第一章)第二十四話 理由の一部
「さてと、どうするか・・・?」
デザインはある。そう、デザインはあるのだ。ありすぎて困る程。
「知識がありすぎても困るってもんだな・・・。基本的になんでも似合いそうだし・・・。なあ、何か要望とかないか?」
セレーナに聞きながら、そういえば、と、前世の友人のことを思い出す。前世、つまり日本にいた時の友人で、ありえない知識量を持っていた奴がいた。ありえないようなではなく、ありえない知識。そいつはその知識のせいで、ある組織によって攫われた。まあ、最終的には助かった、というか助けてそれで知り合ったんだが・・・。そのことで本人は知識の一部を失い、俺達よりも前に来ていたそいつの幼馴染は思考パターンが歪んでしまった。で、そいつの幼馴染というのが、俺の親友で、『計算行動』の対極にある技、『制限解除』を使うやつだが・・・。
―――なんか思考が逸れてしまったが、とりあえず服だ。
ワンピース、セーター、タンクトップ、着物、振袖・・・もしくは上着だけでもいいか?街に行ってから買えばいいし。・・・う~ん、思いついてむしろ困る。こういう時には・・・とりあえず二択でいこう。
服と言ったら、まずは洋か和か?
セレーナならどっちでも似合いそうだが、和というイメージはないな。というか、金髪和服は個人的にあまり好きじゃない。となると必然的に洋服のほうとなるかな。
次は・・・・・・
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結局、セレーナの服はとりあえずロングコートにした。いや、素材的に一番作りやすかったし、中の服は街に行って買えばいいし。
作ったロングコートをセレーナに渡したら、
「・・・すごく綺麗な縫い方・・・」
と言って驚いていたが、普通に日本の中学時代に習ったように縫っただけだ。それに俺の家庭科の成績は5段階評価のうちの4だ。別にすごくうまいというわけでもない。俺のクラスメイトの奴等は何故か家庭科だけは皆5とってたし。まあ、他の教科は皆ダメだったけどな。
「そんじゃあ、行くか?」
「・・・」
「どうした?」
やっぱり他にも何かあるのか?
「・・・行くのはいいけど、私はどうなるの?」
あ、予定を話すの忘れてた。
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街に着いたら、一度ギルドに寄って依頼の完了報告をしてから、服屋に行って、それから家に行くことを伝えると、なんか、嫌そうな顔をした。
「どうした?」
「・・・上級貴族なんだ・・・」
貴族嫌いか?いや、恐らくセレーナも元貴族。ならば、上級貴族にいい思い出がないのか?となると、
「上級貴族が原因で奴隷に落とされたのか」
「・・・!?」
「何故わかったのか?という顔をしているが、まあ、身なりを見ればわかる」
「・・・わかってて何で私に良くしてくれるの・・・?」
この世界では奴隷の扱いは酷い。勿論、脱走奴隷や元奴隷に対してもだ。だから何故良くしてくれるというのは当然の疑問だ。俺が元日本人であるということは関係ない。地球で、人間の最も汚い部分を見てきた俺はそんな甘い部分は・・・一応あるけど、今回は関係ない。
「単純に興味があったからだ」
「・・・?」
「あ、勿論、体にって意味じゃない。俺は別にロリコンじゃないからな」
「・・・???」
セレーナの頭の中が疑問符で埋め尽くされているのがよくわかる。表情にめっちゃ出てるからな。
「まず、お前のその頭の良さ。どう考えても俺と同じぐらいの歳なのに、この世界の奴らにしてみれば正直異常だ」
「・・・っ!!」
異常だと言われて、セレーナの表情が僅かに歪む。もしかしたら、これが原因で奴隷にされたりしたのか?いや、まだ、情報が少ないからわからないな。
「後はその力。お前自身は自覚があまりないようだが、これも化け物レベルだ」
「・・・」
実際、魔王の力を軽く超えていた。まあ、2つとも、
「俺にも言えることだがな」
「・・・だから―――」
「まあ、理由の一部でもある」
「・・・一部?」
「ああ。・・・そろそろ街に向かったほうがいいと思うんだが・・・」
そう言いながら、空を見るともう日が昇っていた。大体9時くらいだな。そろそろ戻ったほうがいい。同時にセレーナも見ていたらしく、賛成してくれた。




