第百二章 内臓を違法ルートで入手する
陽子は病院を出てから丸東組に連絡して、修や佳子の手帳を透視で確認した時に、記述していた丸西組の組員を拉致したか確認した。
先程拉致したという事でしたので陽子は、「そいつの内臓を貰うから乱暴するな!裸にして、地下室のベッドにうつ伏せにして縛り付けておけ!」と指示した。
陽子は、その組員は以前病院で検査した事があり、血液型などが栗垣看護師と同じだと解っていた為に、その組員の内臓を摘出して栗垣に移植する事にした。
丸西組の組員は裸にされて組事務所奥の地下室にあるベッドに縛り付けられて、丸東組の組員から、「今から姉さんが、お前の体を自由にしたいと仰っておられます。楽しみに待っていろ!」と脅された。
丸西組の組員は何をされるのか心配していると、そこへ陽子が入って来た。
組員は全員、「姉さん!」と総立ちになった。
陽子は、「病院以外であなたに会うのは始めてですね。あなたには一度警告しておいた筈ですよね!病院内で暴れると痛い目にあわすわよってね。あの時あなたは、“できるものならやってみろ!”って言っていましたよね。それじゃ痛い目にあわせましょうか?あなたの内臓を摘出します。」と宣言して手術の準備を始めた。
丸西組の組員は、「何故、東城先生が丸東組にいるのだ!わっ!東城先生!冗談は辞めろ!丸東組の組員に脅されて詰まらない事をすれば後で後悔するぞ!」と慌てていた。
丸東組の組員が、「姉さんになんて口の聞き方するのだ!今、この方は丸東組の次期組長だぞ!」と丸西組の組員をどつきました。
メスを持っている陽子に、「嘘だろ!東城先生が、こんな怖いやくざの幹部である筈がない!東城先生!本気か!麻酔は?」と慌てて抵抗していた。
陽子は、「そんなもの、ある訳ないじゃないの。それに麻酔をすれば、痛い目にあえないでしょう!私が組員に脅されたのではなく、私が組員に指示したのよ!あなたを拉致しなさいってね。警察もまさか、私がやくざの幹部だとも知らずに油断していた為に、あなたの事が解りました。イクワヨ!皆!確り押さえて!」と指示した。
切開を始めると激痛に、「ギャー、痛~」と叫び、本当に内蔵を摘出されると実感した丸西組の組員は、本気で暴れたので陽子は、「仕方ないわね。先に両手両足の神経を切断します。」と太ももと上腕部を切開して、神経を切断した。
陽子は、「これで少しは大人しくなったでしょう。逆らえば、更に改造するわよ。」と脅迫しながら切開を再開した。
丸西組の組員は、「ギャー、やめろ!」と抵抗しようとしたが、両手両足が全く動かず、体を確りと固定されていて、更に丸東組の組員に押さえ付けられていたのでビクともしませんでした。
陽子は内臓摘出手術をしながら、「あの病室を狙撃しろって誰に指示されたの?私あの時、あの病室にいたのよ!もう少しであなたに殺される所だったわ。」と聞いた。
丸西組の組員は、「ヒエー、助けてくれー、鬼、人殺しー」ともがき苦しんでいた。
陽子は、「白状しないと、必要以上に大きく切開して、もっと痛くするわよ。それでも白状しなければ、摘出手術と関係ない場所も深く切開するわよ。痛くする方法は他にも沢山あるから、白状しないと気が狂うわよ。」と雑談していると、摘出は終了した。
陽子は組員に、「今、此奴が白状した丸西組の幹部を拉致しなさい!それとお前らも此奴に聞きたい事があったら聞いたら良いよ。白状させる為に、大きく切開して、更に関係ない場所も切開して縫合していません。数か所切開したから、そこから手を入れると、胃でも腸でも全ての内臓まで手が届くわよ。でも死んだら死体は始末しないでね。死体の始末は医師の私に任せてね。」と死体を下手に始末しないように伝えた。
丸東組の組員は、切開した傷を大きく開いて、「本当だ。心臓が動いているのが見えるぜ。おい、次の麻薬取引の場所と時間を白状しろ。それと組長の自宅も白状しろ。白状しなければ、腸を引っ張り出すぞ。」などと、丸西組の事を色々聞いていた。
陽子は、そんな様子を横目でみながら、摘出した内臓を持って病院に戻り、明け方から緊急手術が開始された。
修と佳子は陽子の様子も心配でしたので、出勤前に病院に寄った。その時はまだ手術中で、山本看護師から事情を聞いて、「西垣教授は、そんなに強い力で殴ったのか!」と驚いていた。
山本看護師から、「お願い!東城先生を逮捕しないで!」と迫られた。
更に看護師長が、「確かに数時間で、しかも真夜中に、栗垣さんと血液型などが適合する内臓を入手する事は不可能です。東城先生の仰るように違法ルートに間違いないでしょう。しかし、それは人命を救う為です。罪にはならないですよね!」と質問されて修が返事に困っていた。
佳子が、「それは私達には決められません。三権分立と言って、国家権力を立法権、司法権および行政権に分ける事により、独裁政治などにならないようにしています。警察には強制力がありますので、法律に従い犯罪者の逮捕を行いますが、有罪か無罪かの判断は、私達には行えないのです。裁判所が判断します。東城先生には裁判を受けて頂く事になるでしょう。」と説明した。
看護師長が、「有罪かどうかの判決を下すのは裁判所かもしれませんが、逮捕するかどうかを決めるのは警察なのでしょう?」と確認した。
佳子は、「いいえ、逮捕するかどうかを決めるのも裁判所です。私達は捜査の結果、逮捕する必要があると判断した場合には、裁判所に逮捕状を請求します。実際逮捕するのは強制力のある警察ですが、捜査は警察以外に検察庁が行う場合もあります。たとえ私達が見逃しても、いずれ発覚します。」と返答した。
清水看護師は、「嘘!それまでは逮捕されて留置されるの?その間、東城先生にしか手術できない患者はどうするのよ!死んじゃうでしょう!」と興奮しながら修の胸倉を掴んで怒った。
修は、「落ち着いて下さい。逮捕するのは逃亡の恐れがある犯罪者だけです。陽子は逮捕も留置もする必要はありません。」と首を絞められて真っ赤な顔で説明した。
清水看護師は手を離して、「御免なさい。大丈夫ですか?」と謝った。
修は、「大丈夫じゃないよ、良くいうよ、自分で首を締めておいて。」と咳込んでいた。
佳子がその様子を見て、「この様子だと、もし東城先生が有罪になれば、修は殺されるわね。」などと雑談していた。
しばらくすると緊急手術が終わり、陽子が病室に様子を見に来た。
陽子が病室から出ると、修と佳子が来て、修が、「今日は刑事として陽子に聞きたい事があります。看護師から聞いたが、移植内臓の違法ルートとは何や?臓器売買に陽子は関係しているのか?」と職務質問した。
陽子は、「ね、ね、ね、こんな時って警察手帳を提示して、“署までご同行願います。”っていうのじゃないの?手錠かけてパトカーで連行しないの?本物の手錠を見た事ないの。見せて。」と興奮していた。
陽子を心配して、近くで様子をみていた山本看護師が、「東城先生!冗談は辞めて下さい。東城先生が警察へ連行されると、朝の診察はどうされるのですか?今日は心臓血管外科の専門医に、手術不可能で助からないと診断された患者が、東城先生を頼って来ます。私達は、その患者に何と説明すれば良いのですか?それに午後からの手術は、内臓外科の専門医が手術不可能だと判断した患者で、東城先生でないと手術は不可能です。その患者や家族に、“東城先生は外出しているので死んで下さい。”と説明するのですか?兎に角、東城先生が病院にいないと死亡する患者が増えます。」と陽子が連行されると死亡患者が出ると修や佳子に圧力を掛けて連行されないようにしていた。
陽子は、「しゃーないわね、修ちゃん、何でこんなタイミングの悪い時に来るのよ。一度修ちゃんに連行されてみたかったのに・・で、何だっけ?臓器売買の事?私はそれに関係していません。全く別ルートです。だって考えれば解るでしょう?臓器売買って事は、値段交渉や受け渡し場所などの打ち合せが必要です。そして不可欠なのは、血液型などの一致です。値段は最悪、後で交渉する事にしても、血液型などの検査や受け渡し場所の交渉が必要です。あんなに早く入手できないでしょう?それは、先日修ちゃんに言った、私のもう一つの顔の関係です。その顔で以前お姉さまとお会いし、話もしましたが、未だ思い出せませんか?先日約束したように、近い日にその顔で修ちゃんの前に現れるので驚かないでね。」と説明した。
山本看護師が、陽子を助けようとして、少し時間が早いですが、「東城先生、診察の時間です。」と修達と陽子の間に入った。
陽子は、「その時に話をするわね。それじゃね。」と診察室へ向かいながら、“無駄話して何とか誤魔化した。”と思っていた。
佳子は修から陽子にプロポーズした話を聞いてなかった為に、修は先日の話をして、「姉ちゃんは、その顔の陽子と会っているのだろう?どんな顔だった?」と確認した。
佳子は、「東城先生と、どこでお会いしたのか解らないわ。でも内臓の違法ルートの関係だと仰っていたので、捜査の時かもしれないけど、そんな捜査はしてないわよ。臓器売買の他にそんなルートがあるとは知らなかったから。先日、私とサイボーグの話をしたと言ったのよね?そんな覚えはないわよ。」と二人で、もう一つの顔ってなんだろうと雑談しながら、警察に出勤した。
娼婦の証言内容は手掛かりにならないと修から聞いていたが、丸東組が拉致していた為に、警察が根掘り葉掘り事情を聞くと、丸東組に都合が悪い証言も出て来る可能性もあった。
陽子が警察の予定表や修や佳子の手帳を透視で確認して、警察が病院へ来る日時に検査などの予定を入れて、話をできないようにしていた。
警察は捜査の一環として事情を聞く必要があった為に、主治医の陽子に、捜査員が病院を訪問する日時を指定した。
陽子は娼婦の容態も安定している為に、暗示に掛かりやすくなる薬を点滴に混入させて娼婦と雑談していた。
陽子は、「今日は、あなたの話を聞きに刑事が来ます。落ち着いて、ゆっくりと間違いのないように話をするのよ。」と証言の重要性を認識させて、暗示にかかりやすいように緊張させた。
その後、陽子は窓際に行き、「良い天気ね。」等と雑談しながら、ヤクザの事に詳しくなければ、どこの組が拉致したのか解らないわよね。などと丸東組とは無関係だと暗示を与えた。
陽子の暗示で、山本看護師と清水看護師が立会って行った事情聴取で、娼婦は修や佳子達刑事の質問に対して、「東城先生から、私はまだ興奮するとよくないので、落ち着いてゆっくりと証言するようにと忠告されましたので。」と前置きして深呼吸した後、拉致したのは、丸西組か丸東組か解らないと証言した。
関係者の努力も実り、患者は快復し裁判で証言して、黒幕の政府高官も逮捕して、佳子が担当していた事件は解決した。しかし彼女を拉致したのは、丸東組だという証拠はなく、娼婦から摘出した弾丸は、陽子が摩り替えたとも知らずに、弾丸からは丸西組が使っていたライフルに辿り着いた。
次回投稿予定日は、5月17日です。