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天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第二章 それは『愛』だっ!――vs毛利家編

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3-24. 義長ちゃん、立つ

「元春《もとはる》殿へ息つく暇を与えずに、間断なく攻め立てるです!」

「正面からは避けて晴賢《はるっち》の後ろを取るように動くしー!」

「その『晴賢《はるっち》』って呼び方辞めるですぅぅぅ!」


 瀬戸内海。


 大内《おおうち》義長《よしなが》を大将とする大内軍と、吉川《きっかわ》元春《もとはる》を大将とする毛利軍が激しくぶつかっていた。


 ただし、元春《もとはる》は緩い。


 恐らくは時間稼ぎでもあるのだろう。

 備後《びんご》の小早川《こばやかわ》隆景《たかかげ》か。

 はたまた、豊前《ぶぜん》の毛利《もうり》元就《もとなり》か。


 どちらかの仕合《しあい》に大内を参戦させまいとする動きだった。


 毛利の切り込み隊長が勝負に来ない。

 これは義長《よしなが》や晴賢《はるかた》にとっては誤算である。


 兵数は毛利軍の方が上。

 長期戦になっても、ましてや正面から激突しても、大内軍の方が不利である。


 戦の仕様は『団体戦:魚鱗《ぎょりん》』。

 巻いた鉢巻の先に光る"鉄の家紋"を落とす戦だ。


 しかし、ここは海上。

 船に乗っての戦闘だ。


 足場の安定しない戦場は、経験こそが物を言う。


 つまり、海《・》賊《・》の独壇場だった。


「後ろを取られたらマズイです。船首を常に相手の船へ向けるようにするです!」

「晴賢《はるかた》、無理たい!? 相手の動く方が早か!」


 義長《よしなが》と晴賢《はるかた》は必死に不利を取られまいと指示を繰り出す。

 それでも、相手の方が数枚上手なのが現状だ。


 瀬戸内海の王――村上家。


 海賊と言われてはいるが、その実、彼女たちは海のプロフェッショナルである。

 その手練手管は、何も操舵に限らない。


「何であんな早く動けるとー!」


 義長《よしなが》が必死になって愚痴を言う。

 彼女らしいと言えばらしい。


「あれは車輪船です、義長《よしなが》様! 船に外車を付けて波や風とは別に人力で回しているから早いんです!」


 そんな主人に対して、律儀に答えを返す兵卒たちだ。


「あの櫓がたくさん付いとるのは!?」

「あれが村上の関船《せきぶね》です、義長様! 索敵も攻撃も、上を取れば大体死角がなくなります!」

「む、向こうから波に乗って流れてきて、凄い音が鳴るあれは何と!?」

「あれは火龍です、義長様! 火薬を入れた樽を海に流して時が経ったら爆発します!」


「え、何で皆そんなに詳しいと!?」


 兵卒たちはちょっとドヤ顔である。


 斥候や乱破《らっぱ》を使った純粋な敵情把握は勿論ある。

 けれども、モチベーションとしては義長の不安を和らげたい。

 未知を減らせば落ち着いて対処もできる。


 そういった、家臣たちの団結と優しさによるものだ。


 義長は少し冷静になる。

 何も魔法のようなものではない。

 ただの奇策だ。


 深呼吸。


 一、二。


「よしっ。やるけん。ウチはやれるけん!」


 その様子を横目で見ていた晴賢《はるかた》は、クスリと一つ、微笑みをこぼした。


「そしてあれがかの有名な!」

「まだあるとね!?」


 ズッコケそうになる義長ちゃん。

 気持ちを切り替え、兵卒が指差す方向へ目を向ける。


 晴れ渡る青空。

 雲一つない快晴。

 風も穏やかで、船を操る上では非常に都合が良さそうだ。


 そんな青の中、黒い点が見えた。



「『炮烙火矢《ほうろくひや》』です!!」



「あれが兄者の"花火"に似ている言うとった戯《たわ》けかぁぁぁあああ!!」



「あ、そこだけは知ってたんですね。後、どっちかと言えば宗麟様の方が後……」

「なんじゃぁ、あぁぁん!?」

「いえ、何でも!?」


「って、言い合ってる場合じゃないですぅ!?」


 イキり立つ義長を置いて晴賢《はるかた》は、


「急速旋回ぃぃぃいいい!! 総員、衝撃に備えるですぅぅぅううう!!」



 そして、爆音が辺りに響く!



 水柱が上がる。

 飛沫が舞う。

 船が揺れる。


 穏やかな、とは何だったのか。

 一瞬で周囲は嵐となる。


 潮が新たに生まれたかのように船が流され、生じた高波が船を飲み込む。


 打ち付け、揉まれ、流され、浴びて!


 激しく揺すられ、平衡感覚すら狂わす音が耳朶を強打した。


「な、ななな、なんとね、アレはーーー!?」


 これには堪らず義長《よしなが》も絶叫。

 周囲も阿鼻叫喚の恐慌状態だ。


「ぐうっ、聞いてはいたですが凄い威力です!」


 肝の座っている方であろう晴賢《はるかた》を推して、その凄まじさには恐怖を呼び起こされる。


「兄者んのと全然似とらんけえ!?」

「そこはもういいですっ!?」


 そこへ、


「突撃だしーーー!!」


 吉川《きっかわ》元春《もとはる》が流れ込む。


 船首に付いた衝角が、船の腹を抉るように波を割って雪崩れ込む!


 割り、砕き、撒き散らし。

 木端《こっぱ》に引き裂き、突き進む。


 船に乗る兵たちは枯葉のように舞い踊る。

 鉄の家紋など、海に落ちた時点で藻屑となるしかない。


 大内兵たちの陸《おか》となるべき船は、相手にとって不滅のものではないのだ。


 簡単に引きずり込まれる海の闇。


 その恐ろしさを知っているからこそ。

 その凄まじさを知っているからこそ。


 だからこそ、誘い方すら熟知している。


「落ちた奴らは無視!」


 元春《もとはる》は笑う。


 自らの振るう力の柄に手を添え、笑う。


「もう馬鹿にはしないからさ。それって全力で潰すって事っしょ?」


 晴賢《はるかた》に話しかけたのか。

 それとも独り言なのか。


「行くぜ、毛利! これぞ両川《りょうせん》! あーしはやっぱ、攻めるが勝ちだと思うんだよねー!」


 雄叫ぶ。


 女性の高い声で、奏でる。


 波を震わす。


 海を、空を、敵を震わす!


「いざ尋常に、だし!」


 元春《もとはる》は飛び出し、船を渡る。


 目指すは晴賢《はるかた》。

 そして義長《よしなが》。


 その御首《みしるし》に狙いを定め!


「あーしと、もっと! 勝負しよっかぁ!!」


 大内の兵を薙ぎ払う!


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  そういえば、人物の特徴や髪型などの紹介している、内容がないと思われる。
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