過去
「お疲れ様です、こちらが報酬です」
ヴェノムサーペントの駆除を終えてアルシャラに戻ったアンカラ達に報酬が支払われる。
駆け出し相当とはいえ多数を駆除したため、金額は大きい。
「少し潤ったな」
金銭的余裕ができたことに少し安堵するアンカラ。
駆除したヴェノムサーペントは食肉になるらしく、お礼としてサンドラの街から干物の肉を分けてもらった。
「そ、それでこれからどうしますか?」
「こいつを片付ける」
支給された解毒薬を手に答える。
不要な薬品を処分するには専用の場所に持ち込む必要があり、廃棄や許可証のない者が売買することは禁じられている。
理由としては薬品の流出による環境汚染やモンスターの変異による被害を防ぐためであり、違反者は規定に基づいて厳罰に処される。
ペータに報酬の半分を渡すと、解毒剤を入れたポーチを肩にかけて廃棄所に向かう。
冒険者ギルドから少し離れた位置にある薬品の廃棄所。
静かな場所にあるレンガ造りの建物で、人の気配はあまりない。
正面の扉を開いて敷地に立ち入る。
何かを詰めた色とりどりのタンクが並べられ、全てに「危険物注意」と書かれている。
正面玄関の扉を開き、中に入ると、薬品の匂いが鼻を襲う。
「いらっしゃいって、龍人とは珍しいねぇ」
出迎えたのはエルフの女性職員。
白髪で眼鏡をかけ、老婆のような口調で話しかける。
「コレの処分を頼みたい」
「解毒剤ね、はいはい」
アンカラから解毒剤を受け取ると、青色の棚に瓶を収納する。
「一応聞くが、回収した薬品をどう処分するつもりだ?」
「これは焼却処分だね。
ものによっては他の薬品を混ぜて無害化させたりと多種多様な手法があるね」
「そうか」
無味な会話。
「で、処分料はいくらだ?」
「持ち込みは無料さ。公共事業でやっているからね。
それにしても龍人が冒険者をやっているなんてねぇ…」
「龍人を知っているのか?」
「もちろん。あれは、まだ世界共通語があったころね。
確か、五千年前になるかしら?」
さすがは悠久を生きる種族というべきか、さらっと衝撃的な言葉を口にする。
「私が薬師をしていたころにアルレーゼって龍人がいたのよ。
常連さんで、私の作る薬をよく買ってくれたのを覚えているわ。
スキルって知っているかしら?」
「もちろんだ」
「なら話は早いわね。あの子、対象の情報を知ることができる「鑑定眼」というスキルを持っていたんだけど、そのせいでみんなから嫌われててケガばっかりしていたのよね」
「まあ、自分の情報を知られたくはないよな」
「そうね。だけど、あの子を必要としてくれるお方が現れたのよ。
名前は…忘れちゃったけど」
「…まさかとは言うが、ラインハルトとかいう奴じゃないよな?」
アンカラが口にしたその人物。
それはかつて自分を封じた剣士の名前で、鑑定眼をもつ龍人を連れていた記憶がある。
「そうそう、そのラインハルト様があの子とパーティを組んでくれたの。
それでアン何とかというドラゴンを打ち破って世界に平和をもたらしてくれたの」
「で、用済みになって処刑されたと」
アンナから聞かされた歌を思い出しながら、淡々と言葉を放つ。
ラインハルトの結末を知ったときは「ざまあみろ」と思ったが、今は砂粒程度に同情している。
「そうね。残念だけど、これも歴史の理なのね」
「人間はおろかだ」
「…話し込んじゃったわね。
ねぇ、貴女の名前を聞かせてくれないかしら?」
「アンカラだ」




