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第百十章 陽子の親友、入院する

ある日、陽子が病院から帰宅すると菊枝から着信があった。

「陽子、高校時代に井上知子さんという同級生がいた事を覚えていますか。」と聞いた。

陽子は、「うん、知ちゃんなら良く知っているわよ。それがどうしたの?」と何故母が知子の事を知っているのだろうと不思議そうでした。

菊枝は、高校の懇談会での事を説明して、「エスベック病で自覚症状が出て来た為に、陽子宛の紹介状と検査データーを渡しておきました。日本一の名医として名高い大日本医療大学の東城助教授だと説明して、陽子だとは説明していませんので驚くかもしれませんね。明日、大学病院に行くそうです。宜しくね。」と説明した。

陽子は、「ちょっと待ってよ。そんな話は初耳よ。何故黙っていたのよ。」と突然予想外の事を菊枝から聞き、戸惑い怒っている様子でした。

菊枝は、「医師には守秘義務がある事は知っているでしょう?それは娘でも例外ではないのよ。医師でも、関係のない医師には喋れないのよ。今回、陽子は関係者になるので話をしました。」と陽子とは裏腹に冷静でした。

陽子は、「何が守秘義務よ。やくざの組長の女房が何弁護士みたいな事を言っているのよ。所で検査データーを渡したと言っても、それは地元の病院から電子データーで送信されて来たと言っていたわよね。コピーは母ちゃんの医院にあるのでしょう?今から行きます。」と母の医院に行き、カルテや検査データーなどを確認した。

陽子は、「知ちゃんは、私が必ず助けます。」と宣言した。

菊枝は、「そんなに安請け合いしても良いの?エスベック病で助かった人は、まだいないのよ。死亡率百%の難病よ。」と陽子が予想以上に興奮していたので心配していた。

陽子は、「知ちゃんが、エスベック病で助かった最初の一人にします。私が必ず助けます。」とまだ興奮していた。

菊枝は、その陽子の様子を見て、感情的になっていたので少し心配になり、「落ち着いて、陽子。大丈夫?患者は自分の命が掛かっている為に敏感よ。医師が動揺すれば、患者は凄く不安になるわよ。」と警告した。

陽子は、「御免なさい。明日は最初に知ちゃんの顔を見ないようにして、私自身落ち着いてから、知ちゃんの顔を見るようにします。」と落着こうとしていた。

次の日、知子は両親と大学病院を訪れた。

陽子は、知子を診察室に呼ぶ前に深呼吸してから、看護師に知子を呼ぶように指示した。

知子が看護師に呼ばれて診察室へ入ると、陽子は知子の顔を見ないように、知子に背を向けてレントゲン写真と検査資料を見ながら、「井上知子さんですか?自覚症状はいつ頃からありますか?」と問診を始めた。

知子は、「二八歳の頃からです。それで私は自分の病気に気付いて、両親が何か知っているようでしたので問い詰めると、私はエスベック病で寿命は四十歳頃までだと知りました。私の親友の母が名医で、診察してくれるというので訪ねると、診察後、ここに来るように指示されました。先生も世界一の名医だと聞きました。本当に私はエスベック病なのですか?四十歳で死ぬのですか?」と取り乱して泣いていた。

陽子は、「大丈夫よ。私が死なせないわよ。」と冷静でした。

知子は、「嘘!私の病気はエスベック病ですよね。エスベック病で助かった人はいないのでしょう?死亡率百%ですよね先生!気休めは辞めて下さい。」と泣いていた。

看護師が、「落ち着いて下さい。東城先生は、他の専門医が手術不可能で、もう助からないと診断した患者を今迄、何人も手術して助けてこられた名医です。」と説明した。

陽子は深呼吸して落ち着いて、「親友の私が信用できませんか?」と確認した。

知子が、「えっ!?親友って?」と名医の口から、思いもよらぬ言葉を聞き、自分の耳を疑った。

陽子は振り返り、「私の声を忘れるだなんて、知ちゃんも冷たいわね。しかし知ちゃんは昔からお喋りね。それだけ喋れれば大丈夫よ。」と笑顔で返答して、知子を落ち着かせようとした。

知子は陽子の顔を見て、「えっ!?嘘!陽子?陽子じゃないの!道理で、どこかで聞いたような声だと思ったわ。」と名医が予想外の人物だった為に、両親共々驚いていた。

看護師が、「えっ!?東城先生のお知合いですか?」と確認した。

陽子は、「ええ、高校の同級生よ。知ちゃん、そこのベッドに横になって、体を診せてくれる?」と知子を横にさせて診察した。

知子は、「ねえ陽子、教えてほしいのだけれども、自覚症状がなかったので今迄気が付かなかったけれども、本当に私は病気なの?自覚症状がないのは悪くないのではないの?」と確認した。

陽子は、「それは反対よ。自覚症状がない病気は怖い病気である事が多いのよ。例えば風邪などは、咳は出るわ、頭は痛くなるわ、鼻水は出るわと自覚症状が色々と出るでしょう?ですので直ぐに対処するでしょう?自覚症状がなければ、手遅れになるまで何もしないのよ。体の防衛機能も同様なので怖いのよ。例えば癌などは、気付いた時には手遅れになっている事が多い為に死亡率が高いのよ。癌の早期発見は自覚症状が出る前に発見して対処すれば、完治する可能性があるのよ。病気によっては、死にかけている人でもケロっとしていますよ。」と説明した。

知子は驚いて、「えっ!?嘘!私は自覚症状が出るまで何もしていなかったのよ。今回自覚症状が出たという事は、手遅れなの?本当に私は助かるの?エスベック病の死亡率は百%なのでしょう?」と泣きながら確認した。

陽子は、「先程から泣いてばかりじゃないの、知ちゃん。落ち着いて、大丈夫よ。何もしていなかったのではなく、知ちゃんが気付いていなかっただけよ。両親は、知ちゃんに気付かれないように、食事に薬を混ぜるなどして色々と内科的治療をしていました。何か心当たりはない?外食は禁止で、食事の時間は正確で、食事は必ずお母さんの手作りで、残す事を許されなかったとか、他にも、色々とあるのじゃないかしら?」と説明した。

知子は、「そう言われてみればそうです。食事の時間が遅くなる時には、何故かいつもの食事の時間に、健康ドリンクだとか説明されて、変な味のジュースを飲まされたけれども、あれが薬だったの?所で陽子は外科医よね?という事は、もう内科的治療では手の施しようがない程、私の病気は悪化しているの?」と確認した。

陽子は、「知ちゃん、あなたは何故悪い方に考えるの?エスベック病は進行すれば、他の臓器に悪影響を与えるので、それを抑える薬を飲みながら、手術のタイミングを見ていたのです。もうそろそろ、そのタイミングだという事です。」と説明した。

知子は、「本当なのね。信じていいのね。今後の為に聞きたいのだけれども、自覚症状が出ない怖い病気を素人が見付ける方法はないの?」と確認した。

陽子は、「そんな事はないわよ。何事も基本が大事だというでしょう?毎日身長体重体温など、家庭でできる簡単な健康診断を行っていれば、気付く事もあるわよ。微熱が続くとかね。例えば先程、癌の話が出ましたが、癌になると腫れるのよ。それも全体的にね。胃癌の場合は、お腹全体が腫れるので、素人には中年太りと見分けられないけれども、癌の場合は痩せるのよ。すなわち体重が減るの。中年太りだという事は太る訳ですから、体重が増えるのが普通ですが、胃癌の場合には体重は減ります。毎日体重測定をしていれば、“太ったのに体重が減った。”と気付きます。それが癌だとは言わないけれども、何らかの病気である事は間違いないですね。健康であれば、太れば必ず体重は増えます。体重が減る事はあり得ません。その段階で病院に行けば助かる可能性は高いです。このように、ちょっとした体の変調に気付けば、その段階で医師に相談すれば良いですよ。知子、悪い方へ考えないで!病は気からというでしょう。想像妊娠と同じで、悪い事ばかり考えていると、助かるものも助からなくなりますよ。一週間、検査入院して下さい。大丈夫よ!先程も説明したように、知ちゃんを四十歳で死なせないわよ!親友の私を信じて!詳しい話は、検査結果が出てからしましょう。」と説明して、知子はそのまま入院して陽子が主治医になった。

知子の両親は、「今から知子の入院手続きをして、その後、一旦田舎へ帰りますが、一週間後には、また病院に来ます。それまで陽子さん、知子の事を宜しくお願いします。知子、それまで一人で大丈夫よね。」と知子の入院手続き後、知子と入院に必要なパジャマなどを買いに行き、一度病院に戻って、同室の患者に挨拶して帰った。

その夜、陽子は知子の病室に来て、「今日は、入院時の注意事項など説明だけでしたが、明日から本格的な検査になります。検査によっては気分が悪くなるかもしれませんが、その時は、遠慮なく看護師に伝えてね。どうしたの?そんな暗い顔して。大丈夫よ。高校時代のお転婆な知ちゃんは、どこへいったの?」と知子を励ました。

知子は、「そりゃ、暗くもなるわよ。人事だと思って。ったく。」と不機嫌そうに返答した。

陽子は、「大丈夫だと言ったでしょう。私を信じて。」と励まして陽子は医局に戻った。

同室の患者が、「井上さん、東城先生と知合いなの?世界的な名医と知合いだなんて凄いじゃないの。私の事を良く頼んでおいてね。」と依頼された。

知子は、“陽子はそんなに凄い名医なのかしら?丸東組の次期組長がね。”と思っていた。


次回投稿予定日は、6月18日です。

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