才能の有無
私は彼をあの場に待たせてから、さっき視線を浴びせてきた人間の元に向かった。
正直勝てるかどうかは怪しいと思う。今まで数百という数の人間と戦ってきたが、明らかに魔術の練度が高すぎるのだ。
だから私は彼に笑顔を見せてからここに来た。
私の役割も果たせず、彼をまた独りにしてしまった。
生きてまた彼の元へ行かなければ。
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森の中で対峙する、2つの影があった。
一方はボロボロになっている魔族、一方は余裕そうな表情を浮かべている人間である。
普通人間と魔族が戦うと、魔族が勝つことが殆どである。しかし、それは人間が一般人であり、魔族が平均的な強さの場合であることが条件だ。
人間が熟練の魔術師…つまり才能が開花している人間であった場合、平均的な力を持つ魔族では人間に殆ど勝てない。
勝てるのだとしたら、それはサポート魔術の才能が開花した人間を相手にした場合だけだろう。
そんな訳で、結論から言うとこの状況はどう足掻こうが人間の勝ちとなる。
「最近この森の魔族が人に危害を加えてるって言うから来たんだけど、あんまり強くないんだ?私が来た意味無かったかも。」
「まだ私は負けてないし、負けるつもりも無いの!」
私はこの女を殺さなければならない。ここまで来たらアレを見せるしかないから。
私は覚悟を決めて自分の角を折ろうとした、その直後だった。
「こんなとこで殺し合いしてんじゃねーよ。」
声がした方向に目を向けると、そこには彼が居た。
「待っててって言ったはずだよ。」
「貴方、この魔族の仲間なの?人間を裏切った?」
私は呆れていたが、女は敵意を向けていた。
「俺は人間を裏切った訳じゃ無いが、実質裏切ったようなモンだな。」
「そうなんだ…じゃあ貴方も殺すね。」
女はそう言って彼に魔術を放った。
しかし、女の魔術が彼に当たることは無く、彼はいつの間にか女の背後に居て、女を地面に叩き伏せた。
「え?」
疑問しか浮かんでこなかった。
魔術を使った痕跡(魔法陣)は無かった。しかし女の背後に居た…ということは、ただの身体能力……?人間の身体能力で、魔族の私にも出来ないことをやってのけたの?
「おいおい、魔族に勝てても人間に勝てないようじゃダメじゃねぇのか?」
「貴方、本当に人間なの!?」
「人間に決まってるだろ。まあ、魔術の才能が無い無能だけどな。」
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俺は今、魔族と戦っていた女を制圧した。
別に魔族を助ける必要なんてなかったが、少し面倒そうだったから助けた。これが悪い方向に行かなきゃいいんだが。
ちなみに俺は魔術の才能が無いだけで、別に身体能力が低い訳じゃなかった。むしろ魔族に引けを取らない高い身体能力を持っている、"ある"側の人間だ。
さっきのだって、全力で地面を蹴って女の背後に回り込んだ後、右腕を掴みそのまま地面に叩きつけただけの脳筋攻撃だったから。
「お前じゃ俺に勝てないんだよ。これと違って、才能があっても使い方次第で腐るのが魔術だからな。」
俺はそう言って女の意識を落とした。しかし、
「どうしてここに来たんですか!」
背後から叱責が飛んできた。
「一応助けに来たんだが…?」
「助けなんて要りませんでした!あの女に対する最終手段もきちんと持ってましたから!」
「…その最終手段ってのは何なんだ?」
「今の貴方には言えません。言う資格すらありません。」
「そうか。じゃあ戻るか。」
「…………。ありがとうございます。」
「良いんだよ。お前が居なくなることが何よりも面倒なんだ。」
「そうですか。」
そんな会話を後に、再度俺たちは森の奥へと進んでいくのだった。
視点切り替えが多くて申し訳ないです
理由はきちんとあるんですけど、ちょっとその…まあそういうことで……
長々と申し訳ありませんが、リアクションしてくださった方本当にありがとうございます。とても嬉しかったです(≧∇≦)




