第一章)第三十七話 【鳳黒曜】
前話の“Wiretap”のカタカナ表記を教えていただいたので、盗聴魔法の名前を『盗聴』に変えておきました
『そういうことだったのね』
「ああ、これで必要な情報は集まった。でもまあ、《裏》人格になってくれておいてよかったな。これはちょっと《表》のセレーナの方には聞かせられない」
『そうね、ちょっとあの子にはこの情報は辛いでしょうしね。・・・そういえば、あなたってあの子が私の方の記憶がないって知っていたようね?』
「いや、普通に言動とか見てればわかるだろ。あと、お前の方が《表》の記憶を持っているっていうのは分かる」
『まあ、実際持っているしね』
『盗聴』を使って盗聴し終わったあと、俺は《裏》人格状態のセレーナを問い詰めることにした。
「で、結局、何でお前は色々と知っているんだ?」
『いろいろって? 具体的に何かしら?』
確実に、何を聞かれているのかわかっているのだろうが、あえて俺の口から聞きたいようだ。・・・いや、聞きたいことが多いだろうから重要度の高いと思われることを選ばせているのか? 考え過ぎかもしれないが、2回、いや実質的に1回見た《裏》人格の入れ替わり(というか気絶?)の瞬間から推測するに、《裏》人格のセレーナが意識を保っていられる時間制限的なものがある可能性が高い。
ならば、最初に重要度の高い質問をするべきだろうな。重要といえばやはり、
「お前は何故『Calculation behavior』、つまり『計算行動』を知っている?」
これだ。前回、セレーナが意識を失うすぐ前に言っていたこと。ついでに『黒の力』とかなんとか言っていたが、優先度はこちらのほうが高い。なんせ、『計算行動』はごく限られたものしか知らないはず。それを地球の人間ならともかく、異世界の人間が知っているのだ。これの答えによっては色々と考えなければならなくなる。
そんな意図がある俺の質問に対してセレーナは、なんでもないことかのように、俺か師匠、後は地球時代に助けたアルビノの少女ぐらいしか知らないと思われることを言う。
『ああ、それね。昔、【鳳黒曜】にあったことがある、といえばわかるかしら?』
「・・・おおとり、こくよう? ・・・・・・・ッッ!!!???」
俺は、まさかその単語が出てくるとは思っておらず、瞬時に出てこなかったが、師匠から聞いたことのある話に出てきていて、目を見開いた。
【鳳黒曜】
別名神殺しの黒曜。師匠から聞かされた御伽話、というか神話? みたいなものに出てくる2人しかいないとされている神殺しを果たした人間だ。その話の設定では、俺達人間が存在する98種類の世界があり、俺達がいた『地球』のある『宇宙』は4番目に高位の世界という話だった。あと、98種の世界を監視する世界として、『神』が存在する世界と、先程話に出た【鳳黒曜】と、彼と一緒にいるもう一人の神殺しである【白凪】が作った世界の合計100の世界があるとか師匠がいっていたと思う。
詳しい話はもうかなり昔だし、そもそも真面目に聞いていなかったのでよくは覚えていないが、確か『神』は有彩色を司る11神の上に無彩色を司る3神がいて、更にその上に最高神である【透明の神】がいて、【鳳黒曜】が殺したのが黒を司る【黒の神】で、殺した神の力を手に入れて最高神の体をバラバラにして封印してどうのこうのって感じだったと思った。
よくわからんと思うけど俺もよくわかっていないから大丈夫だ。ってか、重要なのはこれじゃない。
【鳳黒曜】は、師匠以外に『計算行動』と『制限解除』の両方を使える唯一の人間、とか師匠は言っていた。当時、それを聞いた俺は「なんだ、師匠の作った話か」とか思ったのだが、セレーナの話を聞いたところ、実在しているらしい。というか、そうなると師匠から聞いた話は本当・・・なのか?
予想外のことを聞かされたため、混乱した頭で色々と考えていると、セレーナがいきなりぶっ倒れた。
「・・・!? おい、大丈夫か?」
見ると、ただ寝ているだけだった。どうやら時間切れのようだ。
どうせ混乱した頭ではうまく考えがまわらないのだから、考え事は後回しにしてもう少し質問しておけばよかった、と反省しつつ、セレーナが目を覚ますのを待った。
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次話投稿は来週です




