第百二十三章 陽子の説明
陽子は、「私の声が解らないなんて修ちゃんも冷たいのね。二人共、まだ息切れしているの?少し落ち着いてから話をしますか?」と少し落ち着いてから話し合おうとしていた。
佳子は、「いいえ、大丈夫です。で、私達の質問に答えて!どういう事なの?」と陽子の事が気になり休憩どころではなく、少しでも早く陽子の説明を聞こうとしていた。
陽子は、「先日、言ったでしょう?これが私のもう一つの顔よ。佳子さん、これで以前私とどこで会ったのか思い出しましたか?サイボーグの話などしてないと言っていましたが、佳子さんが私をサイボーグだと言ったのよ。」と最近の事から少しずつ説明しようとしていた。
佳子が、「そんな事はどうでも良いわ。それより修が言ったように、人命を大切にしている陽子さんが、何故凶悪な丸東組の幹部で人身売買グループの黒幕なのよ!人命を大切にしているのは嘘で、只のパフォーマンスなの?」と一番気になる事をズバリ聞いた。
陽子は、「いいえ、私は人命を大切にしているから人身売買しているのよ。」と返答した。
佳子は、「人命を大切にする事と人身売買とどういう関係があるのよ。」とその関連が理解できませんでした。
陽子は、「治安の悪い海外に拷問組織という犯罪組織がある事は聞いた事があると思いますが、拉致されて競りにかけられている人を私が競り落として買い取らなければ、拷問されて観客が拍手しながら見ている前で苦しみながら死んでいくのよ。全世界から来た大富豪が競り落として、自分の好きなようにするのよ。」とその関連について説明した。
佳子は、「拷問組織は私も噂で聞いた事があります。噂ではなく本当にあったのね。人命を大切にしている東城先生の事は良く解りますが、日本で人身売買は犯罪行為になります。」と説得した。
陽子は、「人身売買は日本ではなく海外でします。しかし、日本も外国もないわよ。私は人が死んで行くのを、黙って見ていられないわ。彼女達を日本に連れて帰らなければ殺されるのよ!男性は殺人ショーと言って、心臓を刺されたり頚動脈を切断されたり電気ドリルで頭に穴を開けられたりする為に直に死にますが、女性、特に若い女性は嬲り殺しで、麻酔もなく生体解剖、特に性器や排泄器官や乳房を中心に解剖されたり、電気のこぎりやペンチを使って体をバラバラにされたりして、嬲り殺しで見てられないのよ。その他、電気拷問や針や酸などもあり、何でもあるのよ。大富豪は男性が多いからなのだけれども、女性の大富豪がいれば男性も性器や排泄器官を解剖や拷問される事もあります。佳子さん、犯罪者が一般人に銃を向けて佳子さんに金銭を要求すれば、佳子さんは、銃を向けられた一般人に、“金銭を渡す事は犯罪行為なので死んで下さい。”と平気で言えるの?私は犯罪行為になっても、人命を救う為だったら何でもするわよ。」と説明した。
佳子は、「別に金銭を渡す事は寄付と同じで、犯罪行為になりませんが、それを強要する事は問題ですね。私は日本での話をしています。外国の事はその国の政府や警察に任せるべきよ。私達が下手に手を出せば国際問題になるわよ。」と警告した。
陽子は、「その国では、政府に依頼しても警察に任すだけです。しかし裁判所が機能してなくて、警察が凶悪犯を逮捕しても直に釈放されます。凶悪犯を逮捕すれば逆に仕返しされるので、警察も見て見ぬふりをしています。政府は、その他にも色々と課題を抱えていてそこまで手が回らないようです。その国の警察では、どうにもならないから私がやっているのでしょう?誰かが何とかするだろうだなんて考えていると、その間に何人の人が殺されると思うのよ。」と反論した。
佳子は、「その人を助けてその場で開放しても、再び拉致されて見世物にされて殺されるだけだから無駄じゃないの?陽子さんの自己満足じゃないの?」と確認した。
陽子は、「そうよ。だから先程も説明したように日本に連れて来るのよ。しかし、何の知識も経験もなく、言葉も通じない彼女らに仕事はないのよ。風俗嬢ぐらいしかできないのよ。競り落とした金銭を回収しなければ、その後が続かないのよ。」と説明した。
佳子は、「日本に連れて来ると言っても、パスポートなしでどうやって連れて来るのよ。」と不思議そうでした。
陽子は、「偽造パスポートを作る事もあるし、密輸船に乗せる事もあれば木箱に入れて貨物として送る方法もあるわよ。その他にも日本に連れて来る方法は色々とあるわよ。人命を救う為だったら、何でもすると言ったでしょう。」と返答した。
佳子は、「全世界の大富豪が競り落とすと先程説明していましたが、それだと半端な額ではなく高額なのではないですか?丸東組だけではできないでしょう?バックに誰かスポンサーがいるのですか?そのお金はどこから入手しているのですか?」と確認した。
陽子は、「さすが佳子さん、鋭いわね。佳子さんの仰るとおりです。私達は詐欺師数人と話をつけて、犯罪がらみのお金を騙し取っています。犯罪がらみなので警察に届ける事は殆どありませんが、やくざ者などが詐欺師にリベンジする事がある為に、私達丸東組が詐欺師のバックについています。先月、丸東組と銀竜会が争っていた事は刑事の佳子さんでしたらご存知だと思いますが、原因は銀竜会が麻薬の取引で入手したお金を丸東組が詐欺師を使って横取りしたからよ。」と説明した。
佳子が、「日本国内でやくざ同士が争えば一般人に被害が及ぶ事も考えられる為に辞めてほしいわね。」と止めた。
陽子は、「自分達さえ良ければ外国人は死んでも関係ないの?私もできる限り一般人には被害が及ばないように配慮しています。万が一、被害が出た時には、芹沢外科医院にて無料で治療しています。」とそれなりに配慮しているので止めるつもりはないようでした。
修が、「そう言えば、やくざ同士の抗争に巻き込まれて負傷した一般人が、芹沢外科医院に搬送されましたが、治療費の請求をされなかったと言っていました。そういう事か。」と納得していた。
佳子が、「陽子さん一人では助けられる人数は限られているのではないですか?国際機関に働きかけて組織的に動いた方が沢山の人を助けられるのではないですか?」と陽子の方法は間違っていると指摘した。
陽子は、「やくざに国際機関を動かせると思うの?私は学生の頃、国際協力隊に参加していた事もあった為に幹部に依頼しましたが、危険だと断られました。武装してない国際協力隊はそのような場所に行きませんし、寄付金も役人が横取りして届きません。そのような中で組織的に動こうと考えている間に、何人殺されますか?」と返答した。
佳子は、「やくざとしてではなく外科医として動けないのですか?」と聞いた。
陽子は、「私が勤務している大学の第二外科がそのような事を担当していますが、一大学の医学部だけではどうにもなりません。矢張り医師も人間なので、そのような地域へ行くのは嫌がります。先日佳子さんがお会いした霧島先生は、戦場やそのような地域へ嫌がりもせず積極的に出張しています。だから私も応援したくなり、以前その地域で霧島先生が刃物で脅されて拉致されそうになっている所に遭遇し、助けた事もありました。今の所、霧島先生が所属している世界出張医師団が組織的に動いています。」と返答した。
佳子は、「そうでしたか。先日霧島先生にお会いした時にその話を聞き、日本刀を使用していて、服装が丸東組の幹部に似ていましたので、まさかとは思いましたがそうでしたか。」と驚いていた。
その話を聞いた須藤は、「難しい問題で、どちらの味方をすれば良いのか解りません。たとえ自分が犯罪者になっても一人でも多くの人命を救おうとしている東城先生に感動しました。正しいかどうかは別にして、私に金銭的援助をさせて頂けませんか?」と依頼した。
陽子は、「あなたのように、地位も名誉もある人が、やくざに金銭的援助をしている事が判明すれば破滅ですよ。私は、そのようなあなたを見たくありません。」と断った。
須藤は、「それでしたら、その詐欺師を私の所へよこして下さい。私が騙されて、お金を渡します。」と説得した。
陽子は、「あなたのように、地位のある人が簡単に詐欺師に騙されると、あなたは社会的に信頼されなくなりますよ。」と返答した。
須藤は、「それでしたら、丸東組のポストへ現金を投げ込みます。」と陽子に協力しようとしていた。
陽子は、「解りました、そこまでいうのでしたら、私が海外から連れて来た、男女の仕事を斡旋して頂けませんか?今もいったように、彼らには何の知識も経験もありません。ただ若いだけです。学校も出てないので、日本人なら義務教育で習って当然知っているような事も知らず、計算などは簡単な足し算や引き算程度しかできず、掛け算や割り算は殆どの人が知りません。勿論言葉も通じません。特に男性を優先的にお願いします。」と頭の痛い問題を須藤に依頼した。
修が、「何故男性優先なのだ?」とその理由が理解できませんでした。
陽子は、「女性は最悪風俗嬢という方法がありますが、男性は何も仕事がないのよ。丸東組の組員になった人や、本人の希望により、人が嫌がる性器や排泄器官の学用患者や性転換手術をした人はいますけどね。それに男性だと風俗嬢を匿っていると誤解されないでしょう。あなたは私の母が苦労して病魔から救い出しました。その母の苦労を無駄にしないで下さい。あなたが元気に生活しているだけで母は嬉しいのです。変な事に巻込めば、私が母から叱られます。」と説明した。
須藤は、「解りました。そのような人を一時的に住まわせるアパートのような施設を買い取るか建設するか検討して、それと並行して就職先もあたってみます。準備が整えば東城先生にご連絡申し上げます。」と陽子に協力する事を約束した。
看護師長が、「刑事さん、私も先日、東城先生から話を聞いて驚きました。東城先生が日本へ連れてきた風俗嬢を不法就労で逮捕しないで下さい。逮捕すれば間違いなく強制送還されます。どういう意味か解りますよね?彼女らにとって、それは死を意味します。それも嬲り殺しです。お願いですから見て見ぬ振りをして下さい。」と依頼した。
次回投稿予定日は、8月13日です。