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第九十四章 やくざの娘、刑事と出会う

外科医になった陽子は美人でしたので、友達からよく合コンに誘われたが、外科医の業務が多忙でいつも断っていた。

そんなある日、人数合わせの為に無理に頼まれた合コンで、陽子はお互いに気の合った梅沢修に巡り合った。

お互い多忙な中、何とか時間を作り、デートを重ねていた。

まさか修が丸東組を捜査中に殉職した刑事の息子である事を陽子は知らず、陽子がその丸東組組長の娘で、母を拉致した人身売買グループの黒幕だとは修も知らずに、二人は付き合っていた。

お互いの身の上はあまり喋らずに修は、「私は只の公務員です。」と自己紹介して、陽子は、「私は切った貼ったの世界で生きている女です。」とやくざと外科医を掛けて、自己紹介していた。

修は、まだ捜査をさせて貰えず、町の巡回などを行っていた。

昼間制服を着用して巡回していると、低学年の小学生が、「助けて!おっちゃんが刺された。」と修に助けを求めた。

修は警察無線で知らせて、その小学生と現場へ向かった。

現場はお菓子屋の中で、子供が修を連れて飛び込んで、「おっちゃん確りして!お巡りさんを連れて来たよ!」と刺された人を助けようとした。

中年男性が刃物で腹部を刺されて苦しんでいたので、修はその男性に、「大丈夫か。確りしろ。今、救急車を呼ぶから頑張れ!」と励まして、警察無線で救急車の手配依頼と、傷害事件発生を連絡した。

直ぐに救急車とパトカーが到着した。

目撃者は低学年の小学生で、人が刺される様子を目撃して脅えていた。

事情は子供を怖がらせないように、女性である修の姉佳子が優しく聞いた。

その小学生は、「知らない人がナイフを持って追い駆けて来たので逃げていると、子供一一〇番の店があったので中に入り、ここのおっちゃんに、“助けて、変な人がナイフを持って追い駆けて来る!“と助けを求めた。

おっちゃんが、”こら!子供に何するのや!“と僕を助けようとしてくれたけど、逆におっちゃんが、その変な人に、”じゃかましい!“とナイフで刺された。

おっちゃんが、”逃げろ!“と僕を逃がしてくれた。

外へ逃げると、丁度お巡りさんがいたので、”助けて!おっちゃんが刺された!“と助けを求めた。」と証言した。

修が、「刺された直後に私が現場に到着して、裏口がら逃走する犯人の後姿を見ましたが、被害者救済を優先し、犯人の追跡はしませんでした。」と補足説明した。

この事件は、ただちに近くの学校に連絡されて、まだ学校に残っている児童が下校する時には、必ず大人が同伴するようにと連絡した。

学校では、校内に残っている児童の保護者には事情を説明して、学校まで迎えに来て頂けるように依頼して、保護者と連絡が取れなかったり、都合がつかなかったりした場合には、教師や学校職員が、自宅まで送った。

次の日からは、通学路に警察官や教師が立ち警戒していた。小学生に喜ばれるようにと騎馬警察官も加わった。

事件発生から三日後、通学路の林の中から、小学四年生の児童が胸に血をつけて飛び出して来て、巡回中の警察官に、「助けて!町子ちゃんが刺された!」と助けを求めた。

巡回中の警察官は警察無線で連絡して、林の中へ入り、刺された女児を捜した。

犯人は警察官が来ると、オフロードバイクで林の中へ逃げたので、パトカーでは追跡不可能でした。

直ぐに、刺された女児を病院に搬送して、犯人を数名の騎馬警察官が追跡した。

しばらく逃走すると、犯人はオフロードでは馬には敵わないと判断して、国道に出た。

騎馬警察官は警察無線で連絡して、数台のパトカーと白バイが急行した。

パトカーでは追跡不可能な細い道に逃げ込んだ。

白バイが追着いて、犯人を逮捕した。

警察に連行された犯人は刑事の取り調べに対して、「世間が大騒ぎするのが面白くて、大人だと抵抗される為に、子供を狙った。警戒中の警察官の中に白バイがなかったので、オフロードバイクで、林の中に逃げ込めば捕まらないと思いました。まさか馬で追い駆けて来るとは思いませんでした。」と頭を下げて観念した。

刑事は、「刺された子供の事を考えなかったのか!しかし、最初は大人を刺しているじゃないか。」と供述と一致しない為に追求した。

犯人は、「子供を刺そうと追い駆けていると大人に助けを求めて、その大人に怒られたのでカッとして思わず刺してしまった。」と供述した。

刑事は、「子供を刺そうとすれば、怒られるのが当たり前だろうが!刑務所で充分反省しろ!」と怒り、事件は解決した。

一方、修の姉佳子は、灰色政府高官を、ある事件の黒幕疑惑で捜査していた。

ある日、丸東組が政府高官用に拉致して、ベッドに目隠しをして縛り付け、その高官の相手を何度かさせた女性が逃げ出した。

修は丁度その時に制服を着用して風俗店の巡回をしていた。

その女性が制服の修に助けを求めた瞬間に狙撃された。

修はその女性を安全な場所へ移動させて、傷の具合を確認した。

その女性は目隠しされていても声で政府高官の事が解り、意識が遠のく中、拉致の事を伝えて意識を失った。

その後、呼び掛けに反応がなく、一刻を争う状況だと判断した修は、一緒に巡回していた同僚に救急車を呼ぶよりパトカーで搬送したほうが早いと提案した。

その政府高官には以前から疑惑があり、姉が担当している事件でしたので、同僚がパトカーを取りにいっている間に、修は姉の携帯に連絡した。

風俗で拉致と聞き、丸東組も関係あるかもしれないと梅沢姉弟は躍起になった。

救急車を呼んで待っている時間が勿体ないので、パトカーで、陽子の勤務する大学病院だとも知らずに、近くの大日本医療大学医学部付属病院に搬送する事を姉に連絡した。

佳子は捜査で大学病院の近くにいた為に、一足先に病院に到着した。

病院に到着した修は姉と二人で、「ある事件の証人が狙撃されました。黒幕逮捕には、この証人の証言が不可欠です。どうしても助けてほしい。」と病院に搬送した。

看護師は、「証言があろうがなかろうが、私達は最善を尽くします。」と説明して応援を呼んだ。

連絡を受けた主任看護師がストレッチャーを持って来て、患者の状態を確認して、「当直の外科医は他の救急患者の処置中で、今確認しましたが、まだ時間がかかりそうです。この状態では、その処置が終わるのを待っている時間がないわ。直ぐに東城先生に緊急コールして!」と別の看護師に指示した。

陽子は勤務明けでしたので、マンションに戻り寛いでいると、携帯に緊急連絡が入った。

事情を聞いた陽子は、「直ぐに行きます。」と返答して出勤準備をしていると、丸東組の組員からも携帯に連絡があり、ハンズフリーで出勤準備をしながら話を聞きました。

組員は、「先程風俗嬢が逃亡して、警察官に助けを求めた為に狙撃しましたが、そのままパトカーで緊急搬送されました。もし姉さんの病院に搬送されれば、すみませんが証拠隠滅お願いします。」と頼んだ。

陽子は、緊急呼び出しはその可能性があると判断して、先日丸東組の組員が別のやくざに狙撃された時に、陽子が組員から摘出した弾丸とオペ中に摩り替える事にした。

陽子は医師専用通路から入り、状況を確認すると危険な状態で、狙撃された風俗嬢である事を確認した。

別の救急患者の処置をしていた当直の外科医が処置を終わらせて来て、「この状態でオペすると、術中に死亡する可能性が高い。」と手遅れだと診断した。

陽子は弾丸を摩り替える必要があった為に、「まだ間に合います。私は助かる命を見殺しにできません。私が執刀します。」と組員を守る為に、娼婦が死亡しても弾丸をすり替える為にオペを強行して、陽子の執刀でオペが開始された。

手術室の外で待機している修と佳子に、看護師が二人を安心させる為に、「東城先生が来られて今オペ中です。腕の良い外科医ですのでもう大丈夫ですよ。看護師や医師は、東城先生がメスを握った瞬間から、そのメスは魔法のステッキに変わると噂しています。今迄も、他の外科医が手術不可能で、もう助からないと診断した重症患者を何人も助けて来られた名医です。」と説明した。

佳子は、「私はあれから、この手術室の前にいましたが、誰も入って行きませんでしたよ。」と不思議そうに看護師に確認した。

看護師は、「医師専用通路が別にあります。東城先生はそこから手術室へ入られました。東城先生は助からないと判断した患者の場合には、メスは決して握りません。メスを握った場合、その患者の手術は百%成功しています。その後、東城先生が不在の時に急変した患者は亡くなる事もありますけれどもね。」と説明した。

修と佳子が手術室の前で雑談していると、一人の看護師が手術室へ入った。

その後、入院患者の家族らしき人が来て、手術室の近くをうろうろしていると、先程の看護師が手術室から出て来た。

その人は看護師に、「東城先生はここに居られるのですか?」と確認して大声で、「東城先生!竹本です。娘を助けて下さい!」と叫んだ。

看護師は慌てて、「落ち着いて下さい。今、東城先生と話をして来ました。“今、別の患者の手術中で手が離せません。手術はまだ終わらないので、別の医師に診て貰って下さい。”と仰っていました。」と説明した。

その患者の父親は、「私の娘は、色んな病院の専門医に診て貰いましたが、どの病院でも手術は不可能で、もう助からないと診断されましたが東城先生が、“今ならまだ間に合います。”と仰って手術をして下さって助かりました。今回の急変も東城先生でないと駄目だ!」と強引に手術室に入ろうとしていた。


次回投稿予定日は、4月16日です。

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