総集編 セパレート・ファンファーレその15
「出来るだけ早く作るって……分かってるの? 剣は剣士の魂だよ、命を預け合うんだよ? 短期間で作り上げた不完全な物なんて生んだらそれこそ危険だよー!」
工房の熔鉄炉に魔石炭を放り込むポカの背中に向かって、スルーサは汗をかきながらそう話す。
「そんなのボクが一番知ってるさ。でもここで諦めたら幼い頃からの夢が全部崩れてしまいそうでね」
「そんな……設計図も分量表も何も無いまま武器作りを行うって!?」
「職人を舐めてもらっては困る。この状況だって過去最高の剣を作ってやるさ。[次代の王の剣]なんだから」
「一切の狂いもない……ポカって何者……?」
ヘルスアは職人の作業をまじまじと見ながらつぶやく。
その言葉に返答したのは、意外な人物だった。
「鍛冶の賢者」
「……になる予定だった。当然蹴ったけどね」
そこには骨格の見えるほど痩せた細身の男性が立っていた。
「グリモワール!?」
そこにはポカを満身創痍にさせた張本人である[魔導の賢者]グリモワールが立っていたのだ。
経済の賢者、医療の賢者、生活の賢者、狩猟の賢者は既にこちらに手を貸してくれているし、気絶で戦闘不能の軍師の賢者はベッドで寝かせている。
六賢の中で敵対しているのはこの魔導の賢者だけだ。
「もうポカを傷つけさせない……たとえ同じ賢者でも、邪魔するなら……容赦しない」
「喧嘩なら他所でやってくれないか……。クタナ・グリモワール、君ならわざわざアス君に侵入しなくても外から魔法で大破させることが出来たはずだ。来たってことは、そういうことなんだろう?」
ポカのその言葉に、クタナは沈黙を貫く。
しかしその視線に敵意は無く、心の中の怒りは大精霊の方へ向けられていた。
「今更どうして……」
スルーサの問いに、彼は遂に口を開く。
「ここで私が行動を起こしたとしても、流石に負けるでしょう。主である王がいなくなった今、私の行動は自分で決めるのデス」
「こっち側が強すぎて、勝ち目がないから手を貸してくれる……ってこと? でもクタナのしたことは悪いことだし、罪は償ってもらうからね」
その間にもポカは次代の王に相応しい剣を作り出していく。
「今は時間が無い、敵だろうが味方だろうが手を貸してくれるなら早くして。君は何をしてくれる?」
「実は私、心理魔法をかじっているのデス。この剣は王に相応しくないといけない。であれば、六賢全員の意志を込められた剣なんてどうでしょう」
「意思が込められた剣……」
王が従える各分野に優れた六人の賢者。
賢者達の意志が込められた剣、王の剣としての理由付けは充分だ。
「戦闘中のアーチェさんの意志は既に回収済み、ついでにオーケアさんとドラウさんの意志も済んでいます」
クタナの手の中には、三つの色つきのガラス玉のようなものが。
あれが六賢の[意志]だ。
「さあ手を出すのデス、あとはヘルスアさんとスルーサさん、そして私だけなのデスから」
ポカは急遽設計図に変更を加え、剣身に[6つの丸い穴]を作る。
ここにあのガラス玉をはめれば剣の完成だ。
「出来た……これが次代の王、サユリの相棒となる最高傑作の剣……ッ!!」
・・・・・
ポカたちが紗友理の剣を製作する中、地上では大精霊との戦闘が続き、激化していた。
マカリナが合流したことで押されかけていた形勢は元に戻り、戦力的には五分五分だ。
「退きなさい大精霊! 私は古の王家の生き残り、スラム街のベルアよ!」
大精霊の方へ不死鳥と輪廻竜を飛ばし、輪廻竜の力を使って巨大化させる。
大精霊にも負けない程に巨大化した不死鳥は鉤爪で拘束し、そこを輪廻竜が踏み潰す。
「お、おいおいおいなんだこりゃ! どうなってんだ?」
そこへ聞き慣れた間抜けな声が飛んできた。
声の主は瓦礫の山に登って、二匹と大精霊の激闘を口をあんぐりと開けながら眺めている。
「く、くそ! まあいい、獣人王国精鋭部隊またたび隊へ告ぐ! なんか適当に暴れやがれ!」
「「「うにゃーーー!!!」」」
現れたのは、なぜか獣人族たちの戦闘部隊の指揮をする竜車乗りマドンだった。
「サユリとナギサか! あのガキは? ってか二国の王どころか六賢まで味方につけて……この状況がいかに凄いことか分かってんのか!?」
「話はこのあとゆっくりする!」
「はあ!?」
マカリナに似た猫獣人たちの進軍に、紗友理たちも続く。
「支援魔法をありったけかけておきました! 皆さん、ここが攻め時です!」
シノノメ&スイレン、マカリナ、猫獣人たちの猛攻を受け、空へ咆哮を飛ばす大精霊。
この近隣の国の戦力が今、たった一体の精霊に向けられているのだ。
刹那、アストロ・シェルタから一本の剣が投げられ、紗友理はそれをキャッチする。
「待たせたね、それがボクの最高傑作─────」
透き通るような剣身とがっしりと握り心地の良い持ち手、そして埋められた[六つの丸いガラス玉]。
「[煌核剣セパレート]だ、どうだい出来は!!」
「煌核剣セパレート……しかし君のような最高の鍛冶師の傑作品なんてもらっていいのかい?」
「何を言うんだい、次代の王である君にしか扱えない武器だ! さあ、それでいい加減大精霊を倒してくれ!」
「ありがとうポカ! 凪咲、ベルア、ニンナ、カリン……最後はみんなで決めたい、指示通り動いてくれ!」
新しい相棒セパレートを握りしめた紗友理は仲間たちに指示を送る。
この世界へやってきて旅を共にした[仲間]と[戦友]となら、大精霊にだって勝てると思ってしまう。
「言われなくても」「今までも」「ずっと」「そうだったでしょ!」
紗友理とカリンは近寄って、互いに剣を構える。
「ベルア!」
「最後の一撃、かっこよく決めなさい! なんたって私のサポートがあるんだもの!」
グロールの街で初めて出会ったベルア。あの時のことはよく覚えている。
古の王家の生き残りとして追われていたベルアを救うことで、行動を共にすることになった。
不死鳥の祠に潜ったり、思い返せば彼女との思い出は大量だ。
ベルアは大精霊の足元に魔力の出入り口を作成すると、不死鳥と輪廻竜と共に大精霊を拘束する。
「ニンナ!」
「あなたと旅ができて本当に良かった、落ちこぼれと言われていた自分に自信が持てたのですから!」
ニンナと出会ったのは初めて王都に来た頃だったっけ。
王都は騎士と平民の分け隔てが大きく、平民は騎士の姿を見ると通り過ぎるまで頭を地面につけてひれ伏すほどだ。
自分は味方だ、と呼びかける運動をしている時に出会ったと記憶している。
今思えば彼女と出会わなければ王の陰謀を知る由もなかったし、王邸に乗り込んで王政を破壊することもなかっただろう。
ニンナは紗友理とカリンの背中を押すように再び支援魔法をかける。
「よし凪咲、飛ばせェッ!!」
「決めてね紗友里ちゃん、カリンちゃん!! もう誰かが傷つく姿を見たくないから! だから……ッ!!」
凪咲とはこの異世界の旅によって更に仲が深まったと思う。
彼女のことをよく知れたし、向こうも紗友理のことをよく知れただろう。
意外な一面、喜怒哀楽のトリガーなど本当に様々なことを知れた。
もし紗友理一人でこの世界へ来たとしたら、恐らくこの旅は初めの海の村付近で止まっていたと思う。
気恥ずかしくてなかなか言えないが、結構凪咲に感謝している。
これが終わったら美味しいものでも食べさせてやろう。
それだけで凪咲には感謝が伝わるだろう。
凪咲は、紗友理とカリンが乗っている盾を飛ばした。
物理法則によって盾と共に飛んでいく紗友理とカリンは、目と目を合わせる。
「行くぞカリン、最後の一撃だ!!」
「ええサユリ! あれ、どうして私笑っているんでしょう! あはは、怖いはずなのに、動けないはずなのに!」
そのカリンの笑顔は輝いて眩しかった。見ているだけでこちらも笑ってしまう。
初めて出会った時の冷徹な雰囲気はもう無く、まだ未成年の少女らしい笑みを浮かべた。
幼い頃、目の前で魔物が血を吹いて死んだことがトラウマになり、魔物を見るだけで気絶してしまうほどの重度の魔物嫌いだったカリン。
城塞都市グリムニルに立ち寄った時、偶然紗友理たちはカリンと会った。
色々あって彼女の管轄下である[コロシアン]の攻略をすることになったのだが、そこは魔物が巣食う場所でカリンにとっては地獄のような場所だった。
コロシアンを無事攻略した時、紗友理は騎士団長と同盟に近しい約束を結んだ。
約束がなければこの王都決戦は戦力不足で成り立っていなかったと思うと、運命を感じる。
「ありがとう、共に戦ってくれて」
「何を言うのですか。私たちはもう契約上の関係じゃありません、友達でしょう?」
「ああ。私と君は[友達]だ!」
煌核剣セパレートを空へ掲げ、接敵の構えを取る。
「重撃で決める、いいな!」
「同時にいきましょう!」
二人が息を合わせて技を繰り出す直前、マドンの隣にいるフランが能力を使用した。
「この場の全員が紡いだ連撃、あの二人に託すっス!」
マカリナとスイレンは連撃を基調とする戦闘スタイルだ。
二人だけでも連撃数は500を超えるだろう。
「連撃数612! 100 連撃で約三倍、600で約十八倍っス!」
そのフランの言葉に、一同は一挙に空へ飛び上がった二人を見る。
「武器解放・煌核剣セパレート!」
瞬間、世界が煌めくような感覚に陥る。視界が全て真っ白な光に包まれて、闇でさえも光に飲まれていく。
「相棒、力を貸してくれ───────!!」
セパレートに埋められた六つのガラス玉が輝き、六色の光の糸が紗友理の腕に絡み付く。
腕から胸、襟、裾。次いで帽子とズボンが光の糸によって編まれ、紗友理の身体に装備された。
「これは……ストーリアが着ていた軍服……」
これが六賢が選んだ結末なら、喜んで受けよう。
「剣舞奥義・マウントファクション・シルフィード!!」
「伊豆海流剣技奥義・天覇空烈剣ッッ────────!!!」」
刹那、世界が黄昏に包まれた。
空気が裂け、それは時をも超越する。
暗き時代は新たな時代へ。
─────ベルアにもきっと出来るはずよ。自分を犠牲にしてまで一緒に戦ってくれる、素敵な仲間がね。
「……っ!! サユ……いいえ、今はやることがあるわ!」
特異点とも呼ぶべき[一人の軍服の少女]が繰り出した一撃は大精霊の再生速度を上回る形で破壊し、その隙を見てベルアが輪廻竜へ託した。
体力の九割を減らされた大精霊ならば、輪廻竜も彼の身体に干渉することが可能だ。
そこからのことは記憶にない。
奥義を放った紗友理とカリンは気を失うと、地面へ真っ逆さま。
凪咲がギリギリのところで受け止め、何とか助かるのであった─────────。
・・・・・
あの一件から八年。
まだまだ未熟ではあるが紗友理はこの国の王となり、バラバラだった国民の意志をまとめる象徴となることを名乗りあげた。
輪廻竜が大精霊の時間を巻き戻し、生贄にされた人達を解放した。
もちろんその中にはベルアの両親も居て、彼女はしばらく両親と抱き合って動かなかったことを覚えている。
彼女が王になったとき、この国の問題があまりに多すぎて困ったものだ。
各地にちらばっていた騎士団を国中にバランスよく配置し、その騎士団の中でも腕のある騎士を[王都近衛騎士団]として設置した。
アンブレル騎士団の騎士たちには借りもあるので、希望する者は王都での生活を送らせる約束をした。
それ以外にもやることは沢山沢山あったが、もう何が何だったのかあまり覚えていない。
ああそうだ、マドンは王専属の配達員に雇い、できるだけ国中を満遍なく竜車で走らせるようにした。
彼の夢は世界中の街道を竜車で走ること。まずは国中の街道を走ってもらいたいからな。
「あれは本当に大変だったよねえー、もう二度とやりたくないよ!」
ソファで寝転びながら紗友理の日記をペラペラとめくる凪咲が、笑いながらそんなことを言った。
「二度も三度もあってたまるか。たしかに大精霊の件は最悪ではあったが、私にとっては自分を大きく変える出来事でもあったからな……なんとも言えん」
「あー、たしかにあの件から紗友里ちゃんって優しくなったよね? 前までは子供なんて大嫌いだって言ってたのに、国中の孤児たちを王都に連れてきたりさ」
「あ、あれはその……いいだろ別に!」
誰かさんのせいで優しくすることの必要性に気づいたからだ、とは言えなかった。口が裂けても言ってたまるか。
「失礼するっス! ニンナここ来なかったっスか!?」
王室の扉を勢いよく開いたのは、相変わらず忍者のコスプレをしたフランだ。
ぜーぜーと汗をかいているが、焦った表情も無い。
きっと喧嘩でもして追いかけているんだろう。
「ううん、来てないよ」
「ああもうあの魔法使いどこ行ったんスか! 勝手にデザートを食べた罪、ちゃんと償ってもらわないと!」
そんなことだろうと思った。
ドタドタと騒がしく王邸の廊下を走っていくフランを見送ると、紗友理は大きくため息をついた。
「騒がしい忍者って何だよ……」
「あはは! たしかにー」
「あの二人の仲はどうにか出来ないものか……」
「でも私はあの二人のこと見てるの好きだよ? 夫婦漫才みたいな感じがして好きだなあ」
紗友理はいつものテーブルに座る……が、今度は部屋の窓が割られる。
「今度はなんだ!?」
割れた窓の方は騎士たちの鍛錬所のはずだが。
「あ、すまねェサユリ! 窓割っちまった!」
「すまないじゃないだろ、それに君……矢の軌道変えられるだろう!?」
もうこのくだりも何度目だか。
「窓ガラス一枚金貨五枚、アーチェには払えるの!?」
「んだようるせェな……別にいいだろ、減るもんじゃないし」
「減ってるんだよ!? 言葉の使い方間違ってない?」
六人の賢者、六賢は紗友理が解体させた。
とはいえ六人中六人がこの王邸で未だ生活を送っているが。
こうしてアーチェとスルーサが喧嘩しているのを見るのも何度目だろうか。
アーチェは騎士達に弓を教える先生。
スルーサは変わらず国の予算やら貿易についてのことを担当してもらっている。
ヘルスアは王都にある国で一番大きな病院の院長。
オーケアは道の整備や王都民の引越しの手伝いなど。
ドラウは戦闘時の軍師、暇な時は紗友理のチェスの相手をしてもらっている。
クタナは魔法の研究を進めている。
[万優姫]と呼ばれている紗友理だが、さすがに六賢にはそれぞれの分野に劣ってしまう。
六賢は[その]分野においての超プロフェッショナルだが、紗友理は[全て]の分野において満遍なく優れている。
だから実際の事務作業などは彼らに任せて、緊急時だけは私が引き受けることになっている。
紗友理の仕事としては王らしい退屈な仕事ばかりだ。
あとはこの国の色んなところへ出向いて、国民たちと接する。
これが意外と興味深い話ばかりで楽しい。
「さあほら、もっと素早く剣を振り下ろすのです! 舞うように、そして明確な死のイメージを相手に伝えるように!」
もう片方の鍛錬所ではヒーヒー言いながら剣を振り下ろす騎士を指導する、カリンの姿がある。
彼女は彼女自身の意向で近衛騎士団に入った。私としても友達のカリンがそばに居てくれるととても嬉しい。
「相変わらず騒がしいわね……[私のところ]とは大違いよ」
「ベルア、いつも言ってるように来るなら来ると言ってくれ! 言ってくれたら歓迎の準備をするというのに」
相も変わらず背中と頭に不死鳥と輪廻竜を乗せているベルアが、紗友理の部屋を訪れる。
「ばーーか、だから言わないのよ。あの世話役ったら手厚い介護じゃないんだから、あそこまで何でもかんでもしなくていいの」
「ルカとルナは本当にベルアの事が好きだからな。彼女らなりの奉仕だ」
「あれ、ていうかナギサじゃない! 生き返ったの!?」
そうか、凪咲が剣に転生してからベルアとは顔を合わせていなかったか。
「これには色々あるんだけどねー、まあこれからも一緒ってこと!」
「はあ、よかったあああ……」
「そっちの方はどうだ、順調かい?」
「まあ上々ってとこね。分からないことが多すぎて大変だけど、何とかやってるわ」
ベルアは現在、復興作業と[古の王家の滅亡理由]について研究するため旧王都のちょっとした偉いさんになっている。
「フェニとリンも手伝ってくれてるし、他にも色んな研究者がいるんだもの。必ず解き明かしてみせるわ」
と、そこへお使いから帰ってきた三人の少女もとい幼女が部屋の中に入ってきた。
「イナベラの挨拶とか色々してたら遅れたの! 今から夕ご飯の準備をするからちょっとまっててなの……あ、ベルアさん!」
「うげ、世話役……」
ルカとルナは本当にベルアに懐いていて、姉分である二人を真似てイナベラもベルアにひっつく。
「ぐああ、は、離しなさいよこの! これだから子供は!」
「ベルアも子供だろう?」
「私はもう十八歳よ、立派な大人! じゃなくて昔から大人よ私は!」
三人の抱きつきに押し倒されたベルアも、自然と大きな口を開けて笑っていた。
「ちいさなとかげ……それとことり?」
「神託と呼ばれた特別な動物。ルナはとても興味がある、イナベラも触る……?」
「ルカはベルアさんがいればそれでいいのー!」
まるで玩具だな。これではベルアが二人から距離を置くのも分かる気がするが……。
「ちっこいのが一人増えてもっと大変よ……ああこらそこ引っ張らないの!」
三人の幼女に弄ばれるベルアを見ていると、何故かざまぁみろという感情が湧いてきてしまう……何故だろう?
「ベルアちゃん、私も行っていい!?」
「良いわけないで─────ぐふっ!」
凪咲のダイブを食らったベルアは、更に身体に負荷がかかる。
「あはは、ははは! もう、本当に君たちは……ほらそろそろベルアが潰れてしまうぞ」
昔はこうして誰かと大勢で大笑いするなんてこと無かった。
高校生時代、天才として神のように崇められ、本当の友人と呼べるのは凪咲しかいなかった。
しかしそれはこちらが本当の心開かなかったから。心で呼びかければ、向こうも心で返してくれる。
そんな簡単なことにどうして最近になるまで気が付かなかったのだろう。
「あははは、ベルアちゃん潰れてるー」
「笑ってんじゃないわよ!」
「さあルナ、イナベラ、キッチンで夕飯の支度をするなの!」
こんなに楽しくて幸せなことに、どうして気が付かなかったのだろう。
生まれてから紗友理は本当に色々な人と関わってきた。
その全ての出会いが、この今を作り出しているんだ。
「ありがとう」
「「え?」」
「いつもは恥ずかしくて言えないけれど……こほん、出会ってくれてありがとう!」
そう言うと、紗友理は二人に向かってニッと笑ってみせた。
この言葉を言いたい人はもっと沢山いる。だからこれから言いに行こうと思う。
まずは目の前の一番大切な二人に。
心から想いを伝えることで、相手も心で返してくれる。
そう、何気ない幸せは、そこから始まるのだから───────。
第13章 セパレート・ファンファーレ [完]
今回で総集編 セパレート・ファンファーレ編が完結です!
いやあ、終わりましたね。長かったですね!(真顔)
ベルアやカリンはセパレート・ファンファーレ編から登場していますが、最新話付近でも活躍しているので作者的にかなり印象深いキャラクターです。
さて、明日からはクリスマス編、それからエーテル・カンタービレ編をお送りします!




