第8楽章〜誰の実力
そして、ついに、ついに、ついに!!
けーかはっぴょー!!
なんて・・・ハイテンションでいられるはずもなかった。
普通、こんなときは緊張して何も手につかない状態だろう。
まぁ、僕の隣で口笛吹いている人は別だろうけど。
「はぁ・・・」
「ん?どうした?ため息なんてついて。」
「だってぇ・・・・・・」
「だってもあさってもねぇよ。ため息つくと、幸せが逃げるって言うぜ?」
「ため息くらい自由につかせてよ。」
ため息をつくと幸せが逃げる、というが、実際にそうなった人を見た事はない。
それに、ため息なんて、しょっちゅうつくもんだろう?
『候補者の皆さんは、ステージ裏へお越しください。』
キター(電○男風。)
ど、ど、ど、どうしよう・・・・ステージ裏ってどこだっけか!?
「ほれ、行くぞ。」
「何でそんなに余裕なんだよ!」
「だって、俺自信あるし。だって、俺様だぞ?」
「あぁ。そうっすねぇ〜。」
「ったく、むかつくなぁ。」
むかつくのはあんさんでっしゃろ〜。
・・・・ドキドキドキドキ・・・・
第二のドキドキ波襲来。
演奏する前よりは少しいいけど、やっぱり緊張するよ。
口から心臓飛び出しそう。
って、僕結構グロいこと考えてない!?
『・・・それでは、優秀賞。』
い、いつの間に準優勝!?もう呼ばれてないし・・・だめだったんだなぁ・・・
『24番。片瀬 直くん。伴奏者、片瀬 静くん。ヴィニヤフスキ『華麗なるポロネーズ第1番ニ長調』。」
すっごいなぁ。優秀賞かぁ。
って、同じ顔だよ、2人とも。双子なんだなぁ。
キラキラ光るチョコレート色の瞳。瞳の色より少し淡い髪は肩まで伸びている。
一言で言うと、クリソツ美男子兄弟。
あぁ・・・自分のに集中(というより緊張)しすぎて、他の人の聞いてなかった・・・。
不覚だなぁ・・・。鏡夜は何してるのかなぁ、と。
「まぁ、あいつら上手かったしな。」
聞いてたんかい!!・・・・なーんか、実力の差?余裕の差?っていうのを感じるなぁ。やけに。
『それでは最後となりました、最優秀賞の発表に移ります。』
「はぁ・・・」
気がつくと、僕はまたため息をついていた。どこでたまるのかなぁ、この息って。肺?
『最優秀賞は・・・14番。山下 真実くん。伴奏者、楢崎 鏡夜くん。アンデルセン『常動曲 フルートとピアノのためのカプリース』。」
・・・ワァァアア・・・
沸きあがる歓声。
僕は普通に拍手をしようとしていた。
だけど、隣の鏡夜にとん、と背中を押されて怪訝そうな目をむけると、
「最優秀賞、俺らだってさ。」
「んなわけない。」
タモさん風に答えたけど、ふと気がつくと視線は僕たちに集まっている。
「早く行くぞ。」
「え・・・だって・・・・タモさんが・・・」
「いいから、いいから。」
俺は混乱してまた意識が吹っ飛びそうになっていた。
だって、最優秀賞だよ!?僕の実力とは思えない。鏡夜の実力?うん、それなら頷ける。
「おめでとう。」
「あ、ありがとうございます。」
「ぷっ・・・」
「・・・笑うなよ。」
僕たちは控え室に戻って服を着替えていた。
そしてまた僕は呆然としていて、服を裏返しに着たりしていた。
「おーい、意識あるか?」
「ない。」
「あんじゃんか。お前、最優秀賞だぞ?一番だぞ?喜ばないのか?」
「鏡夜は嬉しそうだね。それ、きっとニセモノだよ。」
「はぁ!?」
「もしくは、鏡夜の実力。だって、僕全然そんな無理だモン。」
「本物だし、お前の実力だって。このコンクール、クラシック会において著名人ばかりが集まってるし、テレビカメラも回ってる。参加者のほとんどが留学経験者だぞ?その中でお前は最優秀賞をもらったんだ。すごいことだって。」
「・・・・。」
僕は少し黙って考えた。
あれ?これってちょっとしたコンクールじゃなかったっけ?
どうりで観客動員数、多いと思ったんだよね。
って、待て待て。留学?そんなの、僕、一回もしたことないよ?ってことはやっぱり・・・
「鏡夜がすごいからだね。」
「違うって。しつこい奴だな!お前、いい加減に素直に喜べよ。多分、俺がいなくてもまこは最優秀行ったと思うよ?」
「だ、だって・・・・」
「もっとポジティブに喜べ!はい、命令!喜べ!!」
「わ、わーい・・・?」
「てめぇ・・・・」
信じろっていわれたって、到底信じられないよ。
そんな口論をしているとき、部屋がノックされた。
扉を開けると・・・・
・・・・バシャバシャバシャバシャ・・・・
「最優秀賞をとったご感想は!」
「どちらに留学なされていたんですか!?」
「伴奏者とはどのようなご関係で!?」
これが・・・マスコミの恐怖。
そんなすっごいコンクールだったの?あ、そういえばさっき、テレビカメラもまわってるって言ってたっけ。
「あ、あの・・・」
「はいはい、みなさんどいてどいて〜。」
「俺たち話があるんだよ、こいつらに。」
2人組みが部屋に乱入してきて、そのまま扉をバーン!
閉め切っちゃったよ、鍵しちゃったよ。
「はっじめまして〜、片瀬 直でーす。」
「初めまして、弟の静です。」
「あ、えーと、どうも。」
2人は同じ顔をしているけど、中身は全然違うんだなぁ。
確か、バイオリンを弾いていた方が直くんで、ピアノが静くんだよね。
すると2人はずいっと顔を近づけてきて
「ねえねえ!どこに留学してたの?」
「どこの高校に入ってるの?」
マスコミとあんまり代わらないなぁ。
「留学・・・してないよ・・・?」
「「ええっ!?」」
「それどころか、はじめたのつい最近だよな。」
「「ええー!?」」
「再開したのは、だけどね。」
そりゃ、驚くよね。
「やっぱり、僕が最優秀もらったのって、間違いなんじゃないかなぁ。」
「ううん、違うよ。自信もって!音ののびもよかったし、間違いもなかった。」弟。
「うん。あんな難しい曲が吹けるなんて、違う楽器だけど感動っ!」兄。
なんか、ほんとに僕がやったんだって実感がわいてきた。
「僕・・・喜んでいいのかな・・・」
「「「当然っ!」」」
そして、僕と鏡夜と直と静(呼び捨てでいいって言われた)は部屋で散々騒いだ後、コンクール会場前で別れた。
僕の家の前にはマスコミが張っていて、なんとか家の中に入れたけど、警察に通報してやろうかとも考えた。
お母さんもお姉ちゃんもかなり喜んでいたけど、僕にはちょっとした不安があった。
それは、学校。
いままで隠し続けてきたフルートの存在がばれたら、またバカにされないかなぁ。
ちょっとしたっていうか、結構多大な不安であったりするんだ。




