3-10. 厳島は眠らない③
晴賢がキレた。
いっそ気持ちの良い程にキレた。
色々と天元突破した。
「ほいっと」
「です!?」
「おー、やるじゃん。晴賢ちゃーん」
「ムキィィィ!!」
そこへ瞬きの内に切り込んだのが元春だった。
言葉は軽い。
しかし、その中身は重かった。
御家の"武"を象徴する二人の激突。
晴賢の中でスイッチが切り替わった。
「もうあーしたちの勝ちだよ」
「いえ、まだです!」
元春は言う。
しかし、晴賢は諦めない。
「何故そんな事が言えるのか、僕には理解できないね」
「私がまだ倒れてないです!」
隆景が言う。
けれども、晴賢は諦めない。
「大将である義長殿はそこで転がってるんだがねえ。どうするつもりだい?」
「ここに毛利の将がいるなら、私が全員倒しますです!」
元就は鼻で笑う。
それでも、晴賢は諦めない。
「私が貴女たちを引き付けている間に、他の人が旗を奪うです!」
「この雨と風の中で?」
「あーしはヤだな。メンドイ」
隆景と元春は嘲笑う。
それが何だと言うのだろうか。
やはり晴賢は、その程度の事で諦めない!
「我が名は『陶晴賢』!!」
渦巻く雑音の中。
声が朗々と轟き響く。
「この身、この命尽きるまで、私の魂はこの一刀にあるです!!」
毛利家の三人の目が変わる。
武士が魂を賭けたのだ。
「私を、大内を……甘く見るなですよ、毛利家ぇ!!!」
天上の雲を裂く、烈昴の覇気。
大内が武『陶晴賢』。
大上段に構えた木刀。
見据え貫くは眼前の敵。
引かぬ。
決して、引かぬ。
敵に背を向ける武士がいるか。
否!
主を見捨てる武士がいるか。
否!
勝負を諦める武士がいるか。
否ぁ!!
晴賢は、決して諦めない!
「ハハッ」
元春は笑う。
しかし、これは嘲笑ではない。
「晴賢殿。ごめんね。あーしが悪かった」
元就と隆景は何も言わず、一歩、後ろへと下がった。
「毛利が刃『吉川元春』。いざ、尋常にお相手つかまつるよ!」
「大内が刀『陶晴賢』。折れるものなら折ってみやがれ、です!!」
これは意地のぶつかり合い。
人によっては飯にもならんと、ただ馬鹿にして笑うだろう。
それでも譲れぬモノはある。
ただただ譲れる一閃が、一戦が、一線が。
彼女たちの中には、息を衝いているのだ。
厳島、最後の『戦』が始まる。




