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総集編 エーテル・カンタービレその19

「アルトリア、私の影に!」


「でもそれじゃフレデリカが!」


「ッ!!!」


 八つの銃口から、順々に閃光と共に銃弾が放たれる。


 そして、その銃弾はフレデリカに向かって戦場を駆けていく。


 残弾数を気にしているのかカザキは何故か数発しか連射せず、フレデリカの技術と持ち前の運で何とか銃弾を捌き切り、多少擦り傷は負ったものの致命傷には至らなかった。


 だがカザキの使役する二匹の龍と高性能の腕銃の前に、剣を握っただけの今の二人では手も足も出ず、簡単に龍に拘束され、今度こそトドメを刺されそうになる。


「だめええええッ!! フレデリカを殺さないで!」


「今更なんだよ。お前らは部下を散々な目に合わせておいて、いざ自分がやられそうになったら喚き散らすのか?」


「く……うぅ……」


 ニヤリと笑いながらカザキは銃を発砲する。


 静紅にとって大切なフレデリカを殺せば、間接的に静紅に報復を行える。


 アルトリアの叫びも虚しく、フレデリカの胸に銃弾が迫る。


 確実に仕留めた、そう思った刹那。


 彼女の心臓に銃弾が命中する直前に、一人の金髪の少女がフレデリカの前に立ち守ったのである。


「あなたは……!」


「フレデリカ様、もう大丈夫ですわ! なぜならご主人様が駆けつけましたもの!」


 彼女の盾アイギスで防ぎ、反撃と言わんばかりに盾に取り付けられた銃を撃ち返す。


 彼女たちの前に現れたのは、静紅の所有する魔法人形のアテナ&ヘスティア、そして静紅本人だった。


「衝撃蓄積《しょうげきちくせき》・破弾《はだん》!!」


「雷槍《らいそう》!!」


「いっけええええええ!!!」


 静紅が拘束された二人を救出する中、魔法人形のコンビはただ全力でカザキの制圧を目指す。



・・・・・



 場所は変わり、煙炉塔頂上部分。


 頂上には清掃時に使うのだろうか小屋があり、その中で一人の男性が震えてうずくまっていた。


「爆発音が色んなところから聞こえてくる……ボスは大丈夫なんスかね……」


 そして彼の隣には、部屋に似合わない黒曜の箱が置かれている。


 男はそちらに視線を向けると、大きなため息をついた。


「ごめんよ、俺だって子供を巻き込みたくなんかないんスよ……でもこうするしかなかったんだ……」


 返答の無い黒曜の箱の中を、ゆっくりと覗いてみる。


「すぅ……すぅ……」


 蒼穹のように美しい蒼の髪、真っ直ぐに伸びた綺麗なまつ毛、その肌は白雲のように澄んでいて、身体には彼女の呪縛とも言える電線コードがいくつも繋がれている。


 エーテルだ。


「はあ……」


 遠くで聴こえる喧騒を、両手で耳を塞いで遮断する。


「俺は……他の人みたいに強くはねえ……なんで俺が最重要事項の護衛なんだよ。まあ俺が雑魚だから後ろに回されたんだろうけど」


 バックパックを抱きしめて、彼は一人で小屋の隅に隠れていた。


 黒曜の箱からむくりと起き上がる少女の影に気が付かずに。



・・・・・



「マスラは無事にエーテルを回収出来たかな……みんなは大丈夫かな」


 チカコは静紅とこの場所で接敵し、時間を稼ぐ手筈だった。


 もしも何らかの形で作戦が失敗しても、無線でダリアに伝えて迎えに来てもらう計画だ。


 しかしチカコはそれをせず、レンガ造りの壁にもたれて座っていた。


「夢を阻む人をあれほど憎んだのに、いつしか私が憎まれる側に居たなんて……たはは」


「君には正直ガッカリしたよ、チカコ君」


「!!」


 暗い顔をしたチカコの前に現れたのは、今回の一件の依頼者であり裏で糸を引く人物[破壊欲求の成れの果て・ルインズ]だ。


「大義名分は捨てたんだろう? 人の良心も、ましてや[過去の仲間]をも捨てようとしている。そんな君に夢は必要か?」


「貴方に面倒見て頂いて、私達はここまで来ました。ですが私はここでこの計画を降ります。人の夢を壊してまで自分の夢を叶えたくはありません」


 ここできっぱり言おう、中途半端にすれば面倒なことになる。


 そういうチカコに対して、ルインズは未だ笑顔で続ける。


「逆だよ逆。人は誰かの夢を壊して夢を叶えてるんだ。子供が医者になりたいという夢を持てば、親はその学費を身を削って稼ぐだろう?」


「でもそれは家族だから……」


「それとも何か? 君は何の代償も払わずに何かを得ようとしているのか」


「え……」


「何かを[破壊]することで何かを[創造]する。この世界に存在できる物の数には限りがあるとするならば、夢を[壊す]ということは[叶える]ということと変わらないんじゃないのかな」


 正直、彼の言っていることはあまり理解出来なかった。


 それでも絶望と喪失の淵にいる彼女にとっては、救いの言葉とも受け取れた。


「壊すことは叶えること……叶えることで生じた破壊は、あくまで代償に過ぎない……」


「そうだとも、やはり君は賢いね。それに今、君の[現在の仲間]は静紅一行にやられそうになっている。恐らくそれを助けられるのはチカコ君だけだろう」


「分かりました、向かいましょう。貴方は持っているでしょう? ダリアのように瞬間移動を行える力を」


「言ったはずさ、僕はこの世界の神であると」


 移動中、チカコは何を思っていたのだろう。


 正義のための暴力は善であるように。


 叶えるための破壊は善である。


 正当化された悪の向こうには、一体何があるのだろうか。


 それは神だけが知っている。


 そして、この場合の神は─────。


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