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第百六章 マリ、近藤と食事する

会社に戻ってから近藤はマリにイヤミを言わなくなった。

マリは近藤から、「芹沢さんは、私の命の恩人ですので何かお礼したい。月並みですが、今度お食事でもいかがですか?」と誘われて、マリは近藤と一緒に食事に行く事になった。

それを見ていた社員達は、「近藤の奴、あれだけ芹沢さんの悪口を言っていたのに、どういう風の吹き回しだ?」と不思議がっていた。

別の社員が、「ひょっとして、近藤さんは最初から芹沢さんを狙っていたのではないですか?悪口を広めて芹沢さんは悪い女だと印象付けて出張中に横取りされないようにしていただけじゃないですか?お前は、その作戦に引っ掛かっただけだったりして・・・」と助言した。

その社員は、「畜生!近藤にやられた。」と残念がっていた。

近藤は食事しながらマリと色んな話をしていた。

そして近藤は、「命の恩人へのお礼は、これで済んだとは思っていません。今後、何か困ったことがあれば私に相談して下さい。私にできる事であれば力を貸しますので。」とマリに感謝していた。

マリは、「ありがとう御座います。私はアメリカ育ちなので、たまに通訳を頼まれる事がありますが、コンピューターの専門用語が解らなくて苦労しています。“シープラプラ”って何ですか?」とよく聞く専門用語について質問した。

近藤は、「人の言葉にも日本語や英語など色んな言語がありますが、コンピューターにもコンピューター専用の言語が色々とあり、その中の一つです。」と返答した。

マリは、「日本語や英語は人の言葉で地域によって異なりますが、コンピューター言語は人が作った言語で一つにできないのですか?」と何故そんなに多くの言語を作るのだろうと疑問に感じた。

近藤は、「その使用目的により最適な言語を作っています。例えば事務処理用にはコボルで数値計算用にはフォルトランなどです。」と説明した。

マリは、「以前、コンピューター言語ではシー言語が新しい言語だとテレビで聞いた事がありますが、シープラプラとはその言語の事ですか?」と確認した。

近藤は、「そのシー言語より進んだ言語です。」と説明した。

マリは、「叔父さんがFAにはハードも関係してOA以上に解りにくいものがあると言っていましたが、FAにはFA専用の言語があるのですか?」と確認した。

近藤は、「FAにはラダー言語というのがあり、これだけは考え方も動きも他の言語と全く異なります。先程芹沢さんが言っていたシー言語はOAでもFAでも使われていますが、ラダー言語は機械制御専用の言語で、リレー回路をコンピューターで実現した言語ですのでOAでは使えません。」と説明した。

マリは、「コンピューターには色々とあって難しいのですね。また教えて下さいね。でも近藤さんも何かあれば私に相談して下さいね。私にできる事であれば、と言っても私の場合、航空機の事しか協力できないかも知れませんけれどもね。」とお礼返しをしようとしていた。

近藤は、「私は今、課内の旅行などの幹事をしていて、近いうちに課内で旅行しようと考えています。遠くにした場合には、交通費が高額になります。航空機を安く利用できる方法はありませんか?」と、マリの顔で安くならないかを相談した。

マリは、「そんなのは簡単よ。私の自家用機を使えば無料よ。」と返答した。

近藤は驚いて、「えっ!芹沢さん、そんな大型の自家用機を持っているのですか?無料って言っても、燃料費や空港使用料など、最低限の経費は必要でしょう?」と確認した。

マリは、「いいえ、私の自家用機の経費はアメリカ空軍持ちよ。本当に無料です。その代わり、アメリカ空軍から要請があれば戦地へ出撃していますけれどもね。」と説明した。

近藤は、「なるほど、そういう事ですか。芹沢さんはアメリカ空軍と取引した訳ですね。アメリカ空軍が、そのような取引をするのは、芹沢さんの操縦技術が優れている証拠ですね。民間機より芹沢さんの自家用機の方が安全のようですね。それでは、その時には、お願いします。但し、宙返りなどはせずに真っ直ぐに飛行して下さいね。」と空中戦には二度と巻き込まれたくないと思いながらマリに依頼した。

マリは、「解りました。真っ直ぐ飛ぶので、近藤さんもおもらししないで下さいね。」と冗談で一言付け加えた。

近藤は、「銃撃戦や空中戦の時は、本当に死ぬかと思いました。芹沢さんは、いつもあのような事をされているのですか?」とマリは見かけより強い女性だと感じた。

マリは、「銃撃戦も空中戦も、いつもは、あんなものじゃありませんよ。近藤さんでしたら、おもらしだけではなく、気絶するかも知れませんね。」と実戦はそんなに甘くないと忠告した。

近藤は、「えっ!芹沢さんて、いつも、そんな凄い事をしているのですか?」と私達とは神経が違い、ちょっとした事には動じないのかと納得していた。

マリは、「あっ、そうそう、私の自家用機は武器を取り外した戦略爆撃機ですが、それで良ければですけれどもね。」と普通の民間機とは異なる事を伝えた。

近藤は、「武器以外、何か民間機と異なる事があるのですか?」と今迄爆撃機とは全く縁がなく、戦争映画などで見た程度で詳しくないので確認した。

マリは、「座席は客席ではなく兵士用ですので、民間機に比べてチャチでCAもいません。」と民間機と大きく異なる点を指摘した。

近藤は、「CAって何ですか?」と航空機の事が解らずに質問した。

マリは、「キャビンアテンダントの略で、客室乗務員の事です。要するにスチュワーデスの事ですね。」と返答した。

近藤は、「日本国内ですので時間は短く、それは問題ないでしょう。スチュワーデスの体験をしたい女子社員は何人かいると思うので、やらせてみればどうですか?弁当を買っておいて皆に配らせたり機内アナウンスさせたりすれば、その気になるのではないですかね。」と新企画を考えていた。

マリは、「ワゴンもなければ食事するテーブルもないですよ。」と説明した。

近藤は、「弁当ですから、台車を使って配れば問題ないでしょう。食事はテーブルがなくても、膝の上に弁当を乗せて食べれば問題ないですよ。お茶はペットボトルにしましょう。」と新企画に意欲的でした。

マリは、「それで良ければ良いですが、念の為に一度私の自家用機を見ておいた方が良いかもしれませんね。今度の休日、遊覧飛行しませんか?宙返り等しませんので安心して下さい。おもらしされると困るので・・・」とぶっつけ本番は危険だと判断して助言した。

近藤は、「芹沢さんって案外しつこいのですね。もうそろそろ、おもらしの件から離れませんか?」とこの調子だと他の社員にもらされる可能性があり、同僚に知られるのは時間の問題だと感じた。

週末、近藤はマリと遊覧飛行した。

そこで近藤は一つ気付いた事がありマリに確認した。

「芹沢さん、エアコンのスイッチはどこにあるのですか?」と質問した。

マリは、「この爆撃機は旧式ですのでありません。エアコンがあるのはコックピットだけです。」と返答した。

近藤は、「窓も開かないのですよね。幹事はスピーカーでコックピットから説明する事にしよう。幹事の特権だな。」と他の社員に黙っていれば、ばれないだろうと思っていた。

マリは、「高度を下げて速度も落とせばドアは開けられますよ。パラシュート部隊が降下する高度と速度で飛行しましょうか?でも気流の関係で揺れる事もあるので落ちないで下さいね。スーパーマンではないので、パラシュートなしで飛行中の航空機から落ちれば間違いなく死神がお迎えに来ます。」と忠告した。

近藤は、「芹沢さんは、戦場で何人も殺しているので死神ですか?私には天使のお迎えがあると思います。」とおもらしの事を何度も言われたので、そのリベンジをした。

マリは、「おもらしするような悪い子に果たして天使のお迎えがありますかね?」と言い返した。

近藤は、「パラシュート部隊が降下する高度で飛行するかどうかは、その日の天候で決めましょう。」と社員も子供ではないので、揺れが少なければ予め説明しておけば大丈夫だと思った。

マリは、「それは無理ですね。事前に飛行計画を提出しなければなりませんので。車と違って対向車が来たから避けようという事ができません。同じ高度で対向する航空機を発見すれば、大至急回避しなければ、あっという間に正面衝突します。航空機は、それだけ早く飛行しています。」と返答した。

近藤は、「えっ!?でも敵戦闘機は、いつどこから現れるか解らないのでしょう?そんな届けはしないのではないですか?」と疑問に感じて質問した。

マリは、「それは戦争中の国の事でしょう?確かに戦争中の国の上空を飛行する事は大変危険です。戦闘機だけではなくミサイルが飛んでくる可能性もあります。日本上空ではそのような事はないので、事前に届けておけば、離陸前に再度確認すれば、例えば気象観測用の気球と遭遇する可能性がある事などが、事前に把握できます。戦争中の国でなくても、届けも出さずに他の国に行けば、侵略行為と見なされて撃墜される可能性があります。」と返答した。

近藤は、「航空機は色々と大変なのですね。」と感心していた。

マリは、「慣れの問題よ。航空機にルールがあるように、自動車にも安全に走行する為のルールがあるでしょう?例えば速度制限だとか信号だとか。同じ事ですよ。航空機もルールを守らなければ、大空の暴走族になります。車でも信号などのルールを無視すれば、いつ大事故を起こすか解りません。それと同じです。ルールを守らなければ、航空機も、いつ大事故を起こすか解りません。」と返答した。

近藤は、「解りました。航空機のルールは解りませんので芹沢さんに任せます。」とマリに一任した。

マリは、「それじゃ、パラシュート部隊が降下する高度と速度で飛行します。ドアを空けるかどうかは皆さんに任せます。ドアを開ける時に怖かったら、命綱のようなものを予め作っておけばどうですか?」とドアの開閉は社員に任せる事にした。

近藤は、「それが良いかもしれませんね。民間機に乗った経験のある社員でも、そのような経験はないと思いますので良い経験になりますね。」と話がまとまった。


次回投稿予定日は、6月2日です。

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