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餅屋  作者: 川進
3/3

下段

兄上と家来たちは、あちこちを探しまわりましたが、姫は、見つかりません。

夜になっていましたが、兄上は、すがるような気持ちで、餅屋に行きました。


黄色い着物の娘が、上手に餅を焼く、下のせがれどのを訪ねて来なかっただろうか。

もう、婿に行かれたとは思うが。


餅屋の主人は、澄まして言いました。


うちのせがれは、もともと、ひとりだけでございます。


そう言って、せがれを呼びました。

出て来た男は、似てはいましたが、やはり違いました。


主人が、言いました。


せがれは、とても上手に、餅を焼きます。

館に通わせ、餅を焼かせましょうか。


いや。

あのように、上手く焼ける者は、ただひとり。


そう言ったあと、兄上は、じっと、主人を見つめました。

主人は、耐えきれずに、目を伏せました。


行こう。


兄上は、家来を連れて、走り出しました。


祈りながら、皆で、暗い山道を駆け上ります。


そのうち、香ばしい、良い匂いがしてきました。

楽しそうな話し声も、聞こえてきます。


ぼんやりとした明かりの方に走っていくと、何人かが、火鉢を囲んでいます。

こちらを向いた顔の中に、姫さまを見つけた兄上は、ほっと、息をつきました。

姫さまの赤い頬が、つやつやと、光っていました。


明け方、兄上と家来たちと一緒に、姫さまは、館に帰って来ました。

餅屋は、男に手を引かれています。

双子も、まるで、もとからいた家来のように、後ろにいます。


父上と母上は、兄上から話しを聞いて、泣いて、姫さまを抱きしめました。



山が、赤や黄色に染まり始めたころ、

館のそばに、小さな餅屋ができました。

すぐに評判になり、人々が並んで、店が開くのを、待っているほどです。


館で毎日、無理矢理、風呂に入れられる双子は、すっかり色白な、若い家来のようです。 

2人で、ぴったりとした息で、ひたすら、餅をつきます。

その餅を、餅屋と男と、姫さまと乳母とで、丸めていきます。

たくさんの餅は、店を開けたとたんに、飛ぶように売れて、すぐに無くなってしまいます。


いつも、とっておいた分を、持ち帰ります。

次々に、上手に焼かれていく餅を、館の皆で、食べるのです。


姫さまが、餅屋の口もとについた粉を、拭きました。

皆は、穏やかに、2人をながめるのでした。

おわり

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