情ではなくなっていた。

 それはあたかも、戦場に赴く戦士の表情だったとかなかったとか。

 何はともあれ、こうして新入生歓迎バトルロイヤルのゲームの火蓋は切って落とされたのであった。

 後に、この新入生歓迎バトルロイヤルが大宴会と並び獣耳学園の恒例イベントの一つとして加えられた事は言うまでもない。


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