ゴブリンジェネラル
「グギャ!」
「ゴベェ!」
「ガギュ!」
洞窟内にゴブリンたちの断末魔が響く。
数こそは多いものの力自体は大したことはなく、装備も粗末なゴブリン達をアンカラは短剣を駆使して次々と斬り伏せる。
「すげぇなアイツ」
後ろで見ていた冒険者が感嘆の声を漏らす。
「アンカラさん、前に罠があります」
ロープと刃物を組み合わせたシンプルな罠。
横に張られたロープの後ろには地面から突き出した刃物があり、転倒させて刺す物だと分かる。
「解除しろ!」
「はい!」
支援担当のペータが罠を破壊。
ロープを切った後、刃物を岩で潰す。
糞の塗られた刃や毒蛇の落とし穴などの手軽かつ殺傷能力のある手製の罠に気を付けながら、ゴブリンたちによる散発的な迎撃を蹴散らして、奥へ奥へと進む冒険者たち。
やがて木製の簡素な扉へとたどり着く。
「いるな」
奥にいる強敵の気配を察知し、警戒を促すアンカラ。
一呼吸おいて扉を蹴り破ると、そこにいたのは鎧を着た大きなゴブリン。
篝火に囲まれた広い空間の真ん中に座っており、周囲にいる軽装備のゴブリンたちと違って全身に重厚な防具をまとい、右手には立派な体格にふさわしい黒い大きな剣を持っている。
「ジェネラル…!」
誰かがそう呟く。
「我が相手をする、雑魚は任せた」
ジェネラルの取り巻きを任せると、アンカラは短剣から長剣に武器を変えて果敢に挑む。
先手を打ったのはアンカラ。
守られていない頭を狙い、大きく跳躍して大上段に構えて振り下ろす。
ガキンッ!
響く金属音。
ジェネラルの腕防具がアンカラの剣を弾く。
「チッ」
舌打ち。
たかがゴブリンと侮っていたアンカラにジェネラルが剣を振り下ろす。
ドンと響く破砕音。
回避には成功したものの、固いはずの岩の床が砕ける。
「一撃でも食らえば即死か…」
防具が何の意味をなさない威力。
全盛期ならば指先一つで粉砕していたが、そうでない現状、目の前の相手に慎重に間合いを図る。
今まで狩ってきた雑魚とは違う存在。
再び放たれるジェネラルの攻撃。
今度は仲間のゴブリンもろとも横に薙ぎ払う。
「哀れだな」
しゃがんでジェネラルの攻撃を躱しながら、仲間に斬られて倒れるゴブリンどもを蔑む。
同時に生まれる余裕。
ジェネラルの一撃は脅威的ではあるが、仲間との連携も取れておらず、武器の大きさも相まって攻撃は緩慢。
「所詮は見掛け倒しか」
長い封印で弱体化していたとはいえ、戦いのカンは健在である。
横に振りきったところで再度突撃、腰に差した短剣を額目掛けて投げる。
短剣自体は左腕に防がれたものの防具の隙間に深々と突き刺さり、傷口から出血している。
「グゴオオオオォォォ!」
アンカラに向けて放たれる憤怒の声。
「いったん退け!」
冒険者に後退を指示、直後に剣が横に振られる。
「グッ…!」
剣でガードするも、真正面から攻撃を受けたために大きく退く。
その隙を狙って、ジェネラルは剣を振りかざすと力任せに縦振りの一撃を放つ。
振動と破砕。
岩の破片が飛び散り、床に大きなひびが広がる。
しかし、怒りに任せた一撃が災いし、剣が折れる。
「は、ゴブリンは武器の扱い方も知らんらしいな」
優勢になったとたんに調子づくと、再び頭部へ強襲。
ジェネラルは再び腕で頭をガードするも、アンカラは飛び越えて後ろに回り、防具で覆われていない腿を突き刺す。
「グゴッ」
片膝を継ぐジェネラルにアンカラは防具の隙間から剣を刺す。
ゆっくりと確実に押し込み、急所である心臓に剣先が触れた。




