進む発展
「だいぶ見違えたな」
ゴブリン討伐からしばらく。
森林の開拓と開墾を終えた畑をみてアンナが声を漏らす。
従来の耕作地より十倍は広く、十分な作業を行えば半分を休耕地にしても自力で食糧が賄えるだろう。
「後は貯蔵庫などの設備を用意すれば、機能するじゃろう」
「となると、次は防衛だな」
村の食糧を狙う賊や野生動物を退けるべく、防衛力の向上を目指す。
ここからアルシャラへの距離は遠い。
襲撃があったとしても、救援要請の伝達や増援の到着まではどうしても時間がかかるし、相応の報酬も用意する必要がある。
自分たちの村は自分たちの手で守り抜くに越したことはない。
「さて、守りとなれば村の入り口だな。
村への入り口には防壁があるとはいえ、出来れば村人や土地を巻き込まないようにより遠くに防衛線を築きたい」
地図を開き、現状の地勢を確認する。
村へ続く道は三つあり、森の旧道とアルガン方面の山道とアルシャラ方面の山道。
「森の旧道はだれも通らない。道は荒れているし川を渡る橋もボロボロ。
ゴブリンの脅威は無くなったけど、野生動物などが居ていろいろと危ない。
昔は密売人が御禁制の品を運ぶルートに使っていたけど、ゴブリンの巣ができてからはパッタリ。
後は村へと続く二つの道だけど、どれも山を切り開いて作られた狭い道とそこを塞ぐ関門がある。
手っ取り早く防衛線を築くのならここだ」
「山を開いて道を作るとは、大胆なことをしたのう」
「それだけ魅力的な土地だったんだ。
わざわざ関所を建てて衛兵もたくさん配備してあったらしいが、鉱山の枯渇で王国に見捨てられて、わずかに残っていた衛兵も戦争で前線に向かわせて以降はそのままだ。
金鉱山が枯れてビタ銭にすらならない以上、この先も村を守るつもりがないんだろう。
どうせならあたし達で利用してやろう」
「さりげなく言っておるが、村の領地を拡大するつもりか?」
アンナの示した関門の位置は村からそれなりに離れており、それを村で活用するということは村の領地を拡大するのと同義である。
「どうせロクに統治されていないんだ。
このまま何もしないで賊共に土地を使われるくらいなら、あたし達で使ってやった方が有益さ。
いっそ、地方長官に代わって、この村を中心にサンヴァルマンの地方創生でも目指してみるか?」
冗談交じりに大言壮語するアンナ。
「それも、悪くないかもしれぬな」
「そうかい、なら、いっぱい人を増やして、立派な村を作ってやらないとな」
村が発展したからなのか、初対面の時と比べて快活になったアンナ。
二人の眼前には青空の大地が広がっている。




