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元伝説の聖女のたった1年の学生生活  作者: びわ
2章−剣術大会−
33/33

(4)飼育委員

 妙な組み合わせでケノンはクラノストを煽り立て、クラノストは上手く乗って食い気味、キャロリは額に手を置いている。

「謝罪としてのものなので……」

「だが兄はそう言っていたぞ?」

 (なんでいつも嫌ってるのにお兄さんの言う事聞くの〜)

 奥歯を噛み締めて心のなかで叫んでいると、キャロリの耳が小さく動く。

「兄?」

 キャロリは体の方向を中心に寄せ、変なことに食いついた。

「セピノール副会長がそんな事を?」

「ああ、変な兄貴ズラしてきた時にな。」

 どういう時だ。クラノストは自分で言ったのに遅れて嫌な顔をした。目つきが悪いから中々怖い。

「なんか話題ズレてない〜?サンティさんのデートの話だったでしょ〜?」

 (戻すな)

「あっもう委員会があります。お先に」

「あ〜逃げた〜」


 ◆◇◆


 走って向かった先は飼育部屋。学園内で飼っているのは16種類。それぞれ学年ごとで担当が分かれている。

 3年生は大猫、狼、うさぎ、鷲、コアラ、

 2年生は羊、ヤギ、アライグマ、フクロウ、イタチ、

 1年生は亀、子牛、ニワトリ、アヒル、鯉、蛇

 正確には学年が16種類の中から選ぶのだけれど

、3年生が人気なものを全て取っていくので毎年恒例で決まっているそうだ。

 まあそれで、あまりの6種類を世話する、確か5クラスがローテーションで世話をすると聞いている。とは言ってもケノン曰く、担当の動物がいるそう。亀の担当になった人は毎日来て、でもけしてほかの世話はしない。

 その担当が決まるのは初日、つまり今日だ。

「失礼します……」

 飼育室には既に4人がついていて、軽く会釈された。ここに集合するのは1年生だけだ。集合時間は10分後で生徒の中では私が最後。

 先生が来れば世話の担当を決める。

 (いつ来るのかしら?)

 15分後

 (?遅れてる?)

 更に10分後

「……」

 担当の先生が誰かは知らないけれど、15分は遅刻だ。教師としてどうなのだろうかと、他の4人も態度がどんどん悪くなる。

 険悪ムードとまでは言わないけれど、今にも舌打ちしそうなほどだった。その時、

 ガチャ

 人が入ってきた。

「へ〜い。」

「「「「「……」」」」」

 静まり返った部屋にふざけた態度で入ってきたのはへスライド先生。皆睨み気味で見ても気にせずに真っすぐ中心までやってきた。

「ごねんね〜ちょっと遅れたかな?」

「……」

「まあ面倒だしちゃっちゃと終わらせようか。何だっけ?世話の週?担当の動物だっけ?」

「……ハァ、担当で良いですよ。曜日も決めなくちゃですが。」

 ほかの生徒が眉間にしわを寄せながら答えると、へスライド先生は口元に弘を描く。

「そっか〜。でもその前にプリント配るね〜」

 内容は6種類の育て方、それと数。亀は3匹、子牛は1頭、ニワトリは2羽、アヒルは2羽、鯉は3匹、蛇は1匹。もし逃げ出したら買い足すことはないので教員に助けを求めて良いので探しだす。

 とのこと。

「じゃあ先に担当の動物はどれが良い?まず亀、挙手〜」

 1名手を挙げ、決定。

「次、子牛」

 2名手を挙げ一旦保留。

「ニワトリ〜」

 誰もあげずに次

「アヒルは?」

 1名手を挙げ、こちらも決定。

「後はミレズム嬢だけ、鯉〜」

 誰もあげずに私は蛇に決定。

 残りはニワトリと鯉。口論の末、男子生徒が子牛となり、もう1人はニワトリを選んだ。余りは鯉だけ。皆が周りの様子をうかがいながら、誰一人声を上げない。

「誰かいない〜?もうランダムで決める?」

「……」

「あっやるのかい?ミレズム嬢?」

「はい、鯉は嫌いじゃありませんし。」

 鯉は1番育てるのが簡単だ。学園内にある池に3匹いて、そこに餌をあげるくらいしかやることがない。でもこんなにやりたがらないのは、その池が面倒だからだ。

「じゃあ決定だね!一応形だけでも担当の曜日決めて解散しよ〜」

 面倒が終わるというならへスライド先生の仕事は早い。ぱっぱとそれぞれの曜日を割り振り解散させた。ちなみには私は週初めから2日目だ。


 ◇◆◇


 鯉は池、蛇は飼育小屋の奥にある部屋の中のゲージに入っているらしい。

 蛇は、成体で育てるのは簡単だ。1週間か2週間に一度餌をあげる。後は温度の調節くらいしかやることはないから。

 ギィー

 古びた扉を開けると耳障りな音がする。扉の先には分かりやすく蛇のは入っているゲージが目に入り、蛇と私は目が合った。

 紫の鱗をしたサファイヤの瞳をもった蛇。私は思わず口を緩めた。

「……綺麗……」

 蛇は静かに目を閉じた。見覚えのないような、あるようなその姿に、私は見ていた時間が一瞬のように去ってゆく。


 鯉のいる池、それは『真実の泉』だった。前世あったところと照らし合わせても間違いない。

 学園内にあるのは知っていたけれどまさか鯉を買っている池扱いになってるとは思っていなかった。

 でも此処が真実の泉なのは間違いないのだ。だって前世から、映るものが変わらない。

 真実の泉には、嘘がつけない。真実をそのまま映す。たとえば変装でもしていたとすれば、本来の姿が。暗殺をしようとしているのなら、泉には暗殺する光景が映る。

 私は何が映るのか。前世が映るのか、いや違う。

「……なんでだろうな〜」

 ほかの人と来たときは、ちゃんと人が写る。今まで私と同じ状態あったものは、もう1人はだけ。

 真実の泉に映る私は『百合』になる。

 花の、百合。

 こうなるのは前世から一緒だから、真実の泉はやっぱりここなんだ。


 ◆◇◆


 寮の部屋、入ってもまだ誰も居ない。一人きり。私はベットに倒れ込む。

「……」

 背伸びをして、天井とにらめっこ。私は手を動かす。何の動きかは分からない。

 何かを編むような、同じ動きを繰り返す。前世から、お母様曰く赤ちゃんの時からしていたそうだ。不思議とこの動きをすると、心地よくて、花の匂いがする。

「……本でも読も」

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