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第百一章 陽子、入院する

陽子と患者の父親との話が終わっても、西垣教授は、まだ頭を抱えてしゃがみ込んでいた。

西垣教授に散々馬鹿にされた看護師達が西垣教授に、「東北は、そんなに良い所なのですか?良かったですね。大好きな東北へ行けて。」等と、皆で今迄の仕返しをしていた。

プライドの高い西垣教授が、突然立ち上がり、「五月蝿い!黙れ!」と怒鳴りながら、握りこぶしを振り上げて、たまたま近くにいた栗垣看護師を、力いっぱい殴ろうとした。

殴られる直前に陽子が、「辞めて!」と栗垣看護師を庇った為に、陽子が力いっぱい殴られて、栗垣看護師と二人共倒れて、テレジア星人の血を引く陽子の数百キロの体重が、栗垣看護師にかかった。

自分の体重が、数百キロもあるとは知らない陽子は、栗垣看護師に、それだけのダメージがあったとは気付かず、透視で確認もしませんでした。

健康診断で体重測定の時に、陽子は自分の体重は六十kg程だと思っていた為に、無意識に、テレジア星人の能力で、体を半分宙に浮かしたようにしていた事は、陽子自身気付いていませんでした。

修や看護師達が陽子に駆け寄り、「東城先生!大丈夫ですか?」と心配していた。

清水看護師が修に、「刑事さん!彼奴をなんとかして!たまに内科の薬品が盗難されますが、以前も東城先生の緊急手術の頃に、盗難されました。以前も西垣教授の患者を東城先生が診察した頃に薬品盗難事件がありました。東城先生に緊急手術されて、その腹癒せに盗んだの?更に殴るなんて誤診したのは誰よ!逆恨みじゃないの!薬品の保管場所など、内部の人間しか知らない事を知っている為に、内部犯の可能性が高いのよ。」と興奮して西垣教授を睨んだ。

西垣教授は、「大学病院には規則があります。その規則を破ったのは・・・」と反論していると更に清水看護師は興奮して、「規則を破らなければ、あの患者は死んでいたじゃないの!規則と人命とどちらが大切なのよ!私達は、どんな事をしても患者の命を守らなければならないのよ!」とブチ切れた。

修と佳子は西垣教授に、「暴行傷害の現行犯で逮捕します。薬品盗難についても取り調べますのでそのつもりで。」と逮捕理由を告げて手錠を掛けた。

西垣教授は、「知らん、私は薬品盗難など知らんぞ。第一、何故私が薬品を盗難しなければならないのだ?」と反論した。

修は、「それはこちらで調べます。話は署でゆっくりと聞かせて頂きます。」と返答して、本署に連絡して、担当刑事に引渡して、西垣教授は連行された。

薬品盗難は、陽子が丸東組の組員を治療する時に、外科で使用する薬品は芹沢外科医院で調達可能ですが、内科で使用する薬品は大学病院の内科から、陽子が透視力でスキをみて盗難していた事は誰も気付かず、今回のように、内科から正式な依頼がなくても内科に行くのはその為だとは誰も夢にも思っていませんでした。

陽子は薬品棚や鍵などには指紋がつかないように、医療用ゴム手袋をするなどして気を付けていましたが、それ以外の内科のナースステーション等には、陽子の指紋があっても不思議ではありませんでした。

更に、陽子が病院内で看護師の仕事もするのは、今回の娼婦のように証拠隠滅する場合、陽子が家族に連絡する為に、看護師に指示せずに直接陽子が娼婦の私物を調べて、その時に証拠を隠滅しても、誰も不信に思わないようにする為だとは誰も夢にも思っていませんでした。

西垣教授が薬品盗難容疑で連行された為に陽子は、“しばらく薬品盗難はしない方が良いかな。“と思っていた。

近くにいた外科医が起き上がろうとしていた陽子に、「東城先生、動かないで下さい!あなたも医師でしたら、あれだけ頭部を強打したあとどうなるのか説明しなくても解りますよね!師長!病室を用意して下さい。今日は二人とも病院に泊まって下さい。一日だけ入院して下さい。」と指示した。

陽子が、「何故、私があなたの指示に従わなければならないの?」と聞いた。

その外科医は、「今から、私は東城先生と栗垣看護師の主治医になります。患者は主治医の指示に従って下さい。」と返答した。

陽子は、「仕方ないわね。確かにあなたの指示は適切な指示ですので指示に従います。」と一日だけ入院する事にした。

その外科医は、「怖い患者さんですね。間違った指示すると苦情が出てきそうですね。」と笑っていた。

しかし個室は満床で、二人部屋が空いていた為に二人相部屋になった。

修は同室の栗垣看護師に聞こえないように小さな声で陽子にプロポーズした。

陽子は、「私も修ちゃんが好きです。しかし、私には外科医の顔の他に、もう一つ別の顔があります。お姉さまとは、その顔でお会いして話もしましたが、未だ思い出せないようですね。説明しても信じて貰えないと思うので、近い日に、そのもう一つの顔で修ちゃんに会います。それからこの話をしましょう。」と後で問題にならないように丸東組の幹部である事をはっきりさせてから結婚の話をしようとしていた。

修は、「解りました。明日また来るよ。」と伝えて佳子と帰った。

佳子と修は陽子の話をしながら帰っていた。

佳子は、「確かに芹沢外科医の噂話は私も聞いた事があります。本当に神の手を持っているような信じられない手術をしていたそうです。以前勤めていた関西病院では何か問題を起こしたらしいのですが、先程の話では、恐らく治療費の事でしょうね。それで芹沢外科医が退職後、関西病院は外科が看板でしたので傾き、焦った病院は無理な手術をして、数件続けて手術に失敗した事が原因で廃院になったと聞いています。しかし東城先生が、その外科医のお嬢様だったとは驚きました。」と雑談していた。

修は、「という事は、関西病院は、陽子のお母さん一人でもっていた事になりますね。芹沢外科医院ではなく、芹沢総合病院にしても、経営は成り立つのではないかな?」と陽子の母親は、凄い外科医だと感じた。

「それは無理ね。先程の話では、貧乏人には治療費の請求をしないので、路上生活者などの間に、治療費は無料だと噂が広まり、そんな患者が多く、現在のスタッフの給料を支払うので精一杯らしいじゃないの。病院をそんなに大きくすれば、スタッフも多くなるでしょう?そのスタッフの給料はどうするのよ。」と指摘した。

「ああ、そうか、小さな病院で細々するしかないのか。そんな名医がもったいないな。」ともっと病院を大きくすれば、もっと大勢の患者を救えるのにと残念がっていた。

「そのあたりの事情を、先程陽子さんに聞いたのよ。陽子さんの説明によれば、普通の患者さんは、治療費の取れない患者さんが多いらしいのよ。研修費でもっているらしいのよ。」と陽子から聞いた事を説明した。

「何?その研修費って。」

「専門医が手術不可能だと判断した患者を、その専門医が手術に必要なスタッフを連れて来て、そのスタッフを使って手術して、その時に、スタッフから研修費を貰うらしいのよ。金額は指定してなく、相手任せらしいので、余裕がある時もあるらしいけれども、ケチな専門医だと、本当に苦しいらしいのよ。その時に、廃院の危機になるらしいわよ。収入はそれだけだと言っても、過言ではないらしいのですが、主婦業なので収入がなくてもスタッフの給料さえ払えれば良いらしいのよ。手術設備は、先程病院で聞いたように寄付らしいわよ。」

「外科医院として収入がないのでしたら、芹沢研修センターにすれば良いのに。」と看板を変えればもっと経営が楽にならないかと思っていた。

「それだと患者さんが来ないでしょう。外科医院は、本当に人助けみたいなものらしいわよ。」

「外科医はボランティアでしているようなものなのですね。患者の父親が言っていたように、本当に素晴らしい外科医ですね。さすが陽子のお母様だ。」と感心していた。

「ハイハイ、その娘の陽子さんも、素晴らしい人だと言いたいのよね。」

「ところで姉ちゃんは陽子とどこで会ったの?先程陽子に聞いたら、その時、姉ちゃんとSF映画の話をしたと言っていたよ。」

「私は、SF映画なんか見ないわよ。」と考えていた。

「サイボーグの話だと言っていたよ。」とその内容で佳子が思い出さないか期待して確認した。

「だから知らないって言っているでしょう。陽子さんの勘違いじゃないの?」などと修と喋りながら帰宅した。

一方病院で陽子は、修が搬送した娼婦が入院して以来、色々とあったので、その夜は今迄の疲れから、熟睡してしまった。

隣のベッドでは、栗垣看護師が吐血して血文字で、“今、ナースコールすれば、東城先生を起こしてしまいます。東城先生が目覚めるまで私は頑張ります。その為に状態が悪くなっても、東城先生なら必ず助けてくれると信じています。”と書かれていて、栗垣看護師は意識不明になっていた。

ラウンドの山本看護師が気付いて、大騒ぎになった。

その騒ぎで陽子も気付いて、山本の聴診器を借りて診察したが、手遅れでした。

「手術室を手配します。」と病室から出て行こうとした清水の腕を、陽子は捕まえて、泣きながら首を横に振った。

清水は、「えっ?嘘!何で!東城先生、何とかならないの?まだ心臓は動いています。栗垣さんを助けて!」と泣きながら、その場にしゃがみ込んだ。

陽子は、「肋骨が折れて、内臓に突き刺さっています。助けるには内臓移植しかありませんが、今から手配していては間に合いません。しかし違法ルートなら直ぐに手に入る事もあります。私は修ちゃんに逮捕される事になっても、私を信じてくれた栗垣看護師を必ず助けます。それまで栗垣さんの事をお願いします。」と移植用の内臓を正規ルートで手配している時間がないと判断して病院を出た。

清水看護師が、「内臓の違法ルートを知っているだなんて、さすが東城先生ね。人命を救う為に違法ルートに手を出しても罪にならないわよね。警察に知られたら、私達が東城先生を弁護しましょう。」と看護師達で陽子の事を心配していた。


次回投稿予定日は、5月14日です。

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