第百二十章 佳子、拳銃不法所持者逮捕する
佳子は、その人を呼び止め警察手帳を提示して、その人に職務質問すると、その人は何とか誤魔化そうとしていたが、凄腕刑事の佳子には敵いませんでした。
佳子が拳銃を見付けたので修も驚いていた。
佳子は、「これは何?あなたは何者なの?」と質問した。
その人は、「私は只のOLです。」と返答した。
拳銃を調べていた修が、「実弾が三発装填されている!」と佳子に報告した。
佳子は、「只のOLが実弾が三発も装填されている拳銃を持っている訳ないでしょう!あなたをこのまま帰す事はできません。話は署でゆっくりと聞きます。二十時三十二分、銃刀法違反の現行犯で逮捕します。」と逮捕理由を告げて、その人に手錠を掛けて署に連絡してパトカーで連行した。
拳銃担当警部と佳子と修とで取り調べを行なった。
佳子は、「まず、あなたの名前は?」と聞くと、その人は、「芹沢マリです。」と返答した。
そうです、マリが銃を所持している事を、凄腕女刑事である梅沢佳子刑事に見付かり、逮捕されるハプニングがありました。
担当の警部が佳子達と銃の入手経路を、「この銃は、アメリカ軍が使用している銃ではないか!どうやって手に入れた!拳銃密売組織から買ったのか!売人の氏名を白状しろ!」と、マリに問い質した。
マリは、「拳銃は買っていないわよ。その拳銃は貰ったのよ。正確に言えば、借りている事になります。」と主張した。
警部は、「買った事を隠すのか?拾ったと言うよりましだな。だが、誰が何の為に、お前みたいな若い女性に拳銃を渡すのだ?嘘を吐いて誤魔化すつもりか?警察は、はい、そうですか。と納得して引き下がるとでも思ったか?警察はそんなに甘くないぞ。貰ったと言うのなら、誰から貰った!黒幕は誰だ!」と強い口調で聞いた。
マリは、「拾った事にした方が良かったの?それじゃ拾った事にします。」と笑っていた。
佳子は頭にきて、机を叩いて、「ふざけないで!警部の質問に答えて!黒幕は誰!」と再度聞いた。
マリは、「そんなに怒らないでよ。折角の美人が台無しよ。」と質問に答える様子がありませんでした。
佳子は、「大きなお世話よ!」とマリに掴み掛かった。
警部は、「梅沢刑事、落ち着いて下さい。」と佳子を押さえた。
マリは、「落ち着いて、良い子だから落ち着いてね。」と笑っていた。
佳子は、「あのね!先程から聞いていると、私達をからかっている?あなたは実弾が装填されていた拳銃を持っていたのよ!そっちがその気ならしばらく留置場で寝泊りする?」と脅した。
マリは、「噂の無料宿泊所?臭いメシってどんなメシなの?」と脅しが通用しませんでした。
佳子はプッツンと切れて、「もう完全に頭に来た。いい加減にしなさい!黒幕は誰!」と再度マリに掴みかかろうとしたので警部が止めた。
マリは、「そんなに怒ると血圧が上がるわよ。そんなにまでして黒幕の事を知りたいの?仕方ないわね。今から黒幕に連絡しましょうか?でも、あなた方の首が吹っ飛ぶかもしれませんよ。それで良ければ今からでも電話しますけれども黒幕と話をしますか?」と佳子は限界かな?と感じた。
佳子は警察を脅しているように聞こえたので、机を叩いて、「警察に、そんな脅しは通用しないわよ!それで追求を諦めると思ったら大間違いよ!黒幕と話ができるのだったら今直ぐに電話しなさい!黒幕は誰なの!」と聞いた。
マリは、「総理です。」と返答して警察署の電話から電話した。
警部は、マリの掛けた電話番号を調べると共に、逆探知の指示をした。
マリは、「芹沢マリです。ちょっとしたハプニングがあり総理にお願いしたい事があります。」と電話口にでた人物に伝えた。
総理大臣も、怪獣撃墜の件で、マリと何度か話をして面識もあった為に、何事かと思い、“まさか怪獣を作った組織の基地が日本にあったのかな?”と心配そうに電話に出た。
マリは、「日本に戻る時に慌てて銃を持ってきちゃいまして、警察に見付かり捕まっちゃいました。警部さんが話をしたいそうです。」と電話を替わった。
警部は総理というのはニックネームだと思い、まさか総理大臣だとは知らなかった為に強い口調で銃の事を問い質している間に電話を逆探知していた。
総理大臣は、「君では話にならん!署長を出したまえ。」と指示した。
警部が取り合わなかった為に、「もう良い、こちらから電話する。」と電話を切られた。
逆探知に成功したので、先程確認した電話番号と合わせて確認すると総理官邸に架かっていた。
警部が驚いて、「総理官邸に電話したという事は総理大臣の側近が黒幕なのか!黒幕の氏名を白状しろ。」とマリに確認していると、帰宅していた署長が私服で慌てて来た。
署長は警部に、「馬鹿者!お前達は何をしているのだ!芹沢マリさんを今直ぐに釈放しろ!」と怒鳴った。
警部は何が何だか解らずに、マリにもう一度黒幕の事を確認した。
マリは、「だから、総理だと言ったでしょう!総理大臣よ。」と返答した。
警部や佳子達は驚いて、署長に確認した。
署長は、「先ほど総理大臣から私の自宅に直接電話があったぞ。彼女のバックにいる人物は総理大臣ではなくアメリカ大統領だ。“アメリカに宣戦布告するつもりか!”と怒鳴られたぞ。」と怒り、伝説の名パイロットとして、全世界のヒーローである事などを色々と説明した。
佳子と警部はとんでもない事をしてしまったと腰を抜かした。
最後に署長は、「君達もニュースなどで知っていると思いますが、先日彼女が撃墜した怪獣は生物ではなく機械でした。どこかの組織が作成したものだと思われますが、その正体も解っていません。再び怪獣が出現する可能性もあります。世界一のアメリカ空軍アクロバット飛行チームでさえ全く歯が立ちませんでした。現在、それに対抗できるパイロットは彼女しかいません。もし彼女に手を出せば、アメリカ国家から、君はその正体不明である組織の一員としての容疑をかけられるぞ!総理大臣から、“お前の部下はニュースも見てないのか!”と怒鳴られたではないか!」とマリが怪獣を撃墜した記事を掲載している週刊誌を見せて、マリの顔写真を見せながら、「この写真を良く見ろ!彼女を拘留中に怪獣が出現すれば、世界は滅亡するぞ!解ったら、その手錠を外し直ぐに釈放しろ!でなかったら、武装したアメリカ軍が日本に乗り込んできて、君は連行されるぞ!」と怒鳴った。
マリは、「ですから、あなたの首が吹っ飛ぶと忠告したでしょう!あれだけのことを総理大臣に言っちゃったので怒らしちゃったかもね。でも警部さんに悪意がなかった事は解るので、私から取り成しといてあげるわね。でも、“ニュースも見ていないのか!“とご立腹のようですので保証はできませんけれどもね。そして、女性の刑事さん、私が拳銃を携帯している事を見抜いたのはさすがですが、現場にばかり出て、取り調べは誰かに任せていませんでしたか?先に冷静さを失った方が負けですよ。怒る時には腹を立てて怒るのではなく冷静に怒るのよ。でないと、今みたいに犯罪者にからかわれるだけですよ。あなたにできる?今のあなたには警察のバックがあり、刑事という肩書きがあるから取り調べができるのよ。私はそんな肩書きに頼らなくても充分冷静に対応できましたよ。じゃあ私はこれで失礼します。」と佳子や警部を睨んで帰った。
警部は、「やられたな梅沢刑事、確かに彼女は自分の素性をあかさず、冷静に対処していました。怪獣を撃墜できたのも、単に操縦技術だけではなく、あの冷静さがあったからでしょうね。君に説教している時の目は君をからかっていた時の目と違い、凄く怖い目をしていました。長年刑事をしている私でさえ背筋が凍り身動きできませんでした。あれが鬼教官の目なのですね。」とマリの冷静さに感心していた。
佳子は、「私も同じです。まだ体が震えています。今、考えると、逮捕する前から、からかわれていたような気がします。」と鬼教官の偉大さに圧倒されていた。
警部は、「しかし梅沢刑事、彼女は現場での君を誉めていたではないか。もっと自信を持ちなさい。鬼教官は滅多に人を誉めないと聞きました。」と佳子を慰めた。
マリが直ぐに素性を明かさずに対応したのは、上官から精神力が弱いと指摘されたので、どこまで冷静に対応できるか精神力の訓練をしていた事と、この事が上官の耳に入ると都合が悪いので、素性を明かさずにアメリカではなく、日本の総理大臣に連絡した事を佳子達は知りませんでした。
マリはこの一件が上官の耳に入ればヤバイと怒って佳子達を睨んだので、佳子達はそれを鬼教官の怖い目と勘違いしただけでした。
最後にマリが佳子達に説教した内容は、マリが陸軍と作戦行動を共にして、基地に帰還した時に、マリが戦場で冷静さを失っていたと陸軍から聞いた上官から説教された内容をアレンジしたものでした。
その数日後、佳子と警部は直接総理大臣に呼び出されて、「今後、芹沢マリさんには手を出すな!もし手を出せば、総理大臣の権限で警視総監に指示して君達を即刻解雇させる!処分は追って伝える。」と怒鳴られた。
数日後佳子と警部は署長室に呼び出されて、「総理大臣から連絡があり、芹沢マリさんが総理大臣に、“刑事さんは当然の仕事をしただけですので大目にみてやって下さい。”と穏便に済ますように頼んでくれたらしい。総理大臣は、“警視総監にもその旨伝えています。“と仰っていましたので、後で芹沢さんにお礼を言っておくことだね。」と処分は特にありませんでした。
マリは、この件が上官の耳に入る事を防ぐ為に穏便にすますように依頼したとは佳子達は知りませんでした。
次回投稿予定日は、7月26日です。