駐屯地建設
「作業員たちはここに並べ!」
早朝のフェリアス台地。
復興途上の王都ゲーテルを遠くに見渡せる高い大地に、各所のギルドからやってきた冒険者を始めとする日雇い労働者が整列する。
全員が支給された保護具を身に付けており、安全意識の高い現場だということが見て取れる。
「俺がここの指揮を執るオルタだ、王国の平和の為にしっかりと働け!
まずは装備の確認から始める。ヘルメットはよいか?ゴーグルは付けているか?肌は露出していないか!?」
黒い髭を朝の風に揺らし、朝礼台の上から作業員の装備に異常がないかを確認するオルタ。
朝礼を終えると、作業員を各班ずつに分けて作業を割り振る。
「一班と二班は防壁の建造に当たれ。
三班は櫓の建設、四班と五班は―――」
地図を開きながら、指示を出す。
「おい、そこの狼女、リラといったか?」
リラに声をかける櫓建設の作業主任、レスター。
「何かしら?」
「お前は高所で作業しろ。狼なら高所でも平気だろ?」
「そうね。で、狼女の私は何をすればいいかしら?」
あくまでも平静に仕事の詳細を聞く。
「カゴとロープを使って資材を高所に持ち上げろ」
「わかったわ。高所への資材の搬送ね」
主任の指示に頷くと、足場を登って言われた場所へと向かう。
頑丈な鉄製の足場。
通路は狭く、ほかの作業員とすれ違うのもやっとだったが、建設途中の櫓の最上部にあたる場所へとたどり着く。
そこにはロープの付いた鉄製のカゴがあり、これを使って高所への資材搬送を行うのだという。
支給された命綱を身に付けて作業を開始。
アレハンドロ帝国主導の事業ともあってか多額の予算が下りているらしく、作業員一人一人の装備の品質は良く、日当も最低でも三百セレカと高い。
条件の良すぎる仕事に疑念を深めながらも、実態調査のために高所作業の主任の指示に従って資材を搬送。
安全に気を付けながら、三交代制の八時間の労働をこなす。
日勤を終えた夜。
魔法灯に照らされる建設現場から少し離れた、人気のない事務所にリーヴェルはいた。
毛が落ちないように全身をしっかりと衣服で覆い、暗闇の中で彼女は夜目を駆使して建設に関わる機密資料に探し当てる。
(五万人規模の兵士が入れる拠点ね、治安維持にしては過剰ね)
ペラペラと資料をめくり、目的と規模が噛み合わない不自然な箇所をいくつか見つける。
(魔鉱石の保管庫に魔導戦車置き場...)
大型モンスターでさえも一撃で吹っ飛ばせる魔導戦車を駐屯地に配備するという、街を荒らす賊相手には過剰すぎる治安対策。
(間違いない、これらの駐屯地は治安対策を名目にした侵略の橋頭堡作りね)
資料を元に戻すと、今度は弱点を調べるために設計図を手に取り、記された内容を頭に入れる。
(構造自体は思ったよりもシンプルね。
これなら暗殺を依頼されても行けそうね)
資料を元の場所に戻すと、リーヴェルは侵入した痕跡を消して宿舎に戻る。




