EP.40
ツナグは、勢いよく玄関の扉を開けた。
「ただいま!」
ツナグの声に、林太郎が返事をした。
「おかえり。散歩は楽しかったかい?」
「うん! とっても有意義だったよ! ルイにも会ったんだ! ルイにもらったチョコクッキーが美味しくてね……」
矢継ぎ早に話し始めるツナグ。
林太郎は、そっと人差し指をツナグの口元に当てて、話を止めた。
「ストップ。続きは、コーヒーでもいただきながらにしよう。準備をするから、手洗いうがいをしておいで」
ツナグはこくこくと頷くと、大慌てで洗面所に向かった。
入れ替わるように、剛が林太郎に近付いた。
「君もコーヒー飲むかい?」
「あぁ、いただこう」
剛は、ほんの少し不器用そうに微笑んだ。
その笑顔を見て、林太郎は優しく微笑んだ。
「じゃあ、君はリビングで待ってて。準備ができたら、持って行くよ」
「わかった」
大慌てで手洗いうがいを済ませたツナグは、リビングに駆け込んだ。
「コーヒーできた!?」
ツナグの慌てた様子に振り返りながら、剛が返事をする。
「いや、まだだ。そんなに慌てなくていい」
剛の言葉に、ツナグは空気の形が見えるのではないかと思うほどの、大きな安堵のため息をついた。
「よかったぁ!」
その言葉と入れ替わるかのように、林太郎がカップに入ったコーヒーをお盆に乗せてテーブルに来た。
「んー! 良い匂い!」
ツナグは鼻をひくつかせると、そそくさと椅子に座った。
そんなツナグに続くように、剛も椅子に腰掛ける。
カチャリという音と共に、林太郎がそれぞれの前にコーヒーカップを置いた。
「「ありがとう」」
息の合った感謝の言葉に、林太郎は満面の笑みを浮かべて、自身も椅子に座った。
そして、先ほどツナグが話しかけた言葉の続きを促した。
「ツナグ。さっきの続きを聞かせてくれるかい?」
すると、ツナグは嬉しそうに大きく頷き、話の続きを語り始めた。
「そう! 川の石に座ってたらね、ルイが来たんだ。そしてね……」
ツナグの嬉しそうな、そして楽しそうな様子に、不意に剛が微笑んだ。
「あ!!!!」
ツナグは、思わず声を上げた。林太郎は、少し目を見開いた。
「剛さんの今の笑顔! とっても素敵だねぇ!」
ツナグの言葉に、剛は咄嗟に右腕を上げて、顔を隠そうとした。
林太郎は微笑みながら、剛を見た。
ツナグも、目を細めてニコニコしている。
「何も言うな……」
剛は小さくそれだけ言うと、赤くなった顔を左に背けた。
「剛さんごめんね。剛さんが笑ってくれたことが、あんまりにも嬉しくて……」
ツナグは、髭を少し下げると、剛に謝った。
剛は顔を赤らめたまま、小さく言葉を発する。
「いや、いい」
しばしの沈黙が生まれる。
そんな沈黙を、林太郎がさっと破った。
「さぁ、2人とも。コーヒーのおかわりはどうだい?」
林太郎の言葉に、2人は頷いた。
「いるー!」
「あぁ、いただこう」
林太郎が、ツナグのコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。
とぽとぽという音が、部屋に響く。
「さぁ、今度は何の話をしよう? 剛さんは、今は何の本を読んでいるの?」
ツナグの言葉に、剛が答える。
「今は……」
静かな時間が、ほんの少しの音を連れて通り過ぎていく。
ご無沙汰しております。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、ツナグたちの世界のお話でした。
剛が少しずつ笑顔を見せるようになってきました。
作者としても、剛が笑顔になるのは嬉しいです。
静かな時間がほんの少しの音をつれて流れていく様子は、幻想的で、それでいてあたたかさを感じます。
そんな様子が読んでくださった読者の皆様にも伝わると良いなと思っています。
引き続きお楽しみいただけると幸いです。




