偵察
七日後、仕事を終えたリラは村に戻った。
家屋の補修工事は一通り完了しており、今年の冬も無事に過ごせそうである。
また、村の集会所にはゴブリンの討伐作戦に向けてアルシャラから派遣された冒険者たちが集合している。
と言っても数は少なく、それもダンジョン攻略の実績を目当てにした下級クラスの者ばかり。
弱いゴブリンは素材としての価値も少なく、リスクを負ってまで狩っても得られる見返りは少ないため、こうなるのも仕方ない。
「あ、リラさん」
リラに気づいたペータが声をかける。
「あら、あなたもいたのね」
「はい、ダンジョン攻略で実績を積みたいと思いまして」
「勇ましいわね。でも気を付けてね?ゴブリンは狡猾で危険な連中だから」
先輩として忠告するリラ。
すると、アンナがやってくる。
「リラ、戻ってきて早速ですまないが偵察をお願いできるか?
その間、こちらで攻略の準備を行う」
「わかったわ」
アンナの頼みを二つ返事で承諾すると、リラはそのままダンジョンのあるトリラ森林地帯へと向かう。
真っ赤な紅葉に染まった森林地帯。
その奥地へと進むごとに常緑樹の杉が目立ち、緑が多くなる。
村の衰退期に植えられた杉の木は手入れも間伐もされずに好き放題に育っており、管理された植林場のものと比べて品質は悪い。
「目的のダンジョンは…あれね」
木の上にのぼり、気配を隠して目標を探る。
むき出しの岩壁にあいた横穴。
ゴブリンの縄張りを示す、野生動物の髑髏が飾られた標識が建てられており、不気味な気配を漂わせている。
「入り口の見張りは二人。
弓兵もいるわね」
双眼鏡を片手に敵情を視察、敵の配置をメモに書き記していく。
「さて、次は…」
視点を動かしてゴミ捨て場に注目する。
ゴミの量から内部にいるゴブリンの数を推測することができるため、攻撃の際の重要な手がかりである。
「なるほど、結構いるわね。となると、ジェネラルもいる可能性もあるわね」
山積にされた野生動物の骨にジェネラルの存在を推測する。
ジェネラルとは大きな群れの戦闘員を主に代わって指揮するモンスターの別称であり、戦いに長けたものが任命される。
長年の戦闘経験で培われた狡猾さや洗練された戦略を駆使してくることから、ダンジョン攻略において非常に脅威的な存在である。
「仮にジェネラルがいたら私が相手にするべきね。
アンカラあたりは手柄欲しさに挑みそうだけど、まあ、あの子は一応強いし、様子を見てみるのも悪くないわね」
一陣の秋風が木々を揺らす中、風と共に去ってゆくリラ。
森に転がるゴブリンの死骸を、野生動物が咥えてねぐらに持ち去ってゆく。




