国賓達
「アルトロ陛下、即位おめでとうございます。これからも当国とよろしくお願いいたします」
即位式からしばらく。
新たに王位に就いたアルトロを祝福するべく先代より縁のある隣国の外務大臣と諸侯の代表が次々に新王に祝辞を述べる。
経済同盟を結んでいるアレハンドロ帝国、塩をはじめとする海産物の交易をしているダラッド公国、そして先代の追放先であるダンバルカン王国等、古くからの友好国である。
特にアレハンドロ帝国はアルガン王国が属するニーナ大陸の三割を支配する大国であり、広大な領土は勿論、あらゆる産業において欠かせない魔鉱石を産出する無数の鉱山や魔導戦車を中心とした軍事力を保有。
先代の国王が直々に外交に出向くほどの重要国であり、先の大戦においてもアルトロたち冒険者にとっての大きなスポンサーとなってた。
現在は戦争で失われた人材の不足問題をしのぐ手段として報酬次第で農作業から戦闘までこなす冒険者を柔軟性のある人材として活用している。
一方で諸侯は穀倉地帯を支配するバルカ公爵、辺境伯であるローレンス伯爵、魔石鉱山を持つピョエール候爵などの面々が並ぶ。
特にバルカ公爵の保有するトレス穀倉地帯は王国の食糧産出量の五割を占めており、国の生命線を担っているに等しい。
「こちらこそ、末永くよろしくお願いいたします」
握手を交わしながら恭しく国賓達に頭を垂れるアルトロ。
彼が担う国王という地位はあくまでも諸侯の代表であるに過ぎず、その命令が及ぶ範囲はあくまでも自分の領地に限られている。
それだけに彼らの機嫌や利益を損ねないように謙虚に努めなけらばならない。
「それでは挨拶も済みましたので予定通り訓練所の視察に進みたいと思います」
外務大臣の言葉に全員が同意を示すと、案内役の大臣を先頭に退室する。
赤いカーペットが敷かれた王城の大廊下を厳かに進む。
壁には歴代の王の肖像画が掛けられており、先代のルーベンスの肖像画も丁寧に飾られている。
窓から地上を覗けば来賓たちを楽しませるための庭園があり、無数の花と一流の庭師たちによって整えられた庭木、そして中央に池が設けられている。
「陛下」
ローレンスが髭を揺らしながら口を開く。
「よろしければ陛下の冒険譚をお聞かせ願えますかな?」
「わかりました」
快諾する。
「これから向かう訓練所には義勇軍の主力を務めてたグレゴールがいます。せっかくなので彼を交えながら思い出話に咲かせたいと思います」
「おお!グレゴール様といえば万人に匹敵すると謳われた豪傑、ぜひともお話を伺いとうございます」
グレゴールの名前に武人であるローレンス伯は興奮を隠せない。




