第百二十二章 修、陽子の正体を知り驚く
佳子は、ある事件を捜査中に、大日本医療大学医学部第二外科の霧島外科医が、事件を解決する重要な証言をした為に事件が解決したので、佳子は警察の帰りに病院に立ち寄りお礼する事にした。
修が、「それだったら俺も陽子に会いに病院に寄るよ。」と二人で病院を訪れた。
修は看護師から、「東城先生は今日、お休みです。」と知らされて、がっくりしていた。
佳子は、「約束もせずに突然来るからよ。陽子さんが病院の警備会議の時に指摘したように、修はドジね。」と笑っていた。
修は、「看護師から、霧島外科医は出張が多いと聞いたが、姉ちゃんは会えたのかよ。」と佳子に馬鹿にされて自分はどうだったのか確認した。
佳子は、「ええ、誰かさんと違い、ちゃんと約束していたので会えたわよ。普通なら警察に通報しないような些細な事だけれども、これはひょっとして報道していた事件に関係あるかもしれないから、と通報してくれたので、そのお礼をして来たわよ。」と修のようにドジじゃないと伝えた。
看護師が、「霧島先生は、東城先生のような名医ではありませんが、人が嫌がるような戦場へも積極的に出張して命懸けで人命を救っています。その点では、東城先生に負けないくらい人命を大切にしています。刑事さんは彼氏がいないようなので紹介しましょうか?霧島先生は独身ですよ。」と勧めた。
修は、「それは良いじゃない、姉ちゃんも良い歳だからそろそろ考えなよ。」と佳子の肩を叩いて後押しした。
佳子は、「私は刑事で時間も不規則ですし外科医もそうでしょう?子供の面倒は誰がみるのよ。無理ね。」と結婚話をはぐらかした。
修が、「俺は刑事で陽子は外科医なのに、姉ちゃんは陽子と俺の事を歓迎していたじゃないか。」と反論した。
佳子は、「修は刑事として頼りないから、この際、総務とか経理などの警察事務に転属願いを提出すれば良いじゃないの。定期便のように毎日定時で帰れるわよ。給料が減っても生活費は陽子さんが魔法のステッキで稼いでくれるわよ。」と反論した。
修は、「人事だと思って何を言っているんだよ。姉ちゃんこそ、霧島外科医と結婚して結婚退職すれば良いじゃないか。生活費は霧島外科医が稼いでくれるよ。外科医でなくても男性には仕事があるから、どの道、子供の面倒は見られないよ。」と反論した。
修も陽子が休みなので諦めて帰る事にすると、たまたま帰りが一緒になった看護師の寺前さんと看護師長と陽子に娘を助けて貰った大富豪の須藤と帰宅する事になった。
看護師長は、「帰りに知人と待ち合わせしますので」と携帯で、“・・・今、病院を出た所ですから・・・”と誰かと話をしていた。
佳子は、「皆さん通勤は電車ですか?しかし、須藤さんは車ではないのですか?」と須藤も一緒に歩いていたので不思議そうでした。
須藤は、「いつもは車ですが、今朝車がパンクしていて、タクシーも捕まらず、パンク修理はいつも人に頼んでいて教習所以来、自分で交換した事がないので今日は電車で来ました。」と返答した。
佳子は、「そうですか、大変でしたね。お子様は病気のお子様だけですか?」と一人っ子なのか確認した。
須藤は、「いいえ、あの子の上に淑子という姉がいます。親の私がいうのも何ですが、いい娘です。」と娘の事を思い出しながら嬉しそうに返答した。
寺前看護師は、「一度病院に見舞いに来ていましたね。本当に控えめな大人しい良いお嬢さんですね。」と寺前さんも感心していた。
しかし淑子は、親や外出先ではブリッコしていましたが、その裏の顔は暴走族のリーダーである事は誰も知りませんでした。
暴走族のメンバーも、まさか女リーダーが大富豪の令嬢だとは知りませんでした。
須藤は、「私の事はそのくらいにして、看護師長にはお子さんが居られると聞きましたが、先程電話されていたのはお子さんに電話されたのですか?子供達だけですと、何かと心配ですね。」などと雑談しながら徒歩で帰宅していた。
途中まで一緒に帰っていると佳子が、「修、凄い大物がいる。」と言ったので修が、“えっ!”と思いながら佳子が見ている方を見ました。
修は、「あれは、丸東組実力No1と噂されている姉御ですよね。次期女組長の噂がある人身売買グループの黒幕と言われている謎の人物ですよね。」と修も確認して、寺前さんと看護師長と須藤に隠れるように指示した。
長い髪をコートの中に入れて、コートの襟をたて、厚化粧にサングラスをかけた姉御に二人で話掛けた。
佳子は警察手帳を提示し、「失礼ですが、丸東組の幹部の方ですね?少しお話を聞かせて頂けませんか?」と職務質問しようとしていた。
組員が殺気だちましたが姉御は、「また、あなたなの?懲りないわね。私を連行できたら話をしても良いですよ。」と笑った。
佳子と修が身構えると、その姉御は、「こいつらには手出しさせないから、あなた方二人がかりで、私一人を押さえられますか?手前達、後ろに下がって手出しするな!」と指示した。
佳子は修に、「以前言ったように、彼女は、女性とは思えない凄い力なので気を付けて!」と警告した。
組員は、「俺達が束になっても姐御には敵わないのに、刑事二人で敵うわけがないぜ。」と笑っていた。
修と佳子二人で飛び掛かったが、二人とも簡単に投げられた。
佳子が直ぐに起き上がり、飛び掛ると姉御は、「あなたは上半身が前に出過ぎですよ。だからお尻が高くなり重心も高くなるのよ。」と佳子のお尻を平手で叩き、足をかけられると簡単に転倒した。
修が飛び掛りましたが、その姉御は、「ただ、腰を低くすれば良いってもんじゃないわよ。目を閉じていれば私の動きが解らないでしょう。」と修も簡単に投げられた。
その姉御は、「二人とも弱っちいのね。そんなのでやくざの事務所へ行ったら殺されるわよ。」と忠告した。
佳子が再び飛び掛ろうとすると修が、「姉ちゃんは怪我しているので無理するなよ。」と修が飛び掛かかろうとした。
すると、その姉御は、「あなたは相棒を殺す気ですか?怪我をしている事が解ると集中的に狙われますよ。」と忠告した。
佳子は、「こんなのは怪我ではないわ!」と起きあがり、修と佳子で同時に飛び掛かったが、何度飛び掛かっても簡単に投げられて、二人とも息切れしてへたり込んでしまった。
姉御は、「どうしたの?二人共息切れしてそんなに汗かいて。もう終わりですか?」と聞いた。
佳子は、「ハア、ハア、あなたは何故息切れしないの?汗もかいてないようですね。ハア、ハア。でも前回は何も喋りませんでしたが、何故今回はそんなに色々と喋るの?」と苦しそうに聞いた。
姉御は、「ほら、二人とも落ち着いて!」と笑った。
すぐ横の道路で轢き逃げがあり、看護師長と寺前さんが手当てしようとしましたが二人共、「救急車を呼んでも間に合わない!」と寺前さんが手当てを続ける中、看護師長が、やくざの姉御と修達の間に入り、「すみません、少しの間だけ休戦して下さい。重症です。私達の手に負えません。お願いします、助けて下さい。」と姉御に助けを求めた。
修と佳子が、「そんな人物は役に立たない!」と忠告したが、看護師長は姉御を怪我人の所へ連れて行き、寺前さんに手当てを姉御と替わるように指示した。
寺前さんは、「何故?」と看護師長の真意が理解できませんでした。
その姉御の手当てを見て、慣れている事に驚いた寺前さんは、「あなたは商売柄、組員の手当てでもしているの?慣れているわね。」と予想外の出来事に言葉を失い、しばらく見ていた。
姉御の手当てがあまりにも専門的なので驚いて、「あなた若手の外科医より優秀ですね。血管縫合なんて、新米の外科医にはできませんよ。それに何故、そんな外科医が使う道具を持っているの?そんなあなたが何故やくざの幹部をしているの?」と不思議そうに聞いた。
姉御は、「さあ何故かしら。私が井上知子さんの同級生のやくざよ。応急手当はしたので、後は救急車で病院に運べば大丈夫ですよ。」と寺前さんに指示した。
寺前さんは、「そういえば、東城先生があなたの事を良く知っていると仰っていましたが、あなた、まさか外科医なの?」と聞いた。
その様子を見ていた佳子も、「あなた、本当に外科医なの?それが何故やくざをしているの?」と聞いた。
姉御は、「仕方ないでしょう。父がやくざだから。私は丸東組東城茂組長の娘です。あなたの言うように外科医でもあります。外科医の忠告は素直に聞くものよ。あなたの腎臓は弱っている。今なら手術や透析をしなくても投薬のみで治せます。あの時、私があなたにした注射は、ほんの一時的な効果しかないので帰ってゆっくりと寝なさいと指示した筈ですが、こんな無理をしていると、本当に透析か手術をしなければいけなくなりますよ。佳子さん。」と忠告した。
寺前さんと佳子と修は驚きながら、「えっ!?あなた、まさか???」と自分の耳を疑っていた。
姉御は、「その、まさかよ。」とサングラスを外して、このような展開になる事を予想して濡れタオルを持ってきていて、それで厚化粧を落とした。
寺前さんと佳子と修は驚いて、「嘘!東城先生!」と絶句した。
佳子が、「東城先生、あなたが丸東組で正体不明の大物幹部だったの?でも何故東城先生が?」と丸東組の大物幹部が予想外の人物だった為に絶句していた。
修も、「陽子!これは一体どういう事なのだ!人命を大切にしている陽子が何故丸東組の幹部なのだ!」と陽子の事が解らなくなった。
次回投稿予定日は、8月9日です。