第一章)第五十六話 襲撃 ⑦
俺達は、突如現れて魔力の騒ぎで混乱している王都から出ると、視認できるようになった大波に掌をかざし、魔法を行使した。
『魔法破壊』
魔法の発動元となっている魔法式を破壊して、その反動で魔法による現象を消し飛ばす、魔法に対して絶対的にも思えるほどの対抗魔法だ。
その『魔法破壊』によって、大津波が消失する。
隣でセレーナが、ほっ、と息をついたが、次の瞬間、再度膨大な魔力が収束する光景にサッと青ざめた。
「やっぱりか・・・」
俺は、連発できるという予想が的中し、思わずそう呟いてしまってから、再度『魔法破壊』を発動し、魔法を消し飛ばした。
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大津波を5つ消し飛ばしたところあたりから、徐々に向こうの威力が落ちてきた。今、13個目を消し飛ばしたところだ。大津波の威力もかなり落ちてきている。しかし、俺の魔力残量も半分をきってしまっていた。
「そろそろまずいな・・・」
威力的に、おそらく後5、6発で終わるだろうな。でもまだ、大津波、いや、特級魔法『大水襲』しか来ていないのだ。あれが放たれていない。
一撃で国を焦土に変える威力を持つ魔法が・・・。
「セイト君!! また!!」
思考の海に潜っていた俺は、セレーナの声で我に返った。
ある空中の一点、初撃よりも王都に近い位置で魔法式が展開されているのが見えた。俺は、魔力が充填されきった途端、『魔法破壊』を使って魔法式を消し飛ばした。しかし、すぐさま次の魔法式を展開し始める。威力は落ちたが、代わりに魔法展開速度がかなり早くなっているようだな。ちなみに、魔力が充填されきる前に『魔法破壊』を使わないのは、相手の魔力を無駄遣いさせるためだ。魔力が魔法式に充填されきった場合に消し飛ばせば、その魔力を体内に戻すことができないからな。
俺は、『魔法破壊』を使って魔法式を消しながら、『計算行動』と気配探知で魔法を発動しているものの位置を探る。魔力探知はあてにならない。おそらく何らかの方法で魔力を隠蔽している。でなければ簡単に発動場所がわかる。まあ、それならば魔力をあてにしないで探ればいいだけなのだが、まさか相手側もそんなことが出来得るとは思っていないだろう。場所さえわかれば殲滅できる。
追加で4つの魔法式を破壊してから、遂に発動元だと思われる相手を見つけた。
およそ、1000人の、魔法使いっぽいローブを着て杖を持ったその集団は、最初の魔法発現地点に陣形を組んで魔法を行使していた。
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