(24)クリオブ体験その7−魔生物−
(……これは………)
ケノンの説得もあり、魔生物でクリオブ体験ができるようになった。ゼーテオはチラチラケノンを見ながら案内してくれた。
「……ここだ」
「「「……」」」
どのクリオブよりもなんというか…ボロい。学園でここまで差が生まれると思うとなんだか……魔法具の所の使わなくなったと言っていた部屋よりも汚かった。
「……入っていいですよね?」
ガタガタ
部屋の中から何やら音がする。物音にして大きい音、私たちはビクリと震えた。
「僕は嫌だけど入れないわけにはいかないだろう。」
ぜーテオ君は皮肉でもいうように鼻で笑った。
「そっそうだよね?」
ケノンは見ているのが面倒になったようにバンと扉を空けた。
「ちょっちょっと」
抑えようとするキャロリの抵抗も虚しくなかにいるメガネの人と目が合ってしまった。オレンジ色の髪とメガネの先輩。
(私たちは何もしていませんよ〜)
「きっ君たち?いきなり…」
「体験できたサンティの付き添いです!」
そう言いながらケノンは私を前に前にと押した。ニッコニコの笑顔が怖い。
「ホッ本当かい?……っ……」
「おいおい、泣くな泣くな」
後ろから出てきたのは薄茶色の髪をした女の人は何か見覚えがある。
「えっと……本当…です。」
「うえ〜ん」
メガネの先輩は私の返事に泣いて、メガネをずらす。女の先輩は当たり前の流れのようにハンカチを差し出した。
メガネの間から目が見えた。赤みの強い紫の瞳。何処か見た気が……
「すいません。こちらは代表のチャルメイト先輩です。うるさくてすいません。」
「だっ大丈夫です」
冷静で、冷たい声。聞き覚えのあるような声。でもそれ以上に、彼女の言葉に納得した。
チャルメイト家、それは前世の実家だった。図書室で見た貴族名簿から見て、妹の子孫……
(そう思って見ると目があの子そっくりだ。でも……あの子の綺麗な金髪は残っていないのね……)
「……ゼーテオが連れてきたんですか?」
「ああ」
女の先輩にジロリと見られたと思うとなかに入れられた。静かな人だと思った。
「あっあの、っさっきの音は……」
私の背中に隠れてキャロリは聞く。見た目よりもはるかに狭いこの部屋は辺りに本や物がぎゅうぎゅうだった。
「……気にしないでくれ。少し本が落ちただけよ。」
無愛想にそう言って代表の先輩を睨む。先輩はやっと泣き止んで、こちらを向きかえった。
「狭くてごめんよ。あの子たちをいれるにはどうしてもね〜」
「「あの子達?」」
ケノンとキャロリは揃って首を傾げる。ここは魔生物のクリオブ、何をするかイマイチ分からないけれど、まあ答えは一つだ。
「ここを何処だと思ってる。魔生物だぞ?」
ゼーテオは呆れながら本棚の横に隠れるようにあった扉を開ける。
その奥にあったものに、ケノンとキャロリは体を私に寄せた。
「死霊犬、通称ダークドックだ。」
名前どうり、真っ黒な毛の中型犬のような魔物。頭にはドクロの印がついていて、魔法を使うときの痣のようだった。
「可愛いでしょ〜?一見魔物に見えないけど、魔力操作が上手い子なの。」
メガネの先輩はそう言って死霊犬を撫で回す。
(羨ましい……)
魔物と言うよりただの犬のように見えるけど、犬は犬で触りたい。でも
「かわいいでちゅね〜」
「……」
死霊犬はあからさまに嫌そうになでられている。知らないものに触られるのは嫌だろう。動物好きの暗黙の了解、嫌がっているこはさわらない!
「あっあの……」
「どうしましたか?」
女の先輩は無愛想に返事をした。美人なんだけど、なんだか暗くて、なんだか……人形みたい?
「先輩はどうしてここに?」
「…そうですね……貴方は、ここをどう思いますか?」
「えっと?」
「ゼーテオ君と先輩……チャルメイト先輩。」
今あったばかりだけど、予想のつかない人だと思った。でも悪い人じゃなさそう。
「明るいと思います。あと仲が良さそう。」
「そうね。あの人たちは、魔物が好きで、ここにはいってるから。」
「先輩は違うんですか?」
先輩はメガネの先輩を数秒見てから少し間を置いて話し出した。
「私は…家が苦手なんです。親も、兄も、使用人も。だからこの学校は救いでした。ここは全寮制で、家から出られるって。」
先輩は手を強く握りしめ、詰めが手のひらに食い込んでいた。
「でも一つだけ、あの家で好きだったものがありました。御先祖様の日記でした。それがすごく哲学的で、何故生き物は死ぬのか、感情とはなんだろうかと……そのなかで、一つだけインクが乱れていました。『魔物が悪なのは何でなのか?』」
不思議な空気が流れ、私は何も喋れなかった。
「それで…クリオブなんてどこでもよかった。だからここに入ったんですよ。……答えられてますか?」
やっぱりこの人は読めなかった。でも、私の感はやはり当たる。この人は悪い人じゃない。
「はい。あっそう言えば先輩の名前って……」
「フロニコ・パトスです。貴方は?」
「えっミレズム・サンティです。」
「……そうですか。」
フロニコ侯爵家は冷徹な家。感情を表に出してはいけないという家訓で前世から有名だった。
魔物というものに対しての拒否反応はどの家よりも大きくて、前世、魔力の高い人への差別が一番大きいくて、少し魔物が出ただけで神殿に大金を払って私を派遣させるような家だった。
それなのに……『魔物が悪なのは何でなのか?』そんな事を考える人がいたって言うこと?
――
「別に興味ない。だから……」
――
「っ」
あれは……前世の記憶のはず。でも時々覚えていないところがある。いま頭をよぎったのは一体なんだ?
(フロニコ侯爵家に関すること?それともまた別な何か?)
こんなことを考える以上に無駄な時間はない。
ケノンはゼーテオと話し、キャロリはメガネの……チャルメイト先輩に捕まったいる。
フロニコ先輩は私をじっと見ていた。私は口角をグット上げ、ゼーテオとチャルメイト先輩に声をかける。
「っここってどんな活動をするんですか?」




