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叛逆のヴァンパイア  作者: 圭沢
第二部 Vampire & Throngs
28/90

26 罠

 ラビリンス攻略で浮かれる大都市ブシェクの、大通りから少し入った路地裏。

 宵闇迫るひと気のないその空間に、どこからともなく真っ白な霧が湧き出てきた。霧は見る間に人の形へと集束していき、次の瞬間、膝に手をつき背中を丸めた一人の男がそこに姿を現した。


 ヤーヒムだ。

 身にまとった風格漂う竜皮のロングコートの肩は荒く上下し、その鋭くも整った闇の種族の顔は極度の疲労に歪んでいる。


 どうやら【霧化】というものは長時間するものではないらしい――その事を身をもって知ったヤーヒム。

 しかも今回は彼を捕えようと網を張っていた人間達の目から逃れるため、引き込まれそうになるぎりぎりまで深く隣界に潜っていたのだ。


 引き込まれてしまった後、その隣接する界がどうなっているかは分からない。感覚的に理解しているのは、完全に向こうに行ってしまうと戻ってくるのが困難だということと、どこまでも落ちていきそうな底知れぬ恐怖がその隣界から感じられるということ。


 ここまで深く潜って姿を消すのは奥の手、実際は今後の検証課題としてじっくり研究していくつもりでいたのだが、状況はそれを許してはくれなかった。お陰でアマーリエ達やフーゴを余計な騒動に巻き込むことは回避できたとはいえ、文字どおり綱渡りの連続だった。


 今ヤーヒムの頭にあるのはなんとか乗り切れたという安堵と、最後にアマーリエから伝えられた情報。

 アマーリエによると、やはりザハリアーシュは厄介な相手らしい。明らかな強者たるあの荒々しい威圧感、そして砂漠の階層でヤーヒムを襲ってきた<火炙り>ゾルターンの義兄弟という噂。

 <火炙り>のその後をきちんと確認した訳ではないが、あの暴れ狂うサンドワームの只中に上空から落下していったのだ。おそらく死んでいるだろう。ザハリアーシュはヤーヒムの血に秘められた途方もない利用価値を知っているだけでなく、さらに復讐という強烈な動機をも持っているのだ。


 そしてゼフトという名の広範囲に根を張る裏組織。

 確かザハリアーシュの顔を見た時にアマーリエがその名前を口に出していたが、その途端マクシムやフーゴが強い警戒を露わにしていた記憶がある。それだけ悪名高い組織なのだろう。そして、彼女が言うにはそのゼフトは国の半分を牛耳っており――つまり、この街から遠く離れても彼らの追及は執拗に続くということだ。油断は禁物、常に警戒をしておくべきだろう。



 ――――さて。



 呼吸が落ち着き、余裕を取り戻したヤーヒムはゆっくりと路地の奥へと歩き出した。

 まずは早急にこの街から離れるべきだ。そして向かうは……たしか街の北、それほど遠くない場所にひとつヴァンパイアのコミュニティがあった筈。かつてラドミーラに連れて行かれたそこは中規模のまとまったコミュニティだったが、果たして今はどうなっているのだろうか。リーディアに教わった今の地理を思い起こしても、ザヴジェル領に向かうしろ同じくリーディアに教えてもらったコアが「生きている」ラビリンス群に立ち寄るにしろ、そう見当外れの遠回りにはならないはずだった。


 となれば。


 ヤーヒムは深々とフードをかぶり直し、街の正門目指して足を速め――


「――待たれい、そこの騎士殿!」


 今しがた通り過ぎた建物の影から数人の兵士が声を掛けてきた。

 彼らの存在を横目で確認し、足早に前を横切ったのが裏目に出たのだろうか。まさか騎士と呼ばれるとは思ってもいなかったが、今の服装はザヴジェル筆頭上級騎士のマクシムの私服を譲り受けたものだ。背中には剣も背負っている。ヤーヒムは仕方なく足を止め、遠い過去の己を思い出しつつ違和感なく見えるように背筋を伸ばして振り返った。


「失礼。身分ある御方とお見受けするが、こんな路地裏を供も連れずにいかがされたかな? ラビリンス攻略の祭りはこちらではなく、大広場で今準備をしているところですぞ」


 経験豊富そうな中年兵士がヤーヒムにゆっくりと近付いてくる。

 その手にはいつだったか別の兵士に吹き鳴らされたのと同じ呼び笛が握られている。確定的に疑われてはいないが、警戒されているのはその足取りをみても明らかだろう。ザハリアーシュが早々と手を回したか、元々街中にも捕縛網が敷かれていたのかは定かではないが――


「ちょうど良い、我々もこの後は大広場方面に巡回の足を向ける予定でしてな、宜しければ一緒にご案内を」


 まずい。どこか危険な流れだ。

 フーゴ曰く、黒衣の剣士の噂はかなり広まっているとのことだ。まさか剣を持つ一人歩きの者を片端から確認しているのだろうか。いくらなんでもそれは対象が多すぎるだろうが、宵闇の路地裏を彷徨う今のヤーヒムに不審がないかといえばそんなことはない。


「――お、これはまたなんと運の良い、新太守ナクラーダルの家の者があんな所に。我々のような平民ではなく、彼らに案内してもらいましょう……おおーい」


 中年兵士が手を上げて見遣るその先を振り返ると、兵士らしからぬバラバラの革鎧を着た一団が路地に姿を現したところだった。

 明らかに腕の立つ、妙に荒んだ目をした男達。彼らは中年兵士の声に一斉に顔を上げ、一瞬息を呑んですぐにこちらに足を向けてきた。


 ヤーヒムの中で激しく警鐘が鳴り響く。

 彼らは非常にきな臭い、あれは人殺しを何とも思わない者の目だ――ヤーヒムの脳裏にザハリアーシュが幹部を務めるという裏組織ゼフトの名前が木霊する。何よりこちらを見た時のあの間、あれはヤーヒムを見て何か気付くところがあった可能性が高い。彼らもかなりの強者だ。剣を下げたヤーヒムに一切の隙がないことを見抜き、そこに黒衣の剣士を重ねたのかもしれない。騎士の立ち振る舞いを意識したのが仇となったか――


 路地の幅は二メートルもない。

 後ろには中年兵士を先頭とした正規兵が三人、前からは路地を塞ぐようにゼフトの構成員らしき者達が近づいてくる。


「なっ!」


 ヤーヒムは唐突につむじ風のようにその身を反転させ、正規兵の間を一気にすり抜けた。


「くそ、逃げやがった!」

「おうこら、待ちやがれ!」


 背後から聞こえるのは即座に追跡に入る濁声と、ひと息置いてけたたましく鳴り響く呼び笛。ヤーヒムはロングコートを翻し、脇目もふらず薄闇の裏路地を突っ走った。


 これはやはり既に網が張られているということだろう。こんな裏路地にまでこれだけの人数を投入しているとは!

 この分だと街の正門にはもっと人数がいるに違いない。街に残る<ザヴジェルの刺剣>のことを考えると、出来るだけ騒ぎを大きくせずに街壁を超えて姿を消した方が良いのかもしれない。であれば――


 と、ヤーヒムの走る路地が唐突に終わり、どこかの大通りに飛び出した。眩しいほどの灯りに包まれたヤーヒムの目に、ずらりと並ぶ露店と通りを埋め尽くす人々の姿が飛び込んでくる。ラビリンス攻略の報せが行き渡ったのだろうか、既にお祭り騒ぎになっているようだ。


 ――ええい!


 そんな人々の間を、ヤーヒムは速度を落とさず豹のように駆け抜ける。

 持ち前の空間把握能力と文字どおり人外の反射神経を最大限に発揮し、人々が気付く頃にはもはや遥か彼方だ。背後で湧き起こる怒声はおそらく追手の面々。ヤーヒムのような人中疾駆は彼らには荷が重かったようだ。


 ヤーヒムは咄嗟に方向を変え、大通りをそのままひた走った。

 再び路地に入るよりこの方が追手を撒ける、そう判断したからだ。通りを埋め尽くす喧騒の隙間を切り裂くように走り抜け、追手をどんどん引き離していく。


 ――そろそろいいか。


 ヤーヒムは頃合いを見て速度を落とし、一般人に紛れて何食わぬ顔で歩き始めた。

 先ほど高位の騎士と間違われたのはこの人混みでも同様らしく、周囲の人々がヤーヒムを見て自然に道を譲ってくれる。お陰で更に追手との距離を広げられ――もう背後の怒声も一切聞こえない。周囲にはお祭り気分で浮かれる民衆ばかり、どうやら完全に撒くことに成功したようだ。


 ヤーヒムはフードをかぶり直し、雑踏の喧騒に紛れつつ最寄りの街壁を目指した。




  ◆  ◆  ◆




 ……ここも駄目か。


 街の端、ラビリンス攻略に湧く喧騒から離れた路地裏でヤーヒムは小さくため息を吐いた。

 窺う先は立ち並ぶ家々の奥に厳然とそびえる街壁。どの家の屋根より高く造られたその街壁の上には、魔法使いも交えた兵士達が五メートルほどの間隔を空けてびっちりと立哨している。


 突破できないことはない。

 場所を選べば屋根から飛び移ることも可能だし、ヴァンパイアならではの大技、短距離転移で街壁の上に出現することも可能だ。そうして外に飛び降りる――初めはその予定だった。


 だが、立哨する兵士達の数が尋常ではないし、彼らは本来の役割である外部の魔獣の監視をしているのではない。全員がこちらに背中を向けず、街の中に体を向けている。まるでヤーヒムを逃がさないよう厳命を受けているような――いや、街中の捕縛網にかけている人数といい、まさにそういうことなのだろう。街の太守もゼフトも本気だということだ。


 もし強引に街壁を越えようとした場合、突破は不可能ではないが確実に見つかって騒ぎになる。

 先程ただでさえザハリアーシュに疑惑を持たれてしまったのだ。街に残るアマーリエ達のことを考えると、出来ればこれ以上は姿を晒さずに人知れず姿を消しておきたい。


 ……となると。


 ヤーヒムは路地の反対側へと移動し、今度は大通りの先で口を開ける街の正門の様子を窺った。

 兵士の数は多い。門自体は半分ほど開かれていて、夜にもかかわらず外部に出ようとする者達で混雑している。ラビリンス攻略の報せを外部に届けようとする者達なのかもしれないが、そのお陰で【霧化】してすり抜けるのも一抹の不安があった。


 【霧化】は以前リーディアに検証してもらったとおり、万が一誰かとヤーヒムの実体が重なれば、その相手に何ともいえない違和感を走らせてしまうのだ。叫び声でも上げられてしまうと面倒なことになり得る。【霧化】していてもヤーヒムの存在を感知できる者もいるというのは先ほどザハリアーシュに思い知らされたばかり。そして、全ての物体を透過する【霧化】状態も無敵ではない。そこには無視できない弱点があるのだ。


 ……で、あれば。


 深々とかぶったフードの奥で、ヤーヒムの透きとおったアイスブルーの瞳が鋭く一点を見詰める。

 半分ほど開かれた正門、ごった返す人々――そしてその向こうにちらりと垣間見える、静謐な月明りを浴びた外の街道と黒々した森。


 そう。

 ヴァンパイアのお家芸である短距離転移は視線が通ればそこに転移できる。

 ヤーヒムは静かに呼吸を整えつつ、正門の混雑を念入りに確認した。そして――



 路地裏からヤーヒムの姿が煙のように掻き消えた。



 そして次の瞬間。

 正門の外に広がる森の暗がりに、竜皮のロングコートをまとったヴァンパイアが忽然と姿を現した。


 音もなくその身を屈め、木立の奥から正門の様子を確かめるヤーヒム。

 気付かれはしなかったようだ。月明りを浴びる街の外は静けさに包まれている。視線の先、門の中では兵士達が相変わらず厳しい検問を続けており、ようやくそれを抜けた者が一人ずつ馬を駆って三方へ伸びる街道に散らばっていく。ヤーヒムが目指すのは北だ。しばらくはこのまま街道沿いの森の中を移動した方がいいだろう。そうと決まれば――




 ――――ッ!




 背後から唐突に襲いかかってきた剣閃をヤーヒムは紙一重で避けた。

 続けざまのもう一閃をその場から飛び退いて躱すヤーヒム。


「ここに転移してくるのはこちらの計算どおりですよ!」


 ザハリアーシュ!

 ヤーヒムが相手を認識する間にも二メートル半を越える巨体が獰猛に追撃してくる。漆黒の鎖帷子が微かな月明りに煌めき、巨大な両手剣が体勢を整えきれていないヤーヒムに幾度も容赦なく振るわれる。ニヤリと嗤っている歪んだ口元。

 ヤーヒムは咄嗟に地面を転がり、途方もない膂力が込められた一撃が地面を強打した。深々と刺さった大剣は止まらずその勢いのまま地中で鋭く弧を描き、大地を抉るように地面に転がったヤーヒムへと跳ね上げられ――だがヤーヒムは既にそこにはいなかった。



「…………逃がすつもりはないということか」



 奇襲してきた巨人の背後を取り、木立の中に悠然と立つヤーヒム。

 背中の剣には手も触れず、その代わりに指先から蒼白光を放つ必殺のヴァンパイアネイルがするすると伸びていく。


「くくく、さすがに簡単には殺れませんか」

 ザハリアーシュが大剣を肩に載せ、ゆっくりと振り返った。

「何故かあなたは騒ぎを嫌うようですからねえ。街壁の上に兵を並べ、正門から外が見えるようにしておく――そうすれば釣れるとは思っていましたよ」


 ザハリアーシュの含み笑いに、周囲の木の上からばらばらと人影が飛び降りてきた。

 その数、およそ二十。

 どの影も物音を立てずに地面に降り立ち、かなりの使い手であることが分かる。


 ――ゼフト、か。


 ヤーヒムは僅かに腰を落とし、油断なく五感を研ぎ澄ました。


「惜しむらくは、門の開きをもう少し狭くしておくべきでしたねえ。少ぉしだけ位置がずれて、一番効果的な初撃が躱されてしまいましたよ」


 何が可笑しいのか、ザハリアーシュは歪んだ含み笑いを止めない。


 この男――ヤーヒムはそのアイスブルーの瞳で貫くように目の前の巨人を見上げた。

 戦いに狂気じみた愉悦を覚える、まるで鬼人族のような振舞い……まさか巨人族と鬼人族のハーフか。どちらもヴァンパイア以上に希少種だった筈だが、これはまた厄介な…………。


「まあそれでも、こうして正面から戦えるのですから良しとしましょうか。名高き転移ももう打ち止めでしょう、さあて――――」


 その瞬間、ザハリアーシュの巨体がブレた。

 右だ!

 ヤーヒムが抜かりなく研ぎ澄ましていた【ゾーン】が相手の動きを正確に読み取る。ヤーヒムは素早く後方へ跳び、そこにあった木の幹を蹴ってそのまま真横に跳躍の向きを変えた。蒼白の閃光が月明り零れる夜の森に複数の線を描き、その軌道上にいた二つの影が崩れ落ちる。


「ぐふっ」

「…………!」


 この場にいる影達は暗殺者集団なのだろうか、致命傷を受けても悲鳴を上げない。

 が、だからと言ってヤーヒムが手を緩める筈もなく、相手もそんなつもりはない。間髪入れずに激しい乱戦が始まった。ヤーヒムと影達が入り乱れ、五本二対の閃光が所狭しと夜の森に弧を描いて、ザハリアーシュから離れた位置にいる影から次々と崩れ落ちていく。


「く……この、ちょこまかとッ!」


 ザハリアーシュが猛然とヤーヒムを追い、残りの影達も一斉に攻撃を仕掛けてくるが、ヤーヒムは【ゾーン】によりその全てを見切っている。全方位から襲いくる斬撃を直前で躱し、同士討ちを誘発させ、隙あらば蒼く輝くヴァンパイアネイルで剣ごと相手を切り裂く。

 が、けしてザハリアーシュの間合いには入らない。その大剣はヤーヒムをもってしても危険すぎるのだ。


「ッ!」


 と、見事な連携を保ってヤーヒムを包囲していたゼフトの囲みが一方だけ僅かに崩れた。

 音のない激しい乱戦の中、その崩れが出来るのは二度目だ。今回は躊躇わずにその僅かな間隙に飛び込むヤーヒム。相手には結構な痛手を与えた。別に全員を返り討ちにする必要もない。今、彼がしなければならないことはひとつだけだ。ヤーヒムは人外の瞬発力で一瞬のうちに囲みを抜け出し、無限に広がる夜の森へとその身を――



 その瞬間、森へ逃亡を図るヤーヒムを待ち伏せしていたかのように大量の魔法が夜の森から放たれた。



 待ち伏せ攻撃だ。

 橙に輝く炎弾が、唸りを上げる氷礫が、不可視の風刃が、さしものヴァンパイアにも躱しきれないタイミングで襲いかかってくる。


 が。


 それをまるで予期していたかのように、ヤーヒムは華麗に飛び上がった。

 そして木の上に潜んでいた魔法使い達を次々とその五本二対の蒼光の餌食にしていく。そう、今後を考えると、ヴァンパイアの鬼門である魔法使いだけは今この場で全て潰しておきたかったのだ。


 囲みの崩れは誘いの罠。

 ヤーヒムの【ゾーン】には、木に潜み続けていた魔法使い達の持つマジックポーチの存在がくっきりと浮かび上がっている。そう、戦いを生業とする者は大抵がマジックポーチを身に付けている。負傷時のポーションしかり、予備の武器しかり。つまり【ゾーン】で周囲を常に警戒していれば、相手がどんなに巧妙に身を隠していても不審なマジックポーチの存在で罠や伏兵の存在が丸わかりなのだ。

 一度目の誘いには咄嗟に反応できなかったヤーヒムだったが、二度目は迷わず飛び込んだ。


 どんな魔法使いでも魔法を放った後には一瞬の隙が出る。溜めに溜め、待ち伏せの一斉攻撃をした後なら尚更だ。

 ヤーヒムは敢えて彼らに魔法を撃たせることにより、こうして反撃を受けることなく瞬く間に魔法使いを屠れる状況を作り出したのだ。



「ば、馬鹿な……」



 ザハリアーシュの含み笑いが消えている。

 化け物め……自らの仕掛けた罠がこうもあっさり喰い破られ、さすがのザハリアーシュの足も止まった。眼前には、なす術もなく斬り捨てられていく子飼いの魔法使い達の姿。彼らは自身直属の精鋭暗殺部隊、それぞれの腕前は宮廷魔術師に匹敵するものではなかったか。


「がはッ!」


 最後の魔法使いが潜んでいた木から転げ落ちた。

 当面の獲物を屠り尽くしたヤーヒムは振り返りもせず、そのまま夜の森へと駆け去っていく。


 それはまるで、昔話にある夜の支配者(ヴァンパイア)そのものの姿だった。




次話『街道の惨事』

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