第百十二章 マリ、大統領に緊急呼出される
マリが慰安旅行を楽しんでいる頃に、一方では大事件が発生していた。
世界各国で、航空機がバミューダー海域でもないのに、次々と消息を絶っていた。
アメリカ軍の調査では、何者かに破壊された痕跡があり、ボイスレコーダを解析すると、「あれは何だ!怪獣だ!」とパイロットの叫び声を最後に途絶えていた。
ジェット戦闘機が警戒する中、太平洋上に怪獣出現の連絡を受けて、現場に急行すると、SF映画に出て来る空飛ぶ恐竜のようでした。
ジェット戦闘機が攻撃を開始したが、動作が機敏でミサイルも迎撃されて命中しませんでした。
この連絡を受けて、アクロバット飛行チームがスクランブル発進した。
矢張り歯が立たず、アクロバット飛行チームのリーダーは責任感から、自分が何とかしなければならないと判断して、無理な飛行をした為に撃墜された。
リーダーを失ったチームはバラバラになり、基地に帰還した。
そのリーダーの最後の言葉が、「うわーっ!芹沢教官!助けて!」でした。
この事は大統領に報告されて、大統領の判断でマリ芹沢パイロットに緊急応援を依頼する事になった。
この事は日本の総理大臣に連絡された。
生憎マリは慰安旅行中で、休日の為に他部署の社員も出勤していなかった為に、会社は全員不在で、携帯は入浴中の為に気付かず、社長の自宅に連絡して、ようやく所在が掴めた。
政治家がパトカーに先導されてマリに会いに来た。
パトカーに先導されて来た車から降りて来た政治家が、玄関先で芹沢マリの名前を言っているのを聞いたマリが勤める会社の女子社員は、パトカーでサイレンを鳴らして乗りつけた為に、政治家の事を刑事だと勘違いした。
大急ぎでマリに伝えて、「あんた何かやったの?人殺しとか。」と聞いた。
マリは、「人を殺した事は、あるわよ。何かやったというよりも、やっていると言ったほうが正解かな?」と冗談を交えて返答した。
皆は驚いて、「えっ!人を殺した事があるの?やっているとは、現在進行形ですよね?何をしているの?あの刑事は殺人罪でマリを逮捕に来たの?」と予想外のマリの返答に一同驚いていた。
近藤が慌てて間に入り、「何を言っているのだ。そんな事がある筈ないじゃないか!芹沢さん、そんな誤解を招くような説明するから。芹沢さんはアメリカ空軍の元軍人で、今も要請があれば、戦地へ出撃しています。ですから現在進行形です。」と説明して、先日近藤が戦地で銃撃戦に巻き込まれて、マリに助けられた事を説明した。
「あの時、芹沢さんは拳銃で、敵兵士数名射殺しましたが、そうしないと、私達が射殺されていました。」と説明した。
マリは、「そうね、その銃撃戦の時に、泣きながら、おもらしした人は誰だったかしら?“オシッコ止めなさい!”と指示しても、そんなの無理だと泣きながら、オシッコしていたわよね。」と笑った。
同僚達は、「お前、芹沢さんの目の前で、ちびったのか?」と大笑いしていた。
近藤は、「あのなあ、お前ら、あの時は本当に死ぬかと思ったよ。お前らも、あの場にいれば、絶対ちびっていたぞ。止めようとしても痙攣して、全く力が入らなかったんだ。」と説明していると、宿の仲居さんが政治家を皆の所へ連れて来た。
政治家は身分証明書を提示して、「重要な話がありますので、こちらへ来て頂けませんか?」と依頼した。
マリは、「あなたがパトカーでサイレンを鳴らして宿に乗りつけたので、大騒ぎになり、皆、興味津々で見ていますよ。もう収集がつきません。ここで皆の前で話をして下さい。でないと協力しませんよ。」と政治家の話の内容は見当がついていたので、その後、上司や皆に有給休暇取得の説明をするのは面倒なので、一緒に話を聞いて貰おうとしていた。
政治家は、「解りました。先程からニュースでも放送されていますので、問題ないでしょう。怪獣の件ですが、世界一のアメリカ空軍アクロバット飛行チームも歯が立ちませんでした。アメリカ大統領から、アクロバット飛行チームの指揮官として、怪獣撃墜の協力要請がありました。」とマリに協力を依頼した。
皆は、「世界一であるアメリカ空軍アクロバット飛行チームでさえ歯が立たなかった怪獣を、どうして芹沢さんが撃墜できるのだ?」と不思議そうでした。
政治家は返答に困っていた為に近藤が、「芹沢さんは数年前まで、そのアメリカ空軍アクロバット飛行チームの指導教官でした。ほら皆もアメリカ空軍の鬼教官って聞いた事あるでしょう?それは芹沢さんの事ですよ。」と説明した。
マリは、「だから鬼だけ余計だと先日も説明したでしょう。」と忠告した。
近藤は、「失言でした。マリさんは伝説の名パイロットの異名を持つ凄腕パイロットです。」と訂正した。
マリは、「だから、伝説だなんていうと、私はヨボヨボの婆さんみたいだと先日も説明したでしょう。」と忠告して、“何も、おもらしの事をバラしたリベンジで、そんな事をバラさなくても良いのに。後で、おもらしは一回でなかった事をバラしてやる。”とそのリベンジをしようとしていた。
皆は驚きながら、「えっ!?という事は、その怪獣を撃墜できるパイロットは、世界広しといえども、芹沢さんしかいないって事ですか?」と現状を把握した。
近藤は、「詳しい事は私も知りませんが、アメリカ大統領からの要請だという事は、そういう事ではないですかね。」と返答した。
皆は、「それじゃ、芹沢さんが引き受けなければ世界は滅亡するって事ですよね。引き受けざるを得ないのではないですか?」と口々に呟いていた。
マリは、「どうやら、そのようですね。引き受けますと返事して下さい。」と政治家に返答し、政治家に慰安旅行の帰りの航空機手配を依頼して、その事を近藤に伝え、慰安旅行終了後、期間未定の有給休暇取得を上司に伝えた。
マリが出発する前に近藤は、「私が恩を返す前に、死なないで下さい。必ず無事に帰って来て下さい。」とマリの事を心配していた。
マリは、「心配してくれて有難う。でも大丈夫よ、空の上では、誰にも負けない自信がありますので。少なくとも、誰かさんみたいに、悲鳴をあげながら、大も含めて何度も、おもらしはしませんのでね。」と先ほどのリベンジをした。
近藤の同僚達は笑いながら、「何回マリの前でちびったのだ?態とか?今日は、うんち、ちびらないのか?お前がそんな変態だったとは知らなかったよ。」と大笑いしていた。
近藤は、「だから、あの時は死ぬ思いをしたって説明しただろうが!空中戦では、宙返りだけでなく、上下反対にもなり、その連続でしたので、どの方向に地面があるのかすら解らなくなりました。ジェットコースター以上でしたよ。目が回り、私にとっては拷問同様で、もう死ぬかと思いました。本当に墜落するかと思ったよ。」とその時の事を思い出していた。
マリは、パトカーで空港に向かい、マリの自家用機で、直接アメリカに向かった。
マリの課内の社員は、近藤から説明を聞いて、始めてマリが凄腕パイロットで、以前、旅行会社がチャーターした航空機が、無人島に不時着した時に救出したパイロットが、マリである事を知り、「あの可愛いマリがアメリカ空軍の鬼教官だったとは驚きですね。」と皆で噂していた。
一方、アメリカに到着したマリは、空軍が撮影した怪獣の映像を見て、“そんな馬鹿な!”と感じる事がありましたが、確信がありませんでしたので黙っていた。
その後、マリの上官が来て、「先日、撃墜されたパイロットの指揮官を紹介しますので、参考の為に、話を聞いて下さい。今、入院中ですので、私と一緒に病院まで来て下さい。」と指示された。
上官と病院に同行して、病室で上官はパイロットをマリに紹介して、「私の目は節穴ではないぞ!お前達が、男と女の関係である事は先刻お見通しだ。私は、お邪魔虫のようですので先に基地に戻ります。二人でゆっくりと話をして下さい。」と指示して病室を退出した。
上官は、“マリの子供は純粋な日本人ではなく、アメリカ人とのハーフのような顔立ちだったが、入出国管理局で調査した所、子供の誕生日からして、性的関係があったと思われる頃に、アメリカを出国して日本へ入国した軍人は彼だけだ。病室を出る迄に二人が否定しなければ、マリの子供の父親はこのパイロットに間違いない。”と思っていた。
上官が帰った後その軍人は、「教官、もう勘も完全に戻られたようで安心しました。しかし、あの怪獣は素早いので、私には太刀打ちできませんでした。」とマリに報告した。
マリは、「あなたも、まだまだですね。映像を見る限り、全然素早くないですよ。素早く見えるだけです。」と返答した。
上官は病室の前で二人の話を立ち聞きして、“さすがマリ、海坊主対応の為に結成した秘密部隊でも、対応不可能だったが、何か掴んだようだな。”と安心して基地に戻った。
軍人は、「上官は何故私達の事が解ったのでしょうか。」とマリに確認した。
上官は子供の事を知らない筈ですので、マリにも何故、上官が気付いたのか疑問で、二人で話をしたが結局解らず、“上官には隠し事は通用しない。”と結論に達した。
次回投稿予定日は、6月25日です。