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第九十六章 修、陽子の腕から弾丸摘出する

佳子は振り返ったあと笑いながら、「今夜は、取り敢えず梅沢修刑事が病室に泊まり、病室の外は、二人の警察官に警備させます。」と携帯で上司と相談した結果を伝えた。

陽子は、「解りました。私は勤務明けですので帰りますが、何かあれば看護師に連絡して下さい。」と恥かしそうに伝えた。

そして、佳子は修の着替えや洗面用具を取りに一旦帰宅した。

その後、陽子は私服に着替えて病室に寄り、帰る事を修に伝えた。

修は先程看護師から、“手術は成功しても、東城先生が不在の時に急変した患者は、亡くなる事もあります。”と聞いた事を思い出した。

「帰っても寝るだけだろ?それだったら病室で寝ろよ。陽子だけが頼りなのだから。」等と帰らないように説得した。

陽子は、「それは規則でできないのよ。重症患者はこの患者以外にもいるのよ。一人の患者だけを特別扱いする事は禁止されているのでね。」と断った。

修は、「俺とお前の仲じゃないか。そう硬い事言わずに。」と陽子の腕を離さず強引に病室に連れ込んだ。

あまりも強引に頼まれた為に、陽子は、一番危険なクランケはこのクランケだから良いかと折れて、外科医としてではなく友達として病室に泊まり、その旨看護師に伝えた。

その強引さは、ひょっとしたらこの事件が父を殺害した犯人に繋がるかもしれないし、母が見付かるかもしれないと思っていた事から来ているとは夢にも思っていなかった。

修は、「何故そんな事を看護師に伝えるのだ?」と不思議そうでした。

陽子は、「外科医には緊急呼出しがあるでしょう?と説明すれば解るわよね。」と居場所は明確にしておく必要性を伝えた。

納得した修は、その後病室で陽子と雑談していた。

しばらく雑談すると陽子は、修の膝枕で眠った。

佳子が修の着替えや洗面用具を持って病室を訪れると、執刀医の東城外科医が私服で修の膝枕で眠っていた。

佳子は陽子を起こさないように小声で、「あれ?確か東城先生は、勤務明けですので帰ると仰っていたと思うけれども、あなた方は単なる知り合いではなく、こういう関係だったの?一度家へ連れて来て、ちゃんと紹介してね。将来の嫁さん候補なのでしょう?こんなに優秀な外科医でしたら私は大賛成ですよ。」等と雑談していた。

突然医療機器から警報音がしたので、佳子が娼婦の様子を確認すると、吐血していた為に、「修!東城先生起こして!」と慌てた。

陽子は透視力で確認しながら移動した為に、ベッドの横に立った時には状況を掴んでいて、直にナースコールし、「修ちゃん病室の外に出て!」と指示した。

佳子も出て行こうとしましたが、陽子は女性の佳子に、「佳子さんは、窓側の警備お願いします。」と狙撃を警戒していた。

ナースステーションでも重症患者のモニターをしていた為に、看護師も気付いて、準備して病室へ向かおうとしていた為に、ナースコールの電話を取り、「はい、こちらでも解っていますので直ぐ行きます。」と安心させようとしていた。

陽子は、「東城です。こちらに来る時に、今から言うものを持って来て下さい。」と白衣と聴診器と薬品数点と、念の為に、切開セットも準備させた。

触診や聴診器で診察している振りをして透視力で確認しながら、どうしようかと迷っていた。

その後陽子は、「オペ室を予約して移動している時間がありません。ここで切開して処置します。」と看護師達に伝えた。

切開しながら陽子は、「一時的に血が噴出しますが大丈夫ですので安心して下さい。」と血が噴き出しても慌てないように全員に伝えた。

暫くすると血が噴出し天井にまで届きましたが、直ぐに止まった。

陽子が処置中、突然狙撃されて花瓶に命中した。

陽子は、「皆伏せて!しゃがんだままで、カンシ下さい。」と処置を続けた。

佳子は、「東城先生も伏せて下さい。」と陽子の事を心配して忠告した。

陽子は、「今、処置を中断すれば、この患者は亡くなります。後少しです。それにあなた刑事でしたら、あの狙撃者を何とかして!」と忠告に応じませんでした。

佳子が、「今、無線で連絡したので、警察官が向かっています。撃たれるかもしれませんので伏せて下さい。」と説得した。

陽子は、「私は助かる命を見殺しにはできません。」と処置を続け、“本当は患者が亡くなり病室で手術した事が院長の耳に入ると、感染症の疑いで、私の立場が悪くなるからだけどね。”と思っていた。

しばらくすると、狙撃者の弾丸が佳子の右腕を貫通して、陽子の左腕の中で止まり、佳子と陽子が悲鳴とともに倒れた。

しゃがんでいた看護師が、「東城先生、大丈夫ですか?」と陽子に駆け寄った。

陽子は右手で左腕を押さえながら、「大丈夫です。後は縫合だけですので、別の外科医にお願いして下さい。そして全員この病室から出て下さい。」と指示した。

看護師や患者が病室から一斉に出て来た為に、心配して来ていた修の上司は、「狙撃されたと聞きましたが、誰も病室から出て来ないので不思議でしたが大丈夫ですか?」と心配そうに確認した。

看護師は、「女性の刑事さんと東城先生が撃たれました!」と二人を救いたくて告げた。

修と上司は驚きながら病室へ入り、修が陽子を抱え、上司が佳子を抱えて病室から出た。

修の上司は陽子に、「東城先生、大丈夫ですか?我々の警備が甘く、申し訳ございませんでした。」と謝った。

陽子は、狙撃されてから修の上司が来るのが早かったので、狙撃された時には既にこの病院に向かっていた可能性があると判断した。

「刑事さんも夜中まで大変ですね。何か用事があったのですか?」と確認した。

修の上司は、「梅沢君に連絡事項があり、病院内では携帯の電源を切っている可能性があり、更に書類を渡す必要がありましたので病院まで来ました。」と説明して修に向って、「梅沢君、刑事が順次受けている講習で、銃で撃たれた時の処置についての講習だけ抜けています。特に指定医はないので、外科医であれば良いので指導を受けて判子を貰って来るように。」と指示して書類を渡した。

陽子は銃で撃たれた今が実技に最適だと判断して、「修ちゃん、その書類見せて。」と右手は傷口を押さえていた為に血だらけなので、左手で書類を持って確認した。

陽子は書類確認後、「この書類では、メインは弾丸摘出についてですね。修ちゃん、今からしましょう。私が指導するので、私の腕から修ちゃんが弾丸を摘出するのよ。」と修に伝えた。

佳子は驚いて、「東城先生、それって左腕が動かなくなる可能性があるのではないですか?実技は人形を使って行って下さい。」と素人には無理だと判断して止めた。

陽子は、「その可能性は否定しませんが、私が指導するので大丈夫ですよ。それに修ちゃんを信じていますので。人形から弾丸を摘出できても、人体から弾丸を摘出できなければ意味ないですよ。弾丸摘出は、人形での実技は認めません。実技は、麻酔なしで私の腕から弾丸を摘出して!参考の為に皆さんも見ていて下さい。」と指示した。

佳子の腕と陽子の腕を比べて、貫通しているかどうかの判断方法を説明して、佳子と修の上司が見守る中、陽子が、「出血を抑える為に止血バンド、つまり腕を縛って。」とか、書籍を参考にしながら、「皮膚の下には角質があり・・」と説明していた。

一通り説明後、陽子の指導で修がメスで陽子の腕を切り始めた。

陽子は、「そんな切り方では弾丸まで届かないわよ。もっと深く切って!」などと指導する中、陽子の腕から、修が弾丸を摘出した。

その後看護師は陽子の指示で佳子と陽子の傷の手当てをした。

看護師が手当てする中、陽子は痛みに堪え苦しみながら、「修ちゃん、やればできるじゃないの。それでも心配だったら、修ちゃんが弾丸を摘出する立場になれば私に電話して。この弾丸は犯人の重要な手掛かりになるのでしょう?私は人命を軽視する人を許せません。その弾丸は修ちゃんに渡すので、必ず犯人を逮捕して!」と依頼した。

修も、「解った。必ず逮捕するから、警察を信じて任せて下さい。」と陽子の腕から摘出した弾丸を鑑識に渡した。

看護師が別の病室を用意したので、全員別の病室に移動して、看護師が病室を出る時に陽子も出て行こうとした。

修は、「陽子、何処に行くのだ?ここにいてくれないのか?」と病室を出ようとしていた為に、慌てて陽子の左腕を思わず掴んだ。

陽子は、「痛い、修ちゃんが私の腕をギザギザに切るから、痛いでしょう。」と怒った。

修は、「あっ!御免。でも僕は陽子と違い、生身の人間を切った事がないので。」と慌てて陽子の腕を離した。

陽子は、「悪かったわね。生身の人間を切る事に慣れていて!修ちゃんの手が震えていたのでギザギザになったのよ。でもトイレぐらい行かせてよ。」と病室から出て行った。

修の上司は、修に弾丸摘出までやらせた事に驚き、修の姉だから何か知っているかと思い確認した。

佳子は、「警部、二人は付き合っていて、かなり進んでいるみたいです。確かに弾丸摘出まで修にやらせるとは私も驚きましたが、修!今がチャンスよ、早くプロポーズしなさい!でないとあんな良い人、誰かに取られるわよ!」と勧めていると修が、「陽子、遅いな。大きい方かな?」と呟いた。

佳子は、「何であんたはそういう事しか考えられないのよ!腕を怪我しているので時間が掛かるのでしょう!それに、医師だから、清潔にしておかないといけないので丁寧に手を洗っているのだろうとは考えないの?」と怒った。

修は、「えっ、トイレに行って、いちいち手を洗うの?」と確認した。

佳子は驚いて、「えっ!?修!あんたトイレに行っても手を洗わないの?トイレにある洗面台は何のためにあると思っているのよ。飾りじゃないのよ。キッタナー、触らないでよ、東城先生に嫌われるわよ。まさか修!東城先生の手を握ってないでしょうね!先程、その手で切開したのよ!この証人の娼婦が感染症で死んだら修の責任よ!」と怒った。

修は、「陽子は切開する前に手を洗って、更に消毒していたので、関係ないでしょう。手は気が向いたら洗うよ。それに今迄だって、陽子は何も言わなかったよ。」と反論した。

佳子は、「当たり前でしょう!東城先生が男子トイレを覗く訳ないでしょう!単に知らなかっただけよ!気が向かなくても、必ず洗って!」と更に怒った。

佳子は、「私は今からナースステーションに行って、何故病室が、ばれたのかを確認して来るけれども、修!東城先生へのプロポーズは清潔にしてからにするのよ!今のままだと、“不潔な人は嫌い!”と断られるわよ!」と助言して、警部と病室を出た。

そこへ陽子が戻って来て、皆は帰宅したものだと思い、再び修の膝枕で眠った。


次回投稿予定日は、4月24日です。

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