国境の街
ダラッド公国とダンバルカン王国の国境にある都市、ミリスル。
昔ながらの城塞都市に設けられた発着場に一騎の竜騎士が舞い降りる。
駐竜の手続きを終えて担当の役人に費用を支払うと、エトワールはチングスを連れてミリスルの門をくぐる。
石レンガ造りの巨大な城門。
経年劣化や先の大戦の戦場にもなったこともあって、一部が崩れてしまっている。
「さて、例の場所は確かモートル森林だったか?」
「そうでございます。常に霧が発生しており、幽鬼が現れる場所でございます」
「いやな場所だね」
チングスの口から出た幽鬼という単語に嫌悪感を示す。
幽鬼とは、非業の死を遂げた者達の魂が供養されずに放置された末にモンスター化した存在であり、物理攻撃が効かず冒険者や衛兵の手を煩わせている。
当然ながら、お祓いなどの儀式も効果はなく、場合によっては都市ごと放棄して移住せざるを得ないほどの脅威である。
一応、危険性から討伐報酬の相場は高くなってはいるが、報酬金目当てに挑んだ冒険者たちが返り討ちに遭った挙句、幽鬼化するという負の連鎖が後を絶たない。
「して、幽鬼が現れた場合はどうなさりますか?」
「今回はアンバリラを見つけるのが目的だ。幽鬼とは可能な限り交戦はしない。
だが、念のため魔導装備を身に付けていく」
ラグナース教団では幽鬼対策として魔石の付けられた装備が全員に支給されている。
エトワールの所持している武器は騎乗戦闘用の槍と地上戦向けの剣。
槍は用途に合わせて運用できるように伸縮自在で、魔石を交換することで使用する魔法を切り替えて戦える。
今回は炎の魔石と雷の魔石を携帯している。
剣には氷の魔石が埋め込まれており、槍と違って交換することはできないが、魔鉱石と鉄鋼の合金で出来たブレイドは魔法のエネルギーを効率よく伝導させることが可能で、幾多もの戦場をエトワールと共に切り抜けた。
「さて、まずは冒険者ギルドで依頼を受けないとね。
森林での依頼があるといいんだけど」
カムフラージュ目的で付近の冒険者ギルドへと向かう2人。
幽鬼の出没するモートル森林に理由もなしに向かえば不審に思われるのは火を見るよりも明らか。
石造りの冒険者ギルドの門を開け、登録手続きを行う。
竜騎士という珍しい肩書に受付嬢が一瞬驚くも、滞りなく手続きを終えると、さっそく森林での依頼を探す。
(案の定、幽鬼の討伐がほとんどだねぇ)
森林エリアの依頼書には幽鬼の討伐依頼がびっしりと貼られており、どれも魅力的な報酬が提示されている。
(適当な依頼を受けて…ん?)
手軽なものを探していると、1枚の古びた依頼書にエトワールの目が留まった。
亡き冒険者の装備を探してほしいという旨の依頼。
報酬こそ安いものの、森林をうろついていてもあまり怪しまれないという理由で受諾の手続きを済ませる。




