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スィームルグと答え合わせ

『それで、あなたは今どのような状況なのですか?私の知っているあなたの能力だと、おそらくはガーデンスライムの亜空間にいるのだと思いますが、なぜガーデンスライムの中にいるのか、私にはわかりません』


空間を自在に操れるスィームルグなら、亜空間を形成することは難しくないでしょう。しかし、出来ることと実際にやることは別でしょう。スィームルグは、何を考えてそんなことをしたのでしょう?それがわからなかった『私』は、率直にスィームルグに尋ねた。


「ピィ『現状の理由ですか?それは、成り行きとしか言えませんね』」


『成り行き?どういうことですか?』


「ピィ『言葉どおりです。私の現状は、ほとんど私が何かを意図して行った結果ではありません。あえていえば、偶然の積み重ねと、その偶然にたいして対応した結果です』」


『あなたの現状が偶然の結果?それはどういう意味ですか?』


「ピィ『それはですね、』」


そうしてスィームルグは現状を話だした。


『私』が聞いたスィームルグの話を要約すると、次のようになる。


まず、スィームルグはあちらの時間で三日ほど前の夕方頃に、この世界のファブルの森に降り立ったそうです。ちなみに、この世界の一日は24時間となっている。そして、その時点で記憶も知識も無くなっていたスィームルグは、鳥の本能に従って行動したそうです。ファブルの森で手頃な木を探し、その木の上に巣を作って一日目は終了したそうです。次の日の朝目覚めると、巣を作った木に様々な果実が実っていて、その中のいくつかを朝食として食べたそうです。そして、その中に金色の林檎。知恵の実が混じっていたそうで、そこで初めて知識を得て現状を理解したそうです。その後、大量に得た知識を整理するのに半日費やし、知識の整理がついた後に一度この世界を確認する為に出かけ、一回りして巣に帰還。が、巣に戻ってみると、巣の周囲に多数の捕食型植物達が蔓延っていたそうです。それを見たスィームルグは、果実から得た知識より、その植物達がファブル森にはもとは存在していなかったことを知った。そして、その植物達の発生原因が自分にあり、かつ、その植物達を放置しておくとマズイことも。その事実を理解したスィームルグは、ファブルの森全体に結界を展開。捕食型植物達がファブルの森の外に出られないにした。ほかにも、捕食型植物達が森の中にいる非戦闘員に攻撃を仕掛けると、自動的に攻撃を防ぐようにもしたそうです。その結界の構築で二日目は終了。そして、今日の朝に現在の状況になったそうです。どういうことかというと、今日の朝起きると、巣の周囲にスライムが大量に集まっていて、捕食型植物達の足元に転がっていた果実を食べていたそうです。そして、食べたスライム達の何割かが今目の前にいるのと同じガーデンスライムに変異というか、進化したそうです。その進化した内の一体、現在目の前にいる一匹のガーデンスライムがスィームルグに近づいて来て、スィームルグを食べてしまったそうです。そう、このガーデンスライムは何を思ったのか、スィームルグを食べたのです。もっとも、スィームルグがガーデンスライムより弱かった結果食べられた訳ではありません。スィームルグは、捕食型植物達の件があったので、今ある巣から別の場所に住家を移したいと考えていたそうです。そんな時にガーデンスライムの襲撃をうけたスィームルグは、あるアイデアを思いつき、それを実行に移したそうです。そのアイデアというのは、モンスター(ガーデンスライム)の体内に亜空間を作りだし、そこに巣を作るというものでした。なぜそんなことを考えついたのかは後で聞くとしましょう。とりあえず、スィームルグはガーデンスライムの中に亜空間を形成。巣をそちらに移しました。そして、それからはガーデンスライムと行動をともにしているそうです。その為、ガーデンスライムとスィームルグは現在ここでこうして一緒にいるということらしいです。


『なかなか大変だったのですね』


『私』は、スィームルグに同情した。それと同時に、いくつか疑問に思っていたことの答えが聞けて嬉しかった。ファブルの森の結界のこと。ガーデンスライムの異様に多い能力のこと。そして、スィームルグの現状等など、一気に謎が解けた。


「ピィ『ええ。過去が失われていたことから始まり、いろいろと大変でした』」


『けれど、なぜガーデンスライムの中に亜空間を形成なんてしたんですか?今の話を聞いて、その点がひどく疑問に思ったのですが?』


「ピィ『ああ、はなから見るとそう思うのは当然でしょう。私としましても、本当はガーデンスライム以外のモンスターの体内でよかったんですから。あえていえば、私が引っ越しを考えていた時に、この子の行動から思いついた。といった理由くらいですね。まあ、ようはタイミング的なことですよ。もしもガーデンスライムが私を食べなければ、別の時にモンスターの体内に亜空間を形成することを思いついたかもわかりませんしね』」


『そうですか。しかし、ガーデンスライムの中に亜空間を形成した理由はそれでいいとしまして、結局なぜモンスターの体内に亜空間を形成したのです?そちらの理由はなぜなのですか?モンスターの体内に亜空間を形成する必要なんて、普通はありえませんよね?』


「ピィ『そのことですか。大部分はただの思い着きです』」


『思い着き?』


「ピィ『ええ。ファブルの森で捕食型植物達を大量発生させてしまったことは、私にとって不本意でした。しかし、私があそこに住むかぎり、捕食型植物達は増えていくでしょう。いくら森を結界で閉ざしても、それではいつか私の結界が解けた時にどうなるかわかったものではありえせん』」


『たしかにそうですね』


『私』は、結界が解けて捕食型植物達が周囲に散って行く様子が容易に想像出来た。そして、その場合捕食型植物達が最初に接触する相手が、交易都市の住人になるだろうということも想像出来た。


「ピィ『なので、私としてはその心配を無くしたかったのです。だから、そのことを考えて悩んでいる時にガーデンスライムに襲われた私は、そのままこの子の中に定住することにしました。この子の中なら、捕食型植物達が私の許可無しに外に出ることは不可能ですし、たとえ私に何かあって亜空間が消失しても、捕食型植物達はこの子の胃の中に出現して、そのまま消化されますから、外に出る危険は無くなります』」


『たしかにそれなら安心ですね』


もっとも、ガーデンスライムが捕食型植物達を消化仕切れるのかは不明ですけどね。今度ガーデンスライムに頼んで、消化可能な量などを調べてみましょう。


「ピィ『私からの話はこれくらいでしょうか。何か質問はありますか?』」


『ええ、一つあります』


「ピィ?『それはなんですか?』」


『なぜあなたはこのタイミングで出て来たのですか?』


『私』は、ガーデンスライム達のことには納得がいったが、なぜマスターが起きている時にこの話をしなかったのかが気になり、質問した。


「ピィ『その理由は、私の存在をアスティアに知らせるつもりがなかったのが一つ。そして、あなたの正体を知る為です』」


『私の正体ですか?』


「ピィ『そうです。私は知恵の実を食べたことによって、あらゆる知識を得ました。しかし、にもかかわらずあなたの正体が私にはまったくわからないのです』」


『私の正体。私は、応答するものアンサラー。主の質疑に応える存在。それが私です。それ以上でも、それ以下でもありません』


「ピィ『そう言われましても、私の知識の中に該当する情報が無いので、なんともいえないのですが』」


『まあ、それはしかたありませんよ。私達の存在は、その手の知識には入ることはありませんからね』


「ピィ?『それはどういうことです?』」


『あいにくとそれは言えない決まりなんです。すみません』


このことについては、マスターが質問したとしても条件を満たさないと教えられませんからね。


「ピィ?『決まりとはどういうことですか?』」


『決まりというのは、私達がブックメーカーに作成された時に定められた約束事のことです。これに関することは、ブックメーカーの許可を得るか、マスターが設定されている条件を満たさないかぎり、私からは言えません』


「ピィ『そうですか。それなら、無理には聞きません』」


『ありがとうございます。これで、今までの話は終わりということでかまいませんか?』


「ピィ『ええ。私の方も、他にはとくになにもありません』」


『それでは、次は今後のことについて相談があります』


「ピィ?『なんですか?』」


『あのですね、・・・』


それから『私』達は、今後のことを話し合った。



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