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第八話 気になる話

第八話 気になる話


 わたし、菊地紫乃(きくちしの)!小学4年生で、10才!突然なんだけど、わたし、気になる人ができちゃったんです……!

 でも、その子もわたしとおんなじ、女の子なの。

 他の友達とはちがう気持ちになるんだよね。ふしぎ。だからね、友達に聞いてみたの!……少し、いやかなりぼかしてだけど。

 そしたらみんな、「それは恋だ」って。でも女の子だよ?だけど、本で読んだこととか、友達から聞いたこととか、全部合ってるの!……やっぱり本当に、恋、なのかも。


 その人は、なんていうか、他の人とは違ったの。いつも、おとなしくて、静かで。休み時間は、机にうつ伏せになって寝ているか、まだ習ってもいないような難しい字が書いてある本を読んでる。最初は、もしかしたら怖い人なのかもって思ってたの。でも、全然違った。

 小学校に入学してから、何日かが経って、掃除をすることになった。掃除場所はくじで決められたんだ。そしたら、その子と2人で同じ掃除場所だったの!その時の私はもうすでにたくさん友達ができてて、クラスのみんなと喋ってた。でも、その子とだけ、なぜか話せなくて……。


 いざ、掃除の時間ってなっても、お互いに話すこともなく、黙々と外の掃き掃除をしていた。


 (なにか、なにか言わないと……!)


「お、おつかれさまです。」

「……別に、そんなかしこまらなくても。」


 あれ、意外と話してくれる?

 

「で、でも……るりちゃん、すごくおとなっぽいから」

「同い年だよ?」


 そう言って苦笑いしたその人。その時初めて、しっかりとその人の顔をしっかり見たの。そしたらね、すっごく優しい顔してた。若干下がり気味の眉毛も、こっちをまっすぐ見つめてくる黒い瞳も。全部がその人のことを物語っているみたいで、つい、見惚れてしまった。

 

「あの。」

「なぁに?」


 ニヤニヤしながら返事をしてしまっていたかもしれない。

 

「今って何が流行ってるの?」

「へ?」

「いや、そういうのに疎くて……」

「うとい?って?」

「えっと……よくしらない、みたいな?」


 びっくりした。正直、他の人よりもしっかりしてるから、色々なことに詳しいものだと。それに、そういった()()()()()()()()をわたしに聞いてくれたことが、何よりも嬉しく感じた。

 

「なんで、しりたいの?」


 疑問に思ったことをそのまま聞き返してみた。すると、思っていた答えとは違うものが帰ってきた。


「貴方と、仲良くなりたいから。」

「……っ!」

「だから、教えてほしい。お願い。」


 ……あの時のるりちゃ……その人の表情、今でも忘れられないなぁ。本当に一途にこっちを見て想いを伝えようとするあの瞳。あれに見つめられたら、誰でもキュンキュンしちゃうよぉ〜!それからもね、なんだかんだ私とお話ししてくれて。それで、わかったことがあるの。

 その人は、ちょっと大人びているだけで、おんなじ人間だってこと。

 確かに口数は少ないし、頭も比べ物にならないくらいに良いし、運動だって完璧で。纏っているオーラがすっごく話しにくくしているけれど、案外、可愛く笑うのだ。他の人とも仲良くなろうと、必死に私に最近の流行りのものを訪ねてくるし、近くにいた子がその話題を話していると、混ざりたそうに、何回も顔を上げ下げしていた。……けど、なんだかんだ私以外の人と喋ってるの見たことないなぁ。

 あれ?なんでわたし、ちょっと嬉しくなってるんだろう。その人にお友達ができるのは良いことのはずなのに……

 友達に囲まれている様子を想像すると、胸が痛くなる。これって……!?

 わたしの友だちに言われた通り、わたしは、るりちゃんのことが大好きみたいです。……きっと、友達として。


「参ったな、この書類、天川に早く渡さないといけないのにな。」


 担任のつぶやきが耳に入る。考えるよりも先に、言葉が出ていた。


「先生、わたし、届けに行きます!」

「おう、そうか。助かるよ。住所はこれだけど……わかるか?」

「多分大丈夫です!」


♦︎♦︎♦︎♦︎


「えっと……ほんとに、ここ?」


 先生からのメモをデジタルウォッチに読み込ませて、ナビ通りに進んだ先は、森だった。なんていうか、うん、森。途中で引き返すか迷ったくらいには人の気配がなかった。

 しばらく山道を歩いていると、ちょっとした平地に出た。


「綺麗なお庭……!」


 そこそこの大きさの一軒家。すぐそばには、高さの切り揃えられた低木や、さまざまな種類のお花が咲き誇っていた。

(るりちゃん……こんなところに住んでるんだぁ。)


 わたししか知らない、るりちゃんのこと。そう思うと、不思議と口角が上がってきた。……じゃなっくて!今日は、届け物するために来たんだった!


「すみませーん。」


 チャイムを鳴らして一声かける。するとすぐに、扉が開いた。


「あら、どうしたの?」

「わたし!るりちゃんのお友達で……その!大事なお手紙を先生から預かってて。」

「もしかして、あなたが紫乃ちゃん?」

「……!?なんで、それを……?」

「……あの子、お友達のこと、滅多に話さないから。って、そもそも口数も少ないんだけどね。」


 どうやらるりちゃんは、お家でも学校みたいに振る舞っているみたいです。


「さ、瑠璃もそろそろ帰ってくるから、よかったら上がっていかない?」

「じゃ、じゃあ、お願いします!!」

「あらあら、とっても可愛いわね。返事がちゃんとできる子は、きっといい子に育つからねぇ。」


 そう言いながらるりちゃんのおうちにお邪魔することになった。

 

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