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第百十七章 陽子、知子の手術に成功する

再入院した知子は、病室で看護師の寺前さんから手術前に術前検査がある事を聞かされた。

寺前さんは、「手術前に術前検査がありますが、土日を挟んでいる為に、東城先生に許可を頂いて気晴らしにどこかに遊びに行けばどうですか?」と勧めた。

知子は、「えっ?手術前に外出しても良いのですか?」と意外そうでした。

寺前さんは、「東城先生も、楽しい事を考えるようにと仰っていたでしょう?恐らく外出は許可されると思いますよ。楽しい事と言えば田舎はどうでしたか?家でゆっくりして、恩師や友達にも会い楽しい思い出を沢山思い出して来ましたか?」と聞いた。

知子は手術の事もあり、気がむしゃくしゃしていた為に、寺前さんをからかいたくなった。

「私の同級生に、やくざの組長の娘がいて、喧嘩が強く、やくざに絡まれた時や海岸で不良に絡まれた時などに助けて貰った事を色々と思い出しました。あの頃は何があっても必ずその友達が助けてくれました。今となっては懐かしい思い出です。先日会って話をしましたが、大学を卒業して普通に就職していました。そのやくざの次期組長らしいですが、まだやくざの組長にはなっていませんでした。その人から、必ず助かるから手術を受けろと勧められました。」とからかった。

寺前さんは驚いて、陽子にその話をして、「手術後、知子さんとは付き合わない方が良いですよ。やくざの次期組長と友達らしいですから。」と忠告した。

陽子は、「その人の事なら私もよ~く知っているわよ。考えれば解るでしょう。私と知ちゃんとは同級生なのよ。知ちゃんがその人と同級生なら、私とも同級生なのよ。」と説明した。

寺前さんは、「そんな人と知合いだなんて大丈夫ですか?」と陽子が意外な人物と同級生だったので驚いていた。

陽子は、「大丈夫よ。寺前さんも会った事があるわよ。気付かなかった?やくざや不良などに絡まれたら私に伝えてね。その人に助けて貰うから。」と補足説明した。

寺前さんは驚いて、「東城先生、へんな人を紹介しないで下さい。誰なのですか?その人は。」とどこで会ったのか考えていた。

陽子は、「機会があれば教えるわね。寺前さんが想像もしていない人だから、驚くと思うわよ。」と笑顔でからかいながら返答した。

その数日後、陽子の執刀で菊枝が助手に付き手術が開始されて成功した。術後の経過も良く問題ありませんでした。

新聞やテレビなどマスコミでも、“死亡率百%の難病から生還!”とか、“医学会の魔女、エスベックを倒す!”などと報道されて大騒ぎになった。

その後、大魔王エスベックを正義の魔女が退治するテレビドラマが大人気になっていた。視聴者のだれもが大魔王エスベックがエスベック病の事で正義の魔女が陽子の事だとわかっていた。

その後、陽子の所へエスベック病患者が多数訪れた。しかし既に自覚症状が出ている患者は、検査後診察時に透視力で確認したが、全て手遅れでした。

自覚症状が出てない患者に陽子は、「自覚症状が出た頃が手術のタイミングです。それまで内科的治療を続けて下さい。薬を飲み忘れたりすると、手術の成功率が下がると考えて下さい。最悪手術は不可能になります。」と説明した。

マスコミも、“名医密着二十四時”と題して、陽子に密着取材した。

病院に住所を届ける為に借りたマンションは別荘として使っていた為に、家具も揃ってなくて、まさか丸東組に帰る事もできなかったので、撮影は夜勤の時に依頼した。

密着取材終了後陽子は、取材を夜勤の時にして貰い、丸東組との関係が発覚しなかった為にホッとしていた。

しかし、マスコミはエスベック病のみならず、他の病気でも専門医が手術不可能だと診断した患者を助けていた事に気付いて、色々と調査していた。

神の手を持つと噂されている名医は、旧姓芹沢で、芹沢外科医院を開業していて、結婚した事は公にしていなかった為に、今迄母親だとは気付かず、今回初めて気付いて、“魔女の母親は、神の手を持つ神様だった。”とか、“医学会の魔女はエスベック以外の人類の敵も親子で退治していた。”などと報道した。

そして陽子が手術着で、メスを持っている姿を撮影し、“このメスが魔法のステッキです。”と補足説明した。

知子は両親や仲の良い同級生達と喜び、田舎の他の同級生などに電話して報告していた。

「実は私、エスベック病で、色んな病院で、専門医の診察を受けましたが、どの専門医からも四十歳ぐらいまでしか生きられないと診断されました。先日、世界一の名医の診察を受けると、手術すれば助かるとの診断でした。なんと、その世界一の名医とは、陽子だったのよ。陽子は、“親友の私を信じて!“と励ましてくれました。」と同級生に報告していた。

その話を聞いて同級生は、「その話は、テレビや新聞で見たよ。エスベック病で助かったのは知ちゃんだけらしいね。一度お見舞いに行くよ。助かって良かったわね。私も大日本医療大学の東城助教授の噂は聞いた事があります。それが陽子の事だったとは驚きですね。高校時代から秀才でしたからね。やくざの組長にはならなかったようですね。」と返答した。

知子は、「“ならなかった”のではなく、“まだなってない”と言った方が正確よ。先日陽子に聞いたけれども、丸東組の次期組長は陽子らしいわよ。」と伝えた。

その友達は、「それじゃ、陽子はいつか大学を退職して組長になるの?」と早耳の知子なら知っているかな?と確認した。

知子は、「そこまでは聞いてないので陽子に聞かないと解らないわ。」と返答した。

その友達は、「しかし、陽子の母親は神の手を持つと言われた世界一の名医だったのでしょう?陽子の父親がやくざの組長だという事は、世界一の名医がやくざと結婚したのよね。陽子もやくざの組長と結婚して、やくざの世界に入るのかしら?」と噂していた。

知子は、「違うわよ。陽子は、たまたま合コンで知合った人と付き合っていて、先日プロポーズされたらしいけれども、その人が刑事だと知り悩んでいるみたい。陽子は近い日にやくざの子分を連れてやくざ姿でその人に会うと言っていました。その相手の反応次第で陽子の人生は大きく変わるわよ。」と陽子の現状を伝えた。

その友達は、「助かった途端に早耳の知子に戻ったわね。」と昔の知子に戻り安心していた。

知子は、「私がこの事を知ったのは手術前よ。最初陽子は言いにくそうにしていたけれども、“陽子は私の事を信じてないの?私も陽子を信じられなくなりそう。”と悲しそうな顔をしたので、手術前と言う事もあり、渋々話してくれたのよ。でなかったらこんな事を陽子が喋る訳ないでしょう。」とどうやって陽子から聞き出したのか説明した。

その友達は、「そうか、魔女とまで言われた世界一の名医も知ちゃんの作戦には敵わなかったのね。」と納得していた。

知子は、「作戦じゃないわよ。たまたまよ。手術前にそんな事を考えている余裕はなかったわよ。生きるか死ぬかの瀬戸際だったのよ。」と怒っていた。

その友達は、「そうか、御免御免、しかし陽子も折角刑事からプロポーズされたのだったら、やくざから足を洗い、刑事の女房になれば良いのにね。でないと、陽子は今、有名人だから、やくざの世界に入れば大騒ぎになるわよ。」と噂していた。

知子は、「足を洗うもなにも、まだ跡を継いでいないから陽子はやくざではないけれども、陽子の近くにはやくざが大勢いるし、丸東組の本部に住んでいるのよ。でも病院に届ける住所はそれだと都合が悪いので、マンションを借りて、その住所を病院に届けて別荘みたいにしているわよ。そうだ、実は手術前に術前検査があったけれども、その検査が土日を挟んでいて、土日は検査も休みだった為に陽子に許可を貰い、遊園地に気晴らしに行ったのよ。すると途中で自覚症状が出て来て、陽子に電話すると、何故か救急車ではなく刺青のやくざがベンツで病院まで送ってくれたわ。私もやくざの姉さんになった気分でした。後で陽子に聞くと、陽子の指示で組員が、ずっと私の近くにいたらしいのよ。全然気付かなかったわ。でも、刺青のやくざが突然目の前に二人も現れると驚くわよ。私もどうなる事かと思いましたが、そのやくざがお辞儀して、“井上知子さんですね?姉さんの指示でお迎えに来ました。病院までお送りします。車まで歩けますか?”と言ったので、えっ?と思い、陽子が丸東組の姉さんだった事を思い出して、安心してベンツで送って貰ったのよ。」と先日の出来事を伝えた。

その友達は、「やくざの姉さんになった気分だけではなく、その時、知ちゃんの近くにいた人は、やくざが知ちゃんにお辞儀する様子を見て、本当にやくざの姉さんだと思ったんじゃないの?」とその出来事の感想を伝えた。

知子は、「何故解ったの?その日は土曜日だったので、その夜ゆっくりと病院で休んで日曜日に、もう一度遊園地に行ったのよ。すると高校生ぐらいの男性が数名の不良に人目に付かない所へ連れ込まれていて、その不良はあの時、確か近くにいたと思い、今日もやくざが近くに付いているかと思えば強気になり、私が助けに行ったのよ。“私の縄張りで何しているの!“と怒鳴ると、その不良達は丸東組のバッジを覚えていたらしく私を見て、”やばい!丸東組だ!“と逃げて行きました。後で陽子に聞くと、その日、丸東組でアクシデントがあり、組員は私の近くにいなかったらしいのよ。それを聞いてドキッとしたわよ。」とその日の事を思い出していた。

その友達は、「良かったわね。その不良が知ちゃんの事を覚えていて。それじゃ、またお見舞いに行きます。丸東組の姉さん。」と笑いながら電話を切った。


次回投稿予定日は、7月13日です。

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