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一章 18話 体育館

用語説明w

エイダン:エルフの男子、ギア出身

ワシリー:ドワーフの男子、ギア出身


北風が冷たい

海からの風が激しく渦巻いている


僕は、ヤマト、ワシリー、エイダンと共に風に向って歩く

今日は授業が早く終わり、四人で体育館に来たのだ


初等部の寮と校舎の東側には、学園の体育館がある

屋内でバスケットボールやフットボールが出来るため、冬のこの時期は学生が課外によく集まっている


しかし、この体育館は初等部と中等部の共用

中等部になると部活動が始まり、初等部とはスポーツへの真剣度が変わってくる


体の大きさも違い、ぶつかったりすると危険なため、時間によって生徒の使える時間が分かれている

初等部は中等部よりも授業が終わるのが早いため、早い時間帯は初等部が使えるのだ



「ヤマトは運動神経いいよな」


「もう少ししたらダンクできるんじゃないか?」


「もう少しなんだけどな。早く背がのびねぇかなー」


「ヤマト、まだ背を伸ばす気なの?」


ヤマトは、初等部の中では一番背が大きい

体格もがっちりしていて気も強いため、体育や訓練の授業では一番活躍している



「寒いから早く入ろうよ」

僕は寒さに我慢が出来なくなり、早足で体育館に向う


寒いのは嫌いだ、まだ暑い方がいい

せめて、風が当たらない場所まで行きたい


「ラーズは貧弱だよなー」

ヤマトが笑う


「うっさいよ。ヤマトがでかすぎるんだって」


僕たちは、しゃべりながら体育館のドアを開けて下駄箱へ

体育館シューズに履き替えて中に入る


「あれ?」


バスケットボールのコートでは、すでに体の大きい生徒達がバスケットボールを追いかけていた


「中等部の先輩たちかな?」


「この時間は初等部の時間だよね」


「うん、そうだよ。プリント見て来たから」


僕たちは顔を見合わせる

どうしよう、このままじゃコートが使えない


そして、あと一時間ちょっとで中等部の時間になってしまう

そんな僕たちに、一人の先輩が気が付いた


「あれ、初等部か。もしかして、バスケットボールをやりに来たのか?」


「あ、はい」


「おい、今は初等部の時間だろ? どうするよ」

中等部の先輩が仲間に声をかける


「うん? あー、来ちゃったのか…」


先輩たちは、頭を掻きながら振り返る



「なぁ、お前達は遊びに来ただけだろ?」


「え、はい…」


「悪いけど、今日は俺達に譲ってくれないか? クラス対抗のバスケットボール大会があってよ、練習したいんだ」


「え…、でも…」


「遊びなんて、他にもいっぱいあるだろ?」


先輩たちが言う


「どうする…?」

「でも、僕たちもやりたい…」


中等部の先輩たちに言われると、僕たちは気圧されてしまう


大会があるのは分かるけど、この時間は僕たち初等部の時間のはずだ

それなのに、なんで…



「さ、さっさと出て行けよ」

「おーい、練習に戻るぞ」


先輩たちは、僕たちが言い返せないのをいいことに、勝手に練習を再開する


「…」


納得できない

僕たちは、四人で顔を見合わせる


でも、先輩たちに意見する勇気がない

仕方がないので、僕たちはトボトボと体育館を後にする



その時だった


「…あなた達、中等部ではないのですか?」


よくとおる綺麗な声する


「…っ!?」


そこには、長い輝く金髪、龍の角、青い瞳の、凛とした表情の女子生徒が立っていた


「…セ、セフィリア先輩!?」

中等部の先輩たちが動揺する


「今は初等部の時間でしょう。それなのに、なぜ中等部の学生が使い続けているの?」


セフィ姉は、少しだけ怒っているようだ


「セフィリア先輩! 俺達、明後日にバスケットボールをしあいを控えているんです」

「よかったら、見に来て下さい!」


中等部の先輩たちが言う

やはり、中等部でもセフィ姉は有名人のようだ


「もう一度聞きます。あなた達中等部の生徒が、初等部の権利を奪う、その理由は何ですか?」


「え…」


「その行為が、騎士として正しいのかどうかを聞いているのです」


セフィ姉は毅然と言い放つ


「権利を奪うって、俺達はそこの初等部に頼んで譲ってもらっただけで…」

「無理やりなんてやってないですよ」



ギロッ…!


「…っ!!」



その瞬間、セフィ姉が威圧感を高める


「…体が大きく、騎士としての訓練を受けているあなた達中等部が頼んで、初等部が威圧感を受けないとでも? 恥を知りなさい」


「…」


「決められた時間…、ルールも守れないで、スポーツ大会に意味がありません。ルールにのっとって練習をしなさい」


「は、はい…」


セフィ姉の威圧感に、中等部の先輩たちは委縮

すごすごと帰る準備を始める



「さ、いいわよ。でも、中等部の大会があるのは本当だから、少し早めに交代してあげてね」


「う、うん…。ありがとう、セフィ姉。でも、どうしてここに?」


「今日は、中等部はお昼までで授業が終わったの。帰り道に、たまたまラーズ達を見つけて声をかけようと思って来たら、こんな感じだったから」


「そ、そうだったんだ」


セフィ姉、かっこよかった…

やっぱり、騎士とはこういう人のことを言うのだろう


僕もこんな人のようになりたい

セフィ姉と一緒に凶悪なモンスターと戦える、そんな英雄になりたいな



「セフィリアさん、やっぱり凄いな」

ヤマトが尊敬の眼差し


「そんなことないわ。言うべきことを言っただけなんだから」

セフィ姉が微笑む


「ラーズとヤマトって、セフィリアさんのこと知ってるのか!?」

エイダンが驚く


「ま、まぁね」


ちょっとだけ優越感

これが虎の威を借るキツネって奴だ



「…ちっ、調子に乗るなよ、ガキどもが」


帰っていく中等部の先輩たちの一人が、僕たちに舌打ちをする


「…この子たちは私達の友人です。侮辱するなら許さないわ」


「…ひっ!?」


そんな先輩にプレッシャーをかけるセフィ姉

僕たちは、セフィ姉のおかげでバスケットボールで遊ぶことが出来たのだった




・・・・・・




「よし、そろそろ時間だ」


「中等部の先輩たちが帰ってきそうだしな」


「帰ろうか、お腹空いた」



僕たちは下駄箱で外履きに履き替える


帰ればちょうど食堂が開く時間

もしかしたら、フィーナとミィもいるかもしれないな


僕たちが体育館から出ようとした時、ちょうど中等部の先輩たちが入って来た


「あ、お前達…」


「あ、終わりましたからどうぞ」


セフィ姉に言われた通り、僕たちは少し早めに切り上げたのだ



ドンッ…!


「痛っ…!?」



僕は突然、肩を押されて壁にぶつけられる


「お前、セフィリアさんと知り合いなのか? だからって、調子に乗ってるんじゃねーぞ」


「え…!?」


中等部の先輩に突然迫られる

体の大きな先輩は威圧感があり、僕は体が硬直し、怖くて動けなくなってしまった


中等部の先輩は、なおも僕を睨んでくる

この先輩は、さっき舌打ちした人だ


「おい、お前らは先に帰ってろ。ちょっと話すだけだからよ」


「え、でも、その…」

ワシリーが言い淀む


「いいから、帰っとけって言ってんだろ!」


「は、はい!!」


怒鳴られて、エイダンとワシリーが体育館から逃げて行く


あいつら…

でも、逆だったら僕も出て行っちゃうかもしれない



「…」


相変わらず僕を睨んでいる先輩

僕がセフィ姉と話していたから目を付けられたのか


怖い


これから何をされるんだろう



「先輩、そいつは何もしてません。帰してください」


だが、なんとヤマトは先輩に逆らって残った



お、お前凄いな!

しかも、僕を助けようとするなんて


ヤマト、お前………!!



ゴガッ!


「うぁっ…!?」



突然、先輩の一人がヤマトの頭に拳を落とす


「…お前、初等部のくせに生意気だな。いいから、さっさと帰れよ」


「…ラーズを帰して下さい」


「お前…!」


もう一度、先輩が拳を振り上げる



「………!」


ヤマトが殴られる



僕は、それを見ても怖くて固まってしまう


足が動かない…!




「おい、やめろ! 何で初等部の一年なんかいじめてんだよ」


「あ?」


「練習の時間が無くなるぞ」


だが、中等部の先輩たちが止めに入り、その拳が振り下ろされることは無かった




解放されてからの帰り道


「ヤマト、ありがとう…」


「いいさ、結局助けられなかったけどよ」


「僕、ヤマトが殴られそうな時に、身体が動かなくて…、ごめん…」


「いや、お前じゃ無理だろ。貧弱なんだから」


「…」


「…冗談だよ。先輩たちは俺よりも体が大きかったんだぞ? 仕方ねーって」


「…」


怖かった

怖くて動けなかった


ヤマトは、僕を助けるために残ってくれたのに


情けない

僕はダメなやつだ



「ラーズ…」


道の先に、二人の生徒が待っていた


「あれ、エイダンとワシリー?」


「ごめん、俺たち…」


「いや、いいよ。ヤマトが助けてくれたんだ」


「えぇっ!?」



僕たちは、すっかり暗くなった帰り道を四人で帰ったのだった





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