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第六話 勘違いしてた話

第六話 勘違いしてた話


「それでは、魔力測定について説明いたします。」


 スーツを身に纏った、いかにもバリキャリなお姉さんから説明を受ける。そういえば、この辺の話は教えてもらえていなかった。こういった行事について母さんに尋ねても意味ありげな笑顔で誤魔化されてきた。もしかしたら、サプライズってそういう……?だとしても少し変だ。今の私の両親は、世間一般から見てだいぶ変わっているのだろう。


「我々魔法使いが魔法を使えるのは、魔力を溜め込んだり、放出したりできる器官を持っているからと言われています。」

「……確か、お腹の辺りにあるってヤツですね。」

「よくご存知で。今までお勉強をよくしてきたのですね。」


 勉強をしてきたことも確かだが、やはり転生したこともあって『普通と違うこと』には他一倍興味があった。そのため、魔法についての知識は並よりも多い自信がある。


「そして、その器官が魔力をどれくらい溜め込めるのか、というのが最大魔力量です。ただ、魔力の溜め込みは体に良くありません。かえって、魔力器官を傷つけることになります。でも逆に、魔力が足りていないと、貧血のような症状が出ます。」

「だから、『魔力は術師の血』と言われてるんですね。」

「はい。その通りです。つまり、魔力の過不足は、私たち魔法使いにとっては天敵なのです。けれども、体にある魔力を常に可視化することはできないので、このような測定が義務付けられているんです。」


 本で読んだ情報では、私たち魔法使いは、身の回りの環境から常に魔力を吸収しているとあった。空気中にあるものはごく微量だが、溜め込みすぎると、魔力器官だけでなく、様々な臓器が壊れていくとも。そうならないために、日常のちょっとした所で魔法を使うようにしている。そうして誰かが使った魔法が、魔力となり、他の誰かへと吸収されていく。魔力循環、というやつだ。


「魔力の平常値を測ることで、使用できる魔法の量、貯蓄できる魔力の量がわかります。この平常値、いわゆる過不足のない値を『魔力量』としています。」

「どうやって数値に?何かの基準があるんですか?」

「いい質問ですね。魔力量は、一般攻撃魔法を何秒の間撃ち続けることができるか、という値になっています。地域によっては、一般防御魔法だったりと違いはありますが、どちらも使用魔力量はほぼ同じなので、魔法界共通と考えても良いと思います。」


 こういった魔力検査は大体、ものすごい数値が出て、世界を救う勇者パーティに入れられたり……?なんて妄想は浮かんですぐに消えていった。何せ魔法界といっても現実世界とほぼ変わらないし、私は父さんの小型測定器で測ったことがある。そこに表示されていた数字は、本に載っていた当時の年齢の平均値だったはず。

 大した期待も持たずに、案内のまま測定所へ進む。


「では、こちらの魔法陣の上に乗ってください。なるべく余計な力は抜いて。」

「は、はい。」


 結果がだいたいわかっていても、緊張で少し体が硬くなる。人生でなかなかしない体験だ。

 意を決して、指示通り魔法陣の上へと踏み出す。職員さんが手元の機械を操作した刹那、足元の魔法陣が光を帯びる。


「これは……!」


 静かな空間に職員のざわめきが走る。


「……少々そちらでお待ちください。」


 そう言って、駆け足気味に部屋から出ていく職員さん。すると、廊下から「なんだって!?」という父さんの声が聞こえた。


「おい、ルリ!!!お前……これから、忙しくなるかもな……。」

「?それってどういう――」


 慌てたような様子の父さんが、目を大きく開きながら伝える。

 ……もしかして、酷い結果だったとか?いや、でも、一応魔法はそれなりに使えてはいたはず。だったらまさか――

 様々な思考が頭の中を循環する。あれやこれやと浮かぶ仮説に、すぐに否定する。そんな感じで混乱しながら、父さんに問いかけようとした瞬間、先ほどの職員が資料を持ちながら入室した。


「えーっと、その。一旦、お二方ともお座りください。……私もとても驚いていますが。」


 職員さんが資料を一枚、私へ手渡した。


「これは……」

「先ほどの結果です。端的に申し上げると、お子さんの魔力量は稀に見るレベルでおかしい、です。」

「……おかしい?」

「ああ。ここを見てみろ。」


 父さんが指差した先には、魔力量をわかりやすく示した棒グラフがあった。

 

「このグラフが……どうかしましたか?」

「……あのな、このグラフの下の方に赤い点線があるだろう?」

「はい。」


 父さんの言う通り、グラフには赤い点線が横に伸びていた。だが、私の魔力量を示しているであろう棒グラフは、その点線の遥かに上へと伸びていた。……まさか――


「この点線は、魔力量の平均値だ。」


 だと思った。なんとなく、そんな予感はしていた。


「あの……この間、父さんの機械で一度、魔力量を測ったことがあるんですが……」

「!?!?あれ、お前だったのか!?機械のエラーだと思っていたが……」

「そこに表示されていた値は、本に載っていた平均値と同じでしたけど……」

「……なるほど、な。よし、よく聞いてくれ。魔法使いの寿命は普通のニンゲンより長いのはわかるよな?」

「もちろんです。確か、老衰による死は訪れないと――」

「そうだ。実質不老不死ってやつだ。だからな、魔法使いは数100年生きてから魔術を極められる、なんて言われもあるんだ。俺の部屋にある魔術書は全部、500歳以上向けんだ。そういった魔術書では、100の単位を省略することがあってだな――」


 嫌な汗が体に流れる。


「えっと……それってつまり……」

「おそらく、お前の魔力量はその当時の100倍の年齢の平均値だったんだ。」


 まぁ、そうだろうな。はぁ……自分にはなんの異能もないと思っていたが、転生者の宿命ってやつなのかもしれない。さっき、父さんは「これから忙しくなるかも」と言っていたし、面倒ごとに巻き込まれるんだろうな……。


「そういう訳で、貴方の魔法の才能は凄まじいものなのです。」


 職員さんが、かけていたメガネをクイっと持ち上げ、続けて言った。


「しばらく、こちらでお待ちください。魔法省長官がお会いしたいとのことです。」

「ちょ、長官!?」


 驚きの声を響かせたのは私ではなく父さんだった。魔法省の長官、ってことは――


「父さんの上司にあたる人?」

「上司なんてレベルじゃない。例えるなら社長だ。」

「あら、魔法省勤めの方だったのですね。」


 そんな人が、私に……って。前世で読んだ小説だと、ここから「世界を救ってくれ」とか言われちゃったりして。

 なんとなく、今までは自分を俯瞰して見ていた、というか。感覚としてはゲームに近かった。けれど、今では現実感の方が優っている。

 ここから、私の人生が変わるかもしれない。本当にゲームだったら、きっとテキストで注意が出ているだろう。


 ここから先、物語が大きく動きます。先へ進みますか?


 今までの私なら、首を振っていた。だが、今の私――瑠璃なら、答えはきっと「イエス」だ。

 改めて大きな覚悟をしながら、来客を待つのであった。

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