一章 17話 魔法の種類
用語説明w
サヘル:ダークエルフの女子、ウルの南国、バティアの王族
ラシド:ノーマンの男子、メガネで金髪、ウルのインデール出身、貴族の息子で入学前に魔法を身につけている
ビュオォォォ…
季節は冬
教室の外では北風が吹き荒れて、冷たい風が窓を揺らしている
騎士学園は島にあるため、風が一年中強い
特に、冬の風は強烈だ
「この教室は、あえて暖房を切っているんだ」
ラングドン先生が言う
「せ、先生! 寒いです…!」
サヘルが震えながら言う
サヘルは惑星ウルの南国出身の女の子
龍神皇国とも接しているバティアという国で、海に接しているてリゾート地も多い
肌が褐色のダークエルフという人種で、王族との血縁関係がある家柄らしい
ダークエルフとは、褐色の肌を持つエルフのこと
昔は差別の対象だったこともあるようだが、現代ではそこまで偏見はない
もちろん、差別意識を持つ人がいるにはいるが
「少しだけがまんしよう。これから、この寒さを使った授業をするからね。みんな、集まてくれ」
そう言うと、ラングドン先生は灯油ストーブに火をつける
「サヘル、暖かいかい?」
「は、はい! 最高です!」
サヘルは、誰よりも前に出てストーブで暖を取っている
南国出身だけあって、そんなに寒いのか
「では、なぜ暖かいのかな?」
「え? それは、ストーブをつけたから…」
「うん、ストーブのスイッチを入れて、火をつけたからだ。では、なぜ火がついているのかな?」
「えーと…、それは灯油が燃えているからです」
「そうだね、正解だ。暖かいのは、ストーブの中の灯油が燃えているからだね」
「…」
みんなが頷く
先生は、何を当たり前のことを言っているのだろう?
「難しい言い方をすると、灯油という物質から熱エネルギーを取り出しているわけだ。これは魔法も同じで、何かからエネルギーを取り出すことで魔法と言う現象を起こしている」
そう言うと、ラングドン先生は杖を持った
「少し離れて…、見ていなさい」
そう言うと、ラングドン先生が火属性魔法を発動
ボゥッ…
杖の先に炎が灯る
「この魔法の炎は、何が燃えているのか分かるかな?」
ラングドン先生が僕たちを見る
「…先生の魔力です」
ラシドが答える
「正解だ。人間は霊体を持ち、霊体の力である霊力、精神の力である精力を持つ。そして、無意識にそれらを混ぜ合わせて、合力である魔力という力を内包している」
ラングドン先生が話す
「ただし、この魔力は私の練り合せたものだけではない。霊体は大気中に存在する自然界の魔力を新陳代謝の一環として取り入れている。この炎に変換している魔力の内の何割かは、自然界から取り込んだものなんだ」
「自然界…」
自然界には魔力が存在する
その魔力が具現化した存在は精霊と呼ばれている
自然界には多種多様な環境が存在し、その環境に魔力は影響を受ける
海では水属性が、火山の近くでは火属性が強くなったりと、その場所に存在する精霊に違いが出来るのはそれが理由だ
これら精霊から力を得る、つまり、自然界の魔力を積極的に利用する魔法を精霊魔法と呼ぶ
これは、人間の体内由来の魔力を使う魔法とは技術体系が違う魔法だ
対して、ラングドン先生が使っている人間由来の魔力の魔法は、マナ魔法と呼ばれるカテゴリーだ
マナとは神秘的な力の源とされる宗教的概念であり、正確には魔力だけを示す言葉ではないが、精霊魔法とは違う由来の魔力を使っているため、この名で呼ばれている
通常、魔法とはこのマナ魔法のことを指すため、単に魔法と表現する場合はマナ魔法を指すことが多い
更に、高次元生命体である神や魔神、異世界の住人、果てはドラゴンや巨人、幻獣、妖怪、アンデッド等から力を得る魔法が存在し、これらは召喚魔法と呼ばれる
自然界からでも、自身の魔力でもない、強大な第三者から得られる魔法であり、サモナーやシャーマンなどが使う特殊な魔法がこれに当たる
究極の回復魔法である神聖魔法も神の力の一部の召喚であるため、この召喚魔法の一種となる
「この魔法の三つのカテゴリーはテストに出るからね。しっかり理解して覚えるように」
「えー!」
「これからダンジョンに潜った時に、モンスターの使う魔法の種類を見極めることは重要だ。対処方法が変わって来るからね」
「は、はい!」
次に、ラングドン先生がいくつかの石を取り出す
「さて、最後だから集中しよう。魔力は、魔法という形以外では物質には干渉しないと言ったね。でも、例外があるんだ」
「先生、その石は何ですか?」
ミィが手を挙げる
「これは魔石と呼ばれる石だ。魔力が結晶化したもので、この結晶化とは、魔力と言うエネルギーが物質化したもの。この物質化という現象は、科学には無い魔導法学の特徴だ」
魔力というエネルギーが物質化する
エネルギーと質量の相互変換が簡単に行われる現象は、魔導法学の大きな特徴だ
魔石、魔晶石は、魔力が物質化した物
魔石はモンスターの体内で生成されたり、ダンジョン内で発見されることもある
この魔石に術式を封印することで、魔石自体の魔力をエネルギー源として単発魔法を発動することが出来る
つまり、魔石は巻物と同様に、魔法を使えなかったり魔力がない者でも魔法と言う現象を発生させることができるアイテムなのだ
魔力を使えない者は、巻物を使用する場合は魔法発動装置が必要となる
しかし、魔石は携帯用の小型の杖に魔石を装填し、振ることで使えるため便利だ
巻物や魔石は、各国の軍隊や警察、消防、そしてモンスターハンターやバウンティハンターも使用している魔法武器だ
「魔法とは、多くの種類があり、分類があり、そして、発動するための魔力にも種類がある。しっかり整理しなさい」
「先生、一番すごい魔法って何なんですか?」
ヤマトが頭の悪い質問をする
だが、先生は微笑む
「それは、攻撃魔法の威力という意味かな? それとも、次元や空間を越えるという超常現象を起こす魔法、魂を集めたり、宇宙空間での生存を可能にする魔法かい?」
「え…」
次々に並べられる、想像もつかない魔法の数々に僕たちは呆気にとられる
「この世界はとても広い。そして、深い」
ラングドン先生が続ける
「私達がいる、このペアは重なっている。次元を越えたイグドラシルと呼ばれる異世界は、ここよりも、もっと魔導法学が発達している。有名なヴァルキュリアの話は聞いたことが有るだろう?」
ヴァルキュリア
異世界の騎士であり、戦場で死んだ英雄たちの魂を迎えに来るという女神
神話であり、実在する現象とも呼ばれている
異世界では、魂を集めるという行為を実現しているのだ
「実際に、空間属性魔法を使って異世界イグドラシルに行くことに成功し、ペアとの交易を行っている。つまり、次元を超えるという魔法はすでに実現しているんだ」
「…っ!?」
「それに、極大魔法と言って、普通の人類の魔法をはるかに超えた攻撃魔法が存在する。更に、神聖魔法、古代ルーン魔法、竜言語魔法、禁呪魔法、創生精霊魔法…、規格外の魔法は多々ある。世界には、君たちの想像をはるかに超える魔法が存在している」
そう言うと、ラングドン先生はもう一度杖を持ち上げる
「見なさい…」
ラングドン先生の目の前の空間に、突然、朧げな風景が映し出される
「こ、これは…?」
エイダンが言う
「これは幽界と呼ばれる世界。このペアの次元から半歩ずれた世界だ」
「幽界?」
朧げな存在が歩いている
魑魅魍魎と呼ばれる存在なのだろうか?
「この幽界は、よく私達の世界と繋がる。モンスターやアンデッドがこの世界に現れる原因の一つだ。そして、私達はこの物理現象から多大な恩恵を受けている」
そう言うと、ラングドン先生は幽界の映像を消す
「魔導法学が探求する深淵なる闇。それは、はるか遠く、神や魔神、偉大な存在へと至る道。未知とは、君達の好奇心という燃料の着火剤だ。多くの興味を探求し、立派な騎士を目指しなさい」
そう言って、ラングドン先生はにっこり笑った
世界の広さ、その知識
僕たちは、まだまだ知らないことだらけだ
魔法発動装置 一章 8話 発動体験




